No.27 原島広至氏 〜内なる学びの探究心は学校教育では叶わない〜
累計販売数73万部に到達する単シリーズ著者の原島広至 (はらしま ひろし)先生にインタビュー。早稲田中学・高校に通われて以来、「学校だけでは学べないものがたくさんある」と話され、高校生ですでに早稲田大学図書館に通い、聖書研究の傍らでドイツ語、ヘブライ語、ギリシャ語も独学で学習したと話されます。
――どのような少年時代でしたか。
父親が建築設計士でしたので、家に設計の本が沢山ありました。小さい頃から図鑑が大好きでしたので、設計書を眺めながら透視図法を学び、建築の完成予想図のような絵を描くことをしていました。暗記物も好きでしたから、円周率を100桁、化学元素記号全部、歴代天皇124代、そして百人一首なども空で覚えました。天文も好きで星座もね。
もともと自分で学び始めたわけではなく、小学校の転校で授業の進め方が変わってしまい、独学の面白さを覚えたのです。
小学6年生の時に自分から中学受験をすると言い出し、早稲田に行きました。中学では化学部で分子の立体模型を元に3D立体視イラストを作ったり、ベートーベンの第九を歌うためにドイツ語を調べたりしていました。ですから、語学には自信があり、学校では物足りずに早稲田大学の図書館通いに精を出したものです。
青春時代は聖書研究に没頭しました。キリスト教の奉仕活動にも参加しながら、聖書の原典をヘブライ語やギリシャ語で読みたくて、専門的なヘブライ語辞書はすべて英語でしたから、語学文法にも独学で取組みました。
すでに学校では学ぶことがない気がしました。何にでも興味があったので、学校の授業中にも興味のある本を盗み読みしたりしたので、学校の成績はあまり。親は色々と意見を言うのですが、反抗ではなくそれを超越するには何を学べばよいのかをいつも考えていました。
――たくさんの学びから、初めての著書にした『骨単』が、当社とのご縁だったそうで
30代では書籍のデザイナーをしていました。NTS吉田社長と出会った際に、聖書でマスターしたギリシャ語・ラテン語やその他の言語が、人体の設計図でもある骨の名前の由来になっていることをまとめようと考えていることを話したのです。自分で企画した書籍ですが、表紙デザインに踊るガイコツCGを見せたところ、編集の方にも関心を持ってもらえました。
誕生したばかりの3Dプリンターで今までにない人体模型を作りたくて、吉田社長に高額なマシンの購入をお願いして、編集部に置いていただいたことには感謝しています。
古来の言語は様々な分野に今も生きていて、その知識や情報が現代に生かされきっていないことに気づいたのです。骨から始まり、筋肉、脳、内臓、さらには鍼灸のツボまで広がり、単シリーズになりました。学ぶことを多くの人に楽しんでいただきたくて、読みやすさや面白さに工夫しました。書くと決めたら自分を追い込んでいくので、執筆は比較的早く仕上げられるのですが、私自身が感じている完成度は半分くらいでしょうか。さらに突き詰めたい思いもあり、さりとて次に関心があるテーマも仕上げたいし、今は世界の人口問題、謎解き本、歴史研究、3Dペンなどの新たな技術を用いた解剖学模型などに取り組んでいます。
――後進や若い人への想いはいかがですか
まず学校の成績などは一切気にせず、自分が興味を持ったことを徹底的に追いかけてほしいですね。興味や関心は変わるかもしれないし、続かないかもしれませんが、いつか必ず何かに生かされる日が来ます。ときには失敗や挫折を経験することでしょうが、それを忘れずに記録して、70歳になったら自伝でも書くつもりで記憶しておいてほしいです。そうすれば挫折や苦労は自身の物語の記録となり、回り道したことが返って面白い話しになるのです。順風満帆な物語は読者に感動を与えませんからね。
日本は物質的に豊かになったけれど、人口が減ってゆくこれからの社会の姿を世の中は模索しています。世界が平和になるために、一緒に考えてほしいですね。強い自分の想いがあり、世界を変えたいと考えるなら、本を書く準備をするべきです。話すだけ、語るだけ、思うだけではあなたの意見は世界には広まりません。そのことを伝えたいです。
原島先生の上梓第1作となった、踊るガイコツCGの巻き表紙で創られた2004年3月『骨単』序文に、ご自身を次のように著していらっしゃいます。
〜エディトリアル・デザイナー、マルティメディア・クリエーター、歴史・サイエンスライター。建築CG作家。ヨーロッパの各国の言語に加え、楔形文字のアッシリア語、古代エジプト語・ギリシャ語・ヘブライ語の愛好家。化石・鉱物コレクター。明治大正時代の絵葉書蒐集家。〜
なんという超人、湧き出る好奇心を自ら楽しみながら学び、それぞれに足跡を残されていることに驚くばかりのリモート・インタビューでした。
<取材日:2023/04/24>