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新たな挑戦【グリーン・ファンタジー】〜2

第2回「緑の猫」の系譜―手塚治虫から鳥山明まで 

 本書のタイトルを「緑の猫」に決めた後、友人の弁理士に“商標登録”を依頼した所、「登録は無理かもしれないよ」と連絡があった。同じ名の書名があるという。「えっ!」と驚いて著者の名前を聞き、再び驚いた。
 著者は“手塚治虫”だという。1956年の作品「緑の猫」は確かに存在していた。ただ私の「緑の猫」は森を救う光合成生物としての猫であるのに対し、手塚版「緑の猫」は、宇宙からやってきた人間の心を操る未知の生命体としての猫である。コンセプトが違うし、そもそも手塚治虫氏は商標を登録していないので申請する価値はあるという。結果として「緑の猫」、「みどりの猫」の登録が適った。

「緑の猫」は、女性作家と国立研究開発法人とで小・中学校向けの科学物語として企画編集が進められやがて分野が異なる研究者や映像作家等を交えた「編集委員会」を編成することとなった。会議は当初、月二回のペースで進めたが、ファンタジーをサイエンスで裏付けるための作業〜つまり本書の特徴である“作家と研究者の協創”〜は少しずつ進展したものの難航していた。

 そんなある日、お茶の水の丸善で『植物は<未来>を知っている』「植物は<知性>をもっている」という奇妙なタイトルの本を見かけた。著者はステファノ・マングーソというイタリアの植物学者である。本書の協力者に発刊の御礼を伝える<謝辞>の中にある研究者の名を見つけた。彼はNTSで数年前に光合成に関する書籍を発刊している。家内の実家小豆島にいた私は、すぐに彼に電話で連絡した。Mailでやり取りする内、彼が「緑の猫」のテーマでもある“光合成生物”を研究していることが分った。そして九州の大学でお会いして、彼が生育する“光合成生物”を目にすることができた。

 ヒメシャコガイの幼生期にシアノバクテリアを一回注入(食べる)すると以降、ヒメシャコガイは太陽光の下、バクテリアが光合成で生み出す糖分だけで生活できるようになるという。その貝は光合成する動物といっても差し支えない。彼の授業では、「ドラゴンボール」(アニメ:鳥山明作)のナメック星人は、水さえあれば生きていける設定の光合成動物であると教えているという。お会いして話をお聞きしていると先生は、アーティストとのコラボが多いことも知る。
 その中に一人の小説家がいた。先生の紹介を得て科学者と小説家のタイアップによる高校生・一般版のもう一つの「緑の猫」を同時並行で企画編集することを思いつく。

 こうして、小・中学生版と高校生・一般版の二編の「緑の猫」企画編集が始まった。

                    <NTS代表取締役 吉田 隆>

予告:第3回 「光合成する緑の動物たち(1)」