スクールに頼らず、自分の価値は今の仕事で培え

30代サラリーマンがIT業界への転職を決めた理由のひとつは、「汎用性のあるポータブルスキルを身につけたい」からでした。

これまでの仕事は職務範囲が狭く、専門性の高い思考が求められる割に将来的に汎用できるスキルが身に付くわけでもない…という判断から転職を決めました。

ですが、実際に転職を決めてみて振り返ると「大事なのはポータブルスキルではなくて、もっと根本的な価値の部分だったかもしれない」と思い始めました。

今回は「自分の価値を上げるのに、現在の職種は関係ない」ということを書きます。


ポータブルスキルって何だ

「ポータブルスキルを得るために、IT業界に入ろう」という文脈において、「ポータブルスキル」というのはIT関連の技術や知識=スキルであると言えます。

つまり、当時の僕の考えでは「IT関連のスキルはいろんな会社に行っても使えるポータブルスキルだから、身につけるとどこに行っても働ける」と考えていたわけです。

今は、この考え方は半分だけ正解であると思っています。

プログラミングスクールはきっかけでしかない

プログラミングスクールを卒業して、そこで得たスキルで転職する。
そういった転職ルートをイメージする方もいると思います。僕もそうでした。

ですが、実際に面接を複数受けてみると、
人事の人:「プログラミングスクールで半年頑張って勉強してきたのですか!素晴らしいですね!採用!」
みたいなことには全くなりません。

せいぜい、良くて「プログラミングスクールで学ぶ程度にはやる気があるんですね、はいはい。」程度の認識をされますし、
悪いと「プログラミングスクールでカリキュラム通りのものを作ったぐらいで、"実務で役立てます"なんて思われたら困るんすよ。」ぐらいの温度感です。体感では、後者が多数派です。

要は、プログラミングスクールで学んだ程度のことはまだ「スキル」とは呼べないというのが一般的な企業の感覚のようです。
よって、面接で開口一番「プログラミングスクールで頑張って勉強しました」というカードを切るのは悪手である可能性が高いです。

結局、重視されるのは仕事ぶりと主体性

未経験のIT転職において、プログラミングスクールで得た知識や技術は全く役に立たないのか?と言えば、「学習内容自体はたぶん、あんまり役にたたない」と言って差し支えないと思います。

しかし一方で、「プログラミングスクールで得た知識や技術を使って、現職の仕事をめちゃくちゃ効率化しました」とか「ロジカルな考え方を身につけて、現職の仕事の業務手順書を一新しました」とかはわりと好印象を持たれる感覚があります。

要するに、「勉強しながら実務に繋げられる」「今の仕事に前向きに取り組んでいる」といった普遍的な「人となり」を見られているということです。

「プログラミングスクールで学習した内容」ではなく、「プログラミングスクールで学習した内容をどう活かせる人なのか」「今後も勉強して実務に取り組める人なのか」といった点を見られるということは、言い換えると「スキル(CanやDo)を超えて、より抽象的な”在り方”(Be)を見られている。」ということです。

よく考えれば、学歴とかもそうですよね。
「いい大学を出ているから、難しい授業の内容をいろいろ知っているだろうな」 という期待ではなく、「いい大学に入って卒業できるくらい、努力できる人なんだろうな」という期待値でもって、学歴によるイメージが決まっていると思います。

ということは「努力できそうな人だ」「継続的・自発的に貢献してくれそうな人だ」と思われるほうが、一定期間勉強してきた事実よりも重要である、ということです。

今の仕事でいかに「主体性」を培うか

プログラミングスクールで学習した内容、それ自体は30代未経験のIT転職においてはあまり意味がなさそう、というのが僕の意見です。

ですが、プログラミングスクールを受講すること自体に意味がないとは思いません
つまり、プログラミングスクールを受講しようと考える程度に「自分のキャリアを自発的に考えている」という強みを起点に、主体性を培いながら今の仕事をすると良いと思います。

主体性の定義については『7つの習慣』をはじめとする自己啓発書・ビジネス書に譲ります。

僕は「主体性を持つことができない場面など無い」と思っています。
※すでに心身を病んでいるような状況に考慮すると何も書けないので、一旦、諸々の判断ができる心身状態を前提とします

一般的に想像されるパワフルな主体性ではなく、もっと穏やかな形もあります。詳しくは鈴木裕先生の『無(最高の状態)』なんかがおすすめです。

主体的であることの実例

  • 「今の仕事に意味を見出せない」
    →どうすれば意味を見出せるか?
    →会社・事業のミッションについて詳しく知るための努力はできるか?

