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色も質感もそれ自体がアートになる: アーティスト・山中智郎さんとのワークショップ
2024年4月19日(金)に株式会社明治産業で行われたアーティスト・山中智郎(やまなか・ともろう)さんとのワークショップのようすをレポートします。
伝統×現代の技法で日本ならではの「美」を表現するアーティスト・山中智郎さん
今回のワークショップも、明治産業の社員自身が企画・実施するアート活動=「MAC会議」の一環として実施されたもの。今回はメンバーの菅本さんが企画しました。
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今回のゲストとなる山中智郎さんは、福岡を拠点に活動する現代美術アーティスト。伝統工芸から引用した手法と現代的なマスキング技法を組み合わせ、人の生まれ持つ流動的な美を表現した『麗髪(うるかみ)』シリーズをメインとしながら、企業広告やアパレルデザインなど様々な活動を続けています。
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今回の記事では、社員と共に行なった「テクスチャーアートをつくってみよう」ワークショップのようすと、ワーク終了後に山中さんと行ったインタビューをご紹介していきます。
「テクスチャーアートをつくってみよう」ワークショップ
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山中智郎さんへのインタビュー
そしてここからは、ワークショップをすべて終了した直後に、山中智郎さんと行ったインタビューのようすをお届けします。
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——今日はお疲れ様でした。企業の社員さん向けのワークショップはいかがでしたか?
山中さん 僕、実はワークショップをやること自体が初めてだったので、皆さんに手伝ってもらいながら何とかやってみたという感じでしたが、めちゃくちゃ面白かったです。僕は人を見るのが好きだから、「この人はパパパッとやっちゃうんだな」とか、「この人は色んな人に相談してるな」みたいなことを見ていくのも楽しくて。
——ワークショップに参加された明治産業の社員さんたちにはどのような印象を抱かれましたか?
山中さん すごく自主性があって驚きました。こちらが説明をしたらすぐにパパパパッと手を動かしてみていたり、僕では考えつかないようなアイデアもかなり盛り込んでいたりして。マスキングテープを上手くずらしながら、面白い画面づくりをされていた方もいましたね。
絵描きじゃない人が描く絵って本当にすごくて、道具の使い方も画面の作り方も、全部こちらの想定とは違うものになっていく。それをあんなにたくさん見せられてしまったので、すっかり感心してしまいました。
——今回はマスキングテープや刷毛を使って「テクスチャーアート」を完成させるワークショップでした。山中さんはどのような狙いを持ってこのワークをご準備されましたか?
山中さん まず、マスキングっていうもの自体が一種の制約なんですよね。決まり。ルール付け。区切ること。これによって、画面にまずひとつの秩序が生まれるんですが、そうなると同時に今度は「その中でいかに自由にできるか」という発想も生まれてくるんです。
そして今回は、使える色もかなり絞りました。寒色を使わず、赤やピンク、黄色、金色といった暖色系の色だけにしました。そうやっていくつかのルールをつくったうえで、社員さんたち自身がバリエーションを生み出すことに挑戦してみて欲しかったんです。その一方で、全体の色を統一することで連帯感みたいなものも生まれてくるんじゃないかとも考えていました。
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また、僕が刷毛を使う理由は、「流れ」なんです。僕は「流れ」というものが日本美術の歴史の中でとても大事にされてきた部分ではないかと思っています。川の流れや、人と人との繋がりみたいなものが、やわらかい流線で表現されてきた。日本美術のそういった部分に僕も感銘を受けて以来、自分の作品づくりには意識的に「流れ」を取り込んできたので、今回皆さんにもそこを直感的に味わってもらえたらと考えました。
——社員の皆さんが作られた20枚以上の絵をご覧になって、どのようにお感じになりましたか?
山中さん すごかったですね。ここから想像もしてなかった画面が作れそうで、どのように並べていくかを考えるのが、今から楽しみです。例えば黄色から赤っぽいもの、柔らかめのものから激しめのもの、という風にグラデーションを作っていくのも面白いかもしれないし、それぞれをグループ分けして固めていくのも、また別の面白さが生まれそうです。
——現在、山中さんご自身のアート活動では、いくつかのシリーズを展開されています。ご自身の活動を通してどのようなものを表現していきたいとお考えですか?
