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そらジローの友達「にじモ」が生まれるまで①~日テレジェンダープロジェクトチーム発足~

こんにちは!『日テレR&Dラボ』です。

「news every.」のお天気コーナーなどでおなじみの「そらジロー」の新たな友だちとして誕生した、新キャラクター「にじモ」

今回はこのキャラクターを生み出した、報道局を中心とした「日テレジェンダープロジェクトチーム」の皆さんに、「にじモ」誕生の裏側と熱い思いを聞いてみました。

今回お話を伺ったのは、
報道局の気象センタープロデューサーの長谷部真矢さん、キャスター・解説委員の小西美穂さん、DX取材部・「news zero」プロデューサーの白川大介さんの3人とアナウンサーの森富美さん!                    
聞き手はR&Dラボの西憲彦、松本京子です。

■森前会長発言から生まれた「ジェンダープロジェクトチーム」                             

松本:今日は「日テレジェンダープロジェクト」の初期メンバーの皆様に集まって頂きました。実は「ジェンダーチーム」というものが日テレの中にできたということを、恥ずかしながら私も西さんも最近まで全然知らなかったんですけど…、これはどういうきっかけで生まれたんでしょうか?

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長谷部:実はきっかけは東京五輪組織委員会の森前会長の「わきまえている女性」発言だったんです。私がウェブニュースデスクの原屋さんと「何かモヤッとするよね」って立ち話をしていて、こういうことって今までもあったけど周りの人に「怒るのは大人げない」と言われて、傷つくのが嫌であえてリアクションをしてこなかったけど、ついに世の中が怒ったっぽい…これは企画にできるんじゃないかと思ったんですよね。                       

すぐにデジタル戦略部の服部部長のところに駆け込んだものの、「君たち何がしたいの?」と聞かれて、「いや、まだ案はありません」って状態で(笑)
そうしたら「仲間をちゃんと集めなさい。小西さんとかエキスパートでしょ」と言われて。実は小西さんがジェンダーの話にそこまでお詳しいと知らなくって、すぐ小西さんに「モヤモヤしてるんですけど助けてください」と連絡したら「いいね!じゃあ、仲間が多い方がいいからこういうことに詳しい白川さんにも聞いてみよう」と、初期メンバーが固まっていったというのが今年の2月くらいでした。                                 
                             
松本:今回「ジェンダーチーム」が出来るまでは、報道局の中で興味を持っている人が個人でポツポツいる感じで繋がりはなかったんですか?
                                
小西:私は昔から関心があったんですけれど、「ジェンダー」っていう言葉を使うと、「ちょっとお説教されてるみたい」と感じる人がいたりして、言葉を前面に出さないとか、柔らかく言うように気を遣うという時期がずっと続いていました。
                              
個人的には2年前から学問として学びたいと思って早稲田大学大学院で「ジェンダーと政治」というテーマで修士を取ったり、報道局でジェンダーと政治の専門家を呼んで勉強会を開催したりして、機運は高まってたんですよ。そんな時に森さんの発言があって一気にニュースにしやすくなったっていうのはあります。
                                
2月17日に初めて長谷部さんと白川くんと会議して、「やっぱり現場を見ていろんな人の話聞いた方が頭も整理されるよ」って長谷部さんに言ったら、威勢よく「じゃあ1回行ってきます」って翌週には長谷部さんは昭和女子大に取材に行ってました(笑)とにかく熱量がすごかったということだけすごく覚えてます。
                                
松本:長谷部さんの行動力、すごいですね!
                                
長谷部:私は当時、本当にド素人でただモヤモヤしてるだけだったんです。だから小西さんが詳しくこういうことなんだよと説明をしてくれても実は当時あんまりピンと来てなくて…。「女性の政治家を増やす」とかって聞いても、「それって何か強い女性ばっかり増やすことになって、じゃあ弱い女の人はどうしたらいいの?」とか、そういう一個一個のことが実はあんまり理解できてなかったんですけど、皆さんに解説していただいてだんだん理解できるようになってきた感じです(笑)
                                
小西:私と白川さんは、長谷部さんが連絡をくれる前から繋がっていたんです。私が「ジェンダーと政治」とかを解説するときに「表現大丈夫かな」って原稿をチェックしてもらっていたのが白川さん。白川さんとは部署が違うんだけど、ドラマのジェンダー監修とかもしている人なので話が聞けると心強い存在でした。
                               
松本:白川さん的には、急に長谷部さんから「ジェンダーチーム」へのラブコールが来てどう思いました?
                               
