見出し画像

連載:新たな次世代店舗① 〜百花繚乱・未来のお店、ロボットと売上拡大策〜

 AIとロボティクスで将来なくなる職業予測(シンギュラリティ前夜〜なくなる職業、生まれるサービス〜)には、流通店舗の販売員は含まれていませんでした。今やロボットは接客や案内、飲食店でのフロアサービスには従事していても、「販売という機能」では人に勝る代替機関はまだ見えてきていないのです。

人手不足対策のための自動化ロボティクス

  小売の現場やスーパー、コンビニではセルフレジの導入が盛んです。夕方の混雑時にレジの行列は耐え難く、お客様のイライラが伝わってきます。それを見越してのセルフ精算会計、セルフレジスターでしたが、こちらでも行列ができる風景が見られます。カゴいっぱいのお買い物では、むしろセルフレジのスペースは狭く、数点の買上げ精算にはふさわしい新しいマシンでしょう。スマホと連動させて、陳列棚から取り出すときに商品バーコードをスキャンする方式も大手量販店では見られるようになりました。レジ担当の人手不足対策として、セルフレジが導入されているのですが、流通店舗での人手不足はレジだけでない場面でも深刻です。
 仕入れ商品の検品、お惣菜の調理加工、お店陳列棚への品出し、売り場の在庫補充、夕方の値下げシール貼り、店舗の裏では大量のダンボール廃棄や商品の処理にも担当者が当てられています。店内のPOPポスター制作、表示価格の点検、お買い物がし易いように陳列商品の整理整頓、特売商品のエンドゾーン(棚の端)構成、そしてお客様との応対、ご案内など。大型店でなくてもたくさんの人手が必要なのがお店なのですが、どの店の店長も売上不足・利益不足に頭を悩ましています。

立地と品揃えの呪文が消える

 流通店舗の歴史を振りければ、百貨店全盛期から駐車場付きの近郊大型スーパー、ショッピングモール、ディスカウントストア、カテゴリーキラーと呼ばれた家電量販店、ホームセンター、コンビニエンスストア、医薬品化粧品併売のドラッグストア、そしてECへと進化を遂げています。
 小売流通業は「立地と品揃え」が勝敗を決すると長く言われ続けてきました。店舗の大型化がそれを物語っており、大資本には敵わない公式があったのです。
 ECはこれに反旗をかざすように、無限大の品揃えを誇っています。消費行動も「店で確かめて、ネットで購入」というショールーミング購買が当たり前のスタイルに変わってきました。また立地は店舗前の通行量を意味しています。大型ターミナルや大都市の商店街、観光地が多くの賑わいを当然としていましたが、通行量では新宿、池袋、東京などの大ターミナルの<駅ナカ店舗>こそが流通量の最大値を誇るようになり、駅に勝る商業地はなくなりました。
 ここに「立地と品揃え」公式が成り立たなくなっているのです。流通小売業にとって、店舗運営において、売上拡大の方策が隠れてしまったのが、現在の大問題点、改善を要する大課題の登場です。

人手不足と売上対策

 パコ・アンダーヒル『なぜこの店で買ってしまうのか〜ショッピングの科学〜』では、トラッカーと呼ばれる調査員が店での顧客動向を細かく記録して、「商品を手に取ったけれども棚に戻してしまう」買わない顧客を調査しているマーケティング活動を紹介しています。
 「買わない」理由には多くの代表的な店の構造、症状があり、陳列方法、棚の高さ、照明、通路幅、店員の挙動や応対の仕方、レジ前の情報掲示、そもそも店のファサードデザインやポスターの貼り位置などの大変細かい指摘が報告されています。「買いたくない店」と「買いたくなる店」を対比していて、小売業に従事する方の必読書でしょう。
 お客様が商品を手に取って買うという、セルフ販売が主流となった今、店を見直して「買いやすさ」や「レイアウト、お客様の動線」などの再評価が必要と言えます。
 少ない人手でできることは限られますが、そもそもの店の設計や運営方法なども振り返ればたくさんの反省点に気づくことでしょう。
「売れない理由」にはたくさんの要素や課題があり、一つずつ対策を取ることが必要で、今までの当たり前を再度見直すことも重要であることに気付かされます。人手が足りないから自動化、ロボット化では、「買わない理由」の対策にはなりません。
 人手が足りないからこそ、セルフ販売から対面販売(販売員を配置する)ことの重要性も改めて考えて見る必要があります。販売活動の要員を確保して、販売以外の店舗業務の省力化や「今までしていたことを、一切やめる」判断が求められているといえるのです。
 店舗運営において、「人手不足とはどんな状態なのか、どの業務に人手が取られているのか、それは止められないか」という内省こそが、今求められている店舗運営の改革ではないでしょうか。

<次号に続く 2024/01/24 花房陵>

次世代店舗創刊号:2018年AmazonGoの登場で無人店舗が始まった

次世代店舗創刊号

次世代店舗第2号:キャシュレスの時代、〜Payが拡大中

次世代店舗2号

次世代店舗第3号:商店街の未来

次世代店舗3号

次世代店舗第4号:店舗は劇場になった

次世代店舗4号