「Ars longa, vita brevis」-合唱をとおして社会を盛り上げ、世界を広げる卒業生
「輝く名大アラムナイ」第7回目は、生命農学研究科博士前期課程を修了(2005)し、合唱指揮・合唱歌手・ボイストレーナーとして活躍されている、藤森徹さんにお話を伺いました。
合唱人生の始まり
現在は合唱指揮者から、歌い手、ボイストレーナーまで、多岐にわたるフィールドで大活躍の藤森さん。合唱を始めたのは意外にも名古屋大学に入学してからだそう。中学・高校には合唱部はなく、大学では元々やっていたテニスか合唱をやりたいと思っていた藤森さん。色々なサークルを見学しに行く中で、素敵な先輩が多かった「混声合唱団名古屋大学グリーンハーモニー」に入ることを決めました(グリーンハーモニーは、2022年に活動を終了してしまいました)。
名古屋大学在学中は「グリーンハーモニー」だけでなく、学外の様々な団体で合唱をしていた藤森さん。一時は週に7回・6団体の練習に参加(!)、火曜日以外は毎日、土曜日は午前・午後で異なる団体の練習に参加するなど合唱浸けの日々を送っていました。
「人」「曲」との出会い
なぜそこまで合唱にハマったのか?きっかけをお尋ねすると、その背景には素敵な「人」「曲」との出会いがありました。
「グリーンハーモニー」には魅力的な先輩がたくさんいらっしゃったそう。「その古い時代のもの、めっちゃ詳しい人とか、めっちゃ現代の難しいやつ詳しい人とか、発声についてめっちゃ詳しい人とか、オタク気質の人が多かったんでしょうね」と藤森さん。こだわりのある素敵な先輩に囲まれて、合唱愛が深まっていったのですね!
また、ある日、偶然サークルの部屋で、CDをかけて曲を聴いていたところ、理由もわからず「独りでボロボロ泣いて」しまったのだとか。その時に流れていたのは、ウィリアム・バード作曲「5声のミサ曲」。合唱では宗教音楽をよく演奏するそうですが、この曲との出会いにより、ヨーロッパの音楽に興味を抱き、ますます音楽の世界に引き込まれていきました。
藤森さんの琴線に触れた「5声のミサ曲」(William Byrd作曲)
企業勤めと合唱の両立、その先に
こうして音楽を極めていきましたが、大学院修了後は12年程、民間企業で勤務されていました。転勤もあり、東京や神戸、名古屋と各地にお住まいだったそう。合唱の良いところは「どの地域にいっても大体合唱団があるので、そこに行けば友達ができるんですよね。それなりに歌えれば、どこに行ったって歓迎される。」と藤森さん。短期間の滞在となった東京でも、長期滞在となった神戸でも、その後戻られた名古屋でも、働きながら合唱の活動を続けていました。
神戸にお住まいの時代には、近くで活動されていたはもーる神戸に加え、はもーる神戸のつながりで京都のアンサンブルVineでも活動されていました。活動を通して、徐々に「音楽を勉強したいなあ」という気持ちが芽生えていた藤森さん。
そんなとき、数年に一度開催されている世界合唱シンポジウム(WORLD SYMPOSIUM ON CHORAL MUSIC:2017年、スペイン・バルセロナで開催)にアンサンブルVineとして出場が決定!藤森さんは出番の前から現地に滞在し、2週間ほど世界中の合唱団のパフォーマンスを楽しんだのだそう。その中で特に、藤森さんの心を動かしたのが、バルセロナの合唱団の演奏。「これが俺たちの音楽だ!」というのを前面に押し出したパフォーマンスに、圧倒され、「自分には、『これが自分の音楽』と言えるものがあるのだろうか…」と思ってしまったそう。
この経験が一つの契機となり、「もっといろんなこと知りたいし、勉強したい!」という勢いそのままに、1か月ほどで当時のお仕事を退職(!)。2012年に愛知に戻られてから活動していた合唱指揮や歌い手としての活動を本格化すると共に、大阪芸術大学の通信課程に入学。通信課程にもかかわらず、スクーリングも課題も多く、1割程度しか卒業できないという難関を、見事2021年に卒業されています。コロナ禍で合唱の活動がストップしたタイミングでレポートや教育実習等、集中して勉強することができたのだそうです。
感染症対策も緩和され、現在では合唱団への指導や合唱指揮、歌い手として様々なフィールドでご活躍されています!
合唱を通した場づくりを目指して
最後に日々音楽と向き合う藤森さんに、今後の展望を伺うと、ご自身が音楽に対する造詣を深めていくことに加え、合唱をとおした場づくりをしたいとのこと。
ライフステージが変わるにつれて、様々な都合により合唱を継続できない方もいらっしゃいます。「いざ始めようとしたときにできる場所がない、そんな人を迎え入れるような、戻って来られる場所をつくりたい」と藤森さん。また、小中学校で部活動の地域移行が始まり、部活動として合唱に取り組むことが難しくなっている現代。学内外の活動に集まった小中学生に「合唱って楽しい」と思ってもらえるような場づくりも一つの目標になっているようです。
さらに、現代は世代間の断絶が激しく、触れ合う機会すらないことに課題意識を持っている藤森さん。多世代が一緒に練習したり、練習の成果を発表し合ったりする機会を増やしていきたいとのこと。地域や社会の課題への新しい向き合い方を教えていただきました。
「Ars longa, vita brevis」
藤森さんの好きな言葉に「Ars longa, vita brevis」(芸術は長し、人生は短し)というラテン語の言葉があります。芸術があまりにも奥深く多様なため、人生の長さでそれをすべて吸収するのは難しい、という考えから来ている言葉なのだそう。この言葉を胸に、常に学び続け、アップデートし続ける事をしているという藤森さん。芸術の旅には終わりはないですね。
藤森さんの今後のご活躍からも目が離せません!
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藤森さんご出演のコンサート情報
SOM (Sophia Obedient Musicus -知恵に忠実なる音楽-)
日時:2024年2月4日(日)14:00開演
場所:大阪市中央公会堂(国指定重要文化財となっている美しい建物です)
料金:3000円(学生1500円)
指揮者・音楽監督:松原千振
近現代の無伴奏合唱作品を13人のアンサンブルでお届けします。
ご予約はこちら
曲目:
O.メシアン| 聖なる宴
D.ミヨー |神の約束
H.ヴィラ=ロボス| めでたき英知
外山雄三 |混声合唱のための『歴落』ほか
trialogue(3団体によるジョイントコンサート)
日時:2024年3月3日(日)14:00開演
場所:スターツおおたかの森ホール(千葉県)
料金:1000円(全席自由)
指揮:山脇卓也、内藤雄斗、藤森徹
関東で活躍されている2団体とのジョイントコンサートで、私が指揮しているEnsemble Spicyと関東に遠征します。
ご予約はこちら
Chorus Meets 第1回コンサート
日時:4月27日(土) 16:30開演
場所:瑞穂文化小劇場
料金:1000円
指揮:藤森徹
若手作曲家の新作を中心に演奏する団体で、様々なコンサートに出演してきましたが初めての単独コンサートを実施します。
詳細は公式X(旧Twitter)で発信させていただきます。
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