白川:突然「ジェンダーについて報道でやりたいんですけど」とすっごい熱い人がやってきたなと思って、うれしい半分戸惑い半分みたいな感じでした(笑)。
                               
ちょっとだけ僕のことをお話しすると、2017年に情報制作から報道局に異動してきて、自分が報道のことを何も知らないので社会部の記者をやりたいって言って半年だけ記者をやらせていただいたんですね。そのときにLGBTQの当事者である自分を活かした取材をしたいなと思って、社内の研修でLGBTQ研修があったときに「実は自分自身も当事者なんです。制作者と当事者の両方の立場から今日はお手伝いします」という形で公にしたことから、仕事とリンクし始めていったんです。
                              
さっき小西さんから言って頂いたようにLGBTQの主人公を描いたドラマの脚本の設定をお手伝いしたりとか、番組の中での表現についてコンサルティングしたりとかっていうことをコツコツとやらせていただいてました。
そんな中で、小西さんは報道局内でジェンダーに関心がある数少ない同志みたいな存在だったんですが、そこにエネルギッシュな長谷部さんが急にやって来て…
                              
小西:「私がモヤモヤしてたのはこういうことだったんですねー!」って言いながら、長谷部さんが興味がある人をどんどんどんどん巻き込んでチームができていった感じです(笑)

■みんなから怒涛のダメ出しがでた「男女平等」キャラクター案

松本:「ジェンダープロジェクトチーム」が出来て活動する中で、「にじモ」という新キャラクターはどうやって生まれたんですか?
                               
長谷部:これも「沢山の人が集まってくれたからアイコンみたいなものがあると気分が上がるかな」と思ったのが始まりです。そんな時期に『Good For the Planet』ウィークが放送される話があったので、SDGsの5番目のゴールの「ジェンダー平等」を表すわかりやすいものがあるといいのかなと思って、そらジロー担当のデザイナーさんに頼んで「そらジローとぽつリンで男女平等」みたいな感じで作ってもらったものを、軽い気持ちでチームのみんなの前に出したらコテンパンで…(笑)「いや、そういうことじゃないんだよ長谷部!」みたいな感じになりました

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白川:補足すると長谷部さんがアイデアとして出してきたのが確か、そらジローとぽつリンがシーソーに乗っていて2人のシーソーが釣り合ってるみたいな感じの図案だったんですよね。それを長谷部さんから「いいでしょ!」という感じで見せられたんですけど、結構これジェンダー的に難しいポイントがいっぱいあるよっていうような話をした覚えがあります。
                                
小西:長谷部さんが本当に素直に喜々として男女平等のイラストを持ってきてくれて。でもその時に「ちょっと待てよ長谷部ちゃん!」って。「そもそも、そらジローとぽつリンって性別が決まってるの?」とか細かく聞いていく中で、「ああそうだったんだ」という気づきが私にも沢山ありました。
                                 
白川:例えば、女性ジェンダーがピンクで表されてることが微妙だねって話がでて、いろいろ掘り下げていく中で「そらジローの仲間の中に女の子キャラクターがピンクしかいないっていうのはジェンダー的にあまりよくないかもね」という話も出て、じゃあ違う方向で表現を考えようってことになりましたよね。
                                
松本:長谷部さん的にはかなり自信満々でイラストをみんなに見せたんですよね?
                                
長谷部:はい。「見て見て~!褒めて褒めて!」って感じだったんですけど「そっか…なんか男女平等みたいなものをキャラクターで表すってのはそんなに簡単じゃなかったんだな」と(笑)
そんな時に、白川さんが「虹のキャラクターが欲しいな」とおっしゃったんですよね。確かに、いわゆるLGBTQの象徴であるレインボーの意味にもなるし、天気ということでそらジローとの親和性もすごい高いし、じゃあ虹をモチーフにキャラクターを考え始めてみようかなというのが最初ですね。
                                
白川:これは、僕が取材した色んな企業さんがレインボープライドに合わせて自分の会社のロゴを6色にチェンジしたり、Tシャツを作ったりして参加しているのを毎年見ていたので、うちの会社もいつかそんなことができたらいいななんて思っていたことをポロっと長谷部さんに話したんですよね。新しいキャラクターを作るなんてすごい大変なことだと思っていたので、「いつかそんなことができたらいいな~夢なんだよね」みたいな感じで言ったら、長谷部さんが「すごい!それいいですね!」ってすぐ採用してくれて、気づいたら「にじモ」の案が上がってきてました。
                                
長谷部:私が「ジェンダープロジェクトチーム」を作ってすごい良かったなと思ったのは、私は何もわからないからとりあえず作ったものを投げて、それにチームのメンバーが意見を言ってくれる状況ってすごい大事だなと。私が転んだところでみんなが助けてくれるんだと思えるので、恐れず思った事を口にするようにしています。
ディスカッションすることで、私にもバイアスがあることにみんなとの会話で気づかせてもらったりすることあるし、学び合いの場としてすごくいいなと思ってます。
                               