  • 「上司の当たりがキツい」
    →どうすれば上司とうまくやっていけるか?
    →報連相を密にしてみたらどうか?
    →上司の困り事を先回りして解決できないか?

    などと考えることが主体性の一つの形になります。
    あとはまぁ、「転職しちゃおう!」というのも一つの主体的行動の結果でしょう。

同じ仕事をしていても「毎日同じ仕事をしながら、時間が過ぎるのを待っている」のと、「毎日の仕事をいかに効率よく、さらに良い成果をあげるための方法を考えたり試したり、提案したりしながら取り組む」のとでは、数週間後の仕事ぶりに雲泥の差がでます。

いわゆる、「毎日1%ずつ向上していけば、1年後には37倍になってる」的なアレです。

スキルはアプリケーションにすぎない。磨くべきはOS

主体性を培うと、それ自体が強みになります。
これはポータブルスキルというよりはもはや「そういう人で在る」レベルの概念であって、仕事に置き換えると「どんな仕事でも主体的に取り組める人」になることができます。

その仕事で何ができるか?というスキルは、コンピュータで例えるならアプリケーションにあたります。
一方で、自分がどのような人であるか?どのように仕事に取り組む人であるか?といった面は、アプリケーションを動かす土台であるOSにあたります。

業務内容がITだろうが接客だろうが営業だろうが、その専門業務のスキル=アプリケーション を磨く一方で、「どのように仕事に取り組む人であるか」=OSの部分を磨くことで、業界未経験での転職に際して強力な武器になるわけです。

今の仕事で出来ることをやりきる

転職は「今までの仕事を捨てて、新しい仕事に取り組む」というイメージがあるかもしれませんが、実際には今までの経験というものは捨てることはできず、ついて周ります。
ここでいう経験というのは「やってきたこと」というファクトだけではなく、「どのようにやってきたか」という姿勢も含めて付いてきます。

昔のパワハラ的発言で、「この会社でやっていけないようじゃ、どこにいっても通用しないぞ」というセリフがあります。
このセリフの全体を肯定することはできませんが、実際のところ「今の仕事で主体性を発揮できない人が、どこかの仕事では急に発揮できます」ということは少ないかもしれません。

もちろん、新しい職場では人間関係に恵まれ、のびのびと働けた結果として、主体性が伸びることはあるでしょう。
しかし戦時中の捕虜の手記、世界中の宗教における修行などでよく見られるように、主体性というのはある程度どのような環境でも発揮できるものです。

よって「今の仕事で主体性を持てないが、新しい職場でこそは頑張るぞ」というのは望み薄の夢である可能性があります。

プログラミングスクールでスキルを身につけて、新しい業界に飛び込もうと考えている人は、今の仕事や環境に対して主体性を発揮することも、一緒に意識すると良いと思います。
少なくとも、主体性を手放して反応的(他責思考)でいる限り、プログラミングを数ヶ月学んだくらいの人材は多くの会社に必要とされません。
こういった人はよくSNSで「プログラミングができても就職できない、プログラミングはもうオワコン」といった他責思考をブチまけたりしていますが、個人的には「そういうとこやぞ」と思ってしまいます)

参考図書

今回の記事の参考にした本は以下です。

大谷翔平が高校1年生の時に書いた曼荼羅チャートのうち2つのセクションは「人間性を磨く」目標を掲げるものだった、というような、「OS」部分を磨くことの重要性をわかりやすく説明しています。

Kindle Unlimitedで無料で読めるので、気になった方はぜひ。

今日はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。


いいなと思ったら応援しよう!