2022年12月の消費者物価指数発表
前年比上昇率は高いが、ピークも近い
12月単月と2022年通年のCPI
2022年12月の総合指数は年率4.0%上昇、生鮮食料品とエネルギー価格の影響を除いたコアコア指数は年率3.0%上昇となった。また、2022年通年の総合指数は2.5%上昇、コアコア指数は1.1%上昇となっている。
日本経済の問題は、物価上昇の構造がコストプッシュ型になっていることである。これは、一重に需要不足が原因で、企業物価指数が二桁上昇となっているにも関わらず、最終消費者に転嫁できずに収益性が圧迫されている構造が浮き彫りになっている。
日本経済は、いわば低体温症に陥っている。この構造からの脱却がなければ、持続的な経済成長は望めない。
なお、コストプッシュの原因となっている国際商品市況は、既にピークアウトしているのと、徐々に円高傾向になっていることもあって、コストプッシュの圧力は、次第に低下していくものと考えられる。
コストプッシュ型インフレ
今回の物価上昇は、国際商品市況の上昇によるものと、為替レートが円安になったことによる影響があって、輸入物価全般が上昇したことが主たる要因である。
中でも、エネルギー資源価格が、昨年の夏ごろにかけて高騰し、電力・ガスなどの公共料金が、時間差をもって、上昇していることが大きく影響している。
また、穀物相場も一時高騰し、こちらも時間差をもって、食品価格全般に影響が広がっている。穀物価格の変動は、それを原料とするパンやパスタなどの食品の価格だけでなく、畜産業の飼料としても大量に使われているため、食肉価格等にも影響する。最終消費者向けの価格に反映されるのは、通常、かなり時間を要するものである。
円安による輸入物価の上昇も、全体的に時間をかけて影響が広がっていくものである。国際商品市況や為替レートが落ち着いても、物価動向に反映されるのは、しばらく時間が経ってからである。
経済の過熱によるものではない
今回の消費者物価指数を財とサービスに大別すると、財が年率7.1%上昇しているのに対して、サービスは年率0.8%上昇にとどまっている。サービス価格の上昇が鈍いのは、需要不足によるものと、サービス分野における賃金が、まださほど上昇していないためだと推定される。
つまり、ディマンドプル型ではないことが、ここから読み取れる。財については、やはり、輸入物価の上昇でコストが上がっていることが、如実に反映されていると解釈できる。
財価格の上昇に関しては、国際商品市況の落ち着きと、為替レートの円高傾向によって、近い将来、ピークアウトするものと見られる。
ちなみに、日本でCPI総合指数が、年率4%を超えたのは、1981年12月以来41年振りのことだが、当時の財の上昇率は4.2%、サービスの上昇率は4.7%であった。現在とは、経済全体の状態が異なることは、間違いない。
現在のCPI上昇は金融引き締めの理由にならない
結論としては、CPI発表数値に関して言えば、金融政策に対する影響は、ほとんどないと判断している。
まず、今回の物価上昇は、一時的な現象であり、今後数か月でピークアウトすることが予想される点が指摘される。私自身は、1月のCPIがピークとなると見ている。2月以降は、徐々に低下し、長期的には、日銀の政策目標としている年率2%のインフレが継続する状態には至らないと予想している。
日銀自身も、2023年のコアCPIの上昇率を1.6%と予想しており、まだまだ、金融引き締めに移行する時期にはなっていないと考えるのが妥当であろう。
日銀総裁の交代がリスク要因として意識される
2023年4月初旬には、黒田総裁の任期満了に伴う、日銀総裁の交代人事が実行される。近日中に国会に人事案が提示される見通しだが、その交代人事後、金融政策に変化が生じるのか否かという点が、最大の焦点となる。
仮に、次期総裁が、金融引き締め姿勢を明確化した場合、日本経済の景気後退は、避けられないであろう。不要な引き締めは、景気を後退させ、深刻な不況に至る可能性もある。
為替レートの影響もあるため断言はできないが、景気後退によって、デフレ傾向に陥る可能性は指摘される。最悪のシナリオとしては、再びデフレスパイラルに陥ることだが、日銀の金融政策の方向性については、引き続き注視したい。
既に、実質的な長期金利の引き上げが行われ、方向感としては、引き締めに傾いていることもあり、今後の日本経済にとって、極めて重要なポイントに差し掛かっていると考えられる。