西:それはすごい意義深いですよね!やっぱり最初はみんな「悪気がなく知識がない」状態だと思うので、こういうチームみたいなものがあることで、みんなが恐れずに学べる場になっていくととてもいいですね。すごい専門的知識を持っている人たちの集団という感じになるんじゃなくて、もっと気楽に話せる場なんですよということがもっと広まるといいですよね。
                                
白川:西さんがおっしゃる通りで、外部の専門家に聞くって「こんなこと聞いちゃったら意識低いとか理解が足りないって思われちゃうんじゃないか」みたいな恐れがあると思うんですよね。だからそれが社内で、「ねぇねぇこれって何でダメなんだっけ?」とか、「この内容やろうとおもってるだけどどう思う?」とか、とりあえずチャットに投げて相談すれば、それぞれが「私はこう思うよ」「僕はこう思うよ」みたいに書きこんでくれて、時にはOAにも反映される場ができていることはとてもいいなと思います。
                               
小西:私はいつも「半径3mのジェンダー」って言ってるんですけれども、やっぱりジェンダーってとても身近なことで、「これってどうなんだろう」とか「こんな言い回しおかしくないかな」とか違和感を感じるって感覚は、身近な半径3mの人たち人と話すことで育まれていくんじゃないかなと思っています。このチームが色んな部署にまたがっていて、意見をチャットでやりとりすることを通じて会話がしやすくなるっていうのは絶対日テレがジェンダー平等へ意識を向上させていくための一助になるんじゃないかって思ってます。
                               
西:やっぱり最初の長谷部さんの提案から、なんでも話せる空気が作られていたのがとても良かったんだろうなという気がしますね。今後も長谷部さんが「率先して間違える係をずっとやっていくこと」が大事なんでしょうね(笑)
                                
一同:(爆笑)
                                
長谷部:そうですね、「うっかり長谷部」としてこれからも頑張っていきますよ。

■虹色のステッカーに込められた想い

松本:今のところ報道局の方たちが中心の話だったんですが、アナウンサーである森さんは、どんなきっかけでこのチームに参加したんですか?
                                
森:私はですね、今年の2月に『世界一受けたい授業』に生徒役で呼んでいただいた時の先生が『元女子高生、パパになる』の本を書かれた杉山文野さんだったんです。むちゃくちゃお話が面白くて、もともと私もLGBTQに興味があったのでもっと話を聞きたいと思ったので収録が終わった後に楽屋まで伺ったんです。その時に、『ウェルカミングアウト』って言葉を教えてもらって、「LGBTQとカミングアウトしてもしなくてもいいんだけれど、もし話してくれるんだったらウェルカムですよ」っていう姿勢を周りの人がとっておくと、その当事者の人はとても安心できるという話を聞いたんですよ。
                               
「すぐやります!何したらいいですか?」って聞いたら、LGBTQの象徴である6色の虹のステッカーを貼ってるだけでも「あの人は理解しようとしてくれている人だ」ってわかると言われたので、もうそこら中に貼らなくちゃと思ってステッカーを探したんです。なかなか見つからないのでネットで買って周りの人に配りもしたし、自分のパソコンにも貼って誰か見つけてくれるかもしれないなと思っていたんです。

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長谷部:当時、森さんにはニュースに出演して頂いてたんですけどステッカーには全然気づいていなくて…パソコンに初心者マークと一緒に虹のステッカーが貼ってあるぞと知って、「実は私たち今『虹』のキャラクターを作ってるんですけど…」って言ったら説明を始める前に、「私もジェンダーチーム入る!」と言ってくれました(笑)
                               
森:そうなんです、ステッカー欲しさにこのチームに入ったようなもので(笑)長谷部さんが虹のかわいいキャラクターを見せてくれた時に、めちゃくちゃ可愛くてこれがステッカーになって日本テレビ社内にいっぱい貼られたらうれしいし、そらジローファミリーだからこそ欲しいって言ってくれる人や気づいてくれる人が多いだろうと思いました。
                                
松本:確かに森さんがおっしゃったみたいに、単純にかわいいと思ってステッカーを手に入れた人が「虹」の裏に込められた意味を知るきっかけになるみたいなことって、子ども達も含めて起こりそうですよね
                                
白川:毎年5月にやるレインボープライドに合わせて企業のレインボーロゴをSNSのアイコンにしたり、グッズを作ってその場で配ったりとかは結構よくあることなんですけど、新しいキャラクターをレインボーで作ってしまった企業はたぶん僕の知る限りではありません。
それはたまたま日テレのキャラクターであるそらジローが天気に関連しているからっていう嬉しい偶然があったんですけど、新しい虹のキャラクターを作ってしまえたことは本当に快挙というか他の企業さんたちも多分びっくりするんじゃないかなって思います。

次回は、「にじモ」の名前の秘密や、新キャラクターの構想、更に「ジェンダープロジェクトチーム」の今後の野望について聞いていきます!

座談会後編はこちら↓↓↓