山中さん さっきも触れた「流れ」に意識を向けて作品を作っていきたいと思っています。儚さや悲哀、たおやかさや麗しさ。そういう「やわらかい感じ」は、我々日本人には自然なものであると同時に、海外の人にとっては真似したい感覚でもあるようなんです。そういう意味では、僕の最近の作品は海外へ見せていくことを意識した作品とも言えるかもしれません。実際、僕の絵を見て評価してくれる方の半分以上は、海外の方なんですよね。
——海外の方たちが山中さんの絵をご覧になったときには、実際にそのような「日本ならでは」のやわらかさを感じているようすですか?
山中さん その感覚はありますね。「やっぱり日本人は、悲しさを描かせたら一番上手いよね」みたいな感想をよく頂きます。喜びとかよりも、悲哀や儚さ。そういうものが私たちの持ち味だと思うし、そういうものに美しさを感じることが出来る感覚。侘びと寂び。ものの哀れ。盛者必衰。何事も「常ならざるものである」というような感覚に、自分の作品を通じて着目してもらえるのは面白いですね。これからも、そういう感覚にまだ気づいていない新しい観客の方に見せていけたらなと思っています。
また最近は、絵画だけでなく、「流れ」を枯山水のお庭で表現するインスタレーションにも挑戦しています。日本人は、お庭の砂利の上に表された川のような紋様、その「流れ」ひとつにも色んなものを当てはめてしまえる感覚を持っている。そういったものを、自分の作品を通じて世界の人々にも届けていけたらなと思っています。
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——今回のワークショップのように、様々な方と一緒に作品づくりをするような活動も、また挑戦してみたいですか?
山中さん そうですね。去年も新天町でひとつ大きな壁画を描いたのですが、そのときも近所の方々や通りすがりの方々と一緒に作りました。子供たちにマスキングテープを剥がしてもらって作品を完成させたりして。そうやって自分の作品づくりを通して色んな方と繋がっていくのは面白いですし、今後も機会があればやってみたいですね。
——今日のワークショップの作業中、社員さん同士の会話のなかに「なんかすっかりアートが身近なものになってきたね」という声も聞こえていました。山中さんが今後手が必要になった時には、いつでも彼らが助けに来てくれそうです。
山中さん 有り難いですね! 僕自身も今後色んな人と作りたいという想いがあるんです。アシスタントワークもやってみたいし、子供たちと一緒に作ってみたいというのもありますね。
僕の作品づくりに参加して、体感して欲しいのは、頭だけで考えてるのではなく「作りながら考える」とか「先に手を動かしちゃう」みたいなこと。今回のワークショップはまさに「もう先にやっちゃう」みたい感じでしたから、嬉しかったですね。
——みなさん、先生のレクチャーが終わるのも待たずにじゃんじゃん手が動いちゃってましたよね(笑)。
山中さん ですね(笑)。スタッフの皆さんも「うわーやばいやばい!」みたいな感じで慌てながらも対応くださってて。でも、そういう皆さんのほとばしる感じが見れたのは良かったですし、面白かったです。
——今後はどのような活動をご予定されていますか?
山中さん 5月末には京都の蔦屋書店さんで個展をやらせてもらうんですが、それに向けて今、お皿をつくっています。刷毛目を残して彩色したお皿をいま焼いてもらっていて、完成が楽しみなんですよね。
——数十年後にはどんなアーティストになりたいという目標はありますか?
山中さん なんだろうな……。まず夢はでっかく、国内を代表するアーティストになりたいと宣言しつつも、僕の理想は「渡来人」なんですよね。海外に日本の文化を持っていって、同時に海外の文化やシステムを持ち帰ってくるような人。そんな文化交流の要みたいな役割を自分も果たせたら良いなと思っています。
——今の活動の先にその景色へつながる道も見つかりそうです。これからのご活躍を応援しています!
山中さん 活躍できたらいいな。頑張ります!
協力:株式会社AGRICO、OVERGROUND
PHOTO:橘ちひろ
TEXT:三好剛平(三声舎)