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演出プラン
11月15日、撮影初日。
天候にも恵まれ、取り残しは数シーン発生したものの、撮了カットはどれも満足のいくものだった。
演出プランというほど具体な策略ではないが、ひとつ重点があるとすれば、「キャラの表情を捉える」ことをテーマにしている。
綺麗な画や風景を目指すというよりは、キャストの演技を確実にカメラに納めることが大事。
演者が泣き笑うさまを、引きやぼかしで済ませるのではなく、レンズの中心に据えて離さずにいる。時にワンシーンをカットを割らずに進める。それは長回しを好むというより、演者の演技のテンポ感を損ないたくないという意図がある。
せっかくの熱演をごまかしたくないとき。長回しが効果的だったりする。
加えて、演者の「どう思うか?」も大事にしたい。
これに関しては、撮影初日は後半からバタついたこともあり、一存で私の考えを演者に押しつけてしまった感があり、反省の念を覚えている。
本来であれば、演者の「こう思う」を聞いてから、私の意を刷りわせて演じてもらうほうが、演者もキャラに入り込みやすい。
他者からの提案より、自身の腹から湧き上がる観念で表現したほうが、気持ちもノリやすい。──と、演出プランはそれベースで毎回行なっている。
(文・小池太郎)