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【翻訳】●コンラの悲劇的な最期、またはオイフェの一人息子の死●

この話をまとめた本を作りました。詳しくは以下の記事でどうぞ。

  

●コンラの悲劇的な最期、またはオイフェの一人息子の死●

Aided Óenfir Aífe
The Yellow Book of Lecan
英語訳: Kuno Meyer


 クー・フランが息子を殺した原因はなにか?

 語るのは難しくない。
 クー・フランは、アードガムの娘スカサハに武術を教わるため本土(レーサ)に赴き、ついに奥義をすべて伝授されるに至った。
 しかも隣国の女傑オイフェがクー・フランのもとに行き、妊娠した。クー・フランは彼女に息子を産むだろうと云った。
 「この黄金の指輪を持っていてくれ。その子の親指にぴったりになるまで。それが合うようになったら、アイルランドに俺を捜しに来させてくれ。誰がいても進む道を変えず、誰にも名告らず、いずれの戦闘も拒否はしないように」

 七年後、少年は父親を捜しに出かけた。
 アルスターの男たちはそのとき、《足跡ガ浜》に集まっていた。金に塗られた櫂を持ち、青銅の小さな船に乗って、少年は彼らに近づいた。
 小舟のなかには、小石が山になっていた。
 少年は投石器に石を入れ、海鳥を狙って投げた。見事な一投だった。鳥は墜落したが、*****生きていた。
 少年はまた鳥を空に放った。
 彼は眼で追うには速すぎることを、両手のあいだ、口蓋の妙技でなしとげた。彼は声を調整し、再度、鳥を倒した。そして、もういちど復活させた。

 「ううむ」と、コンホヴォルは云った。
 「あの少年が着く土地に災いが起きる! 彼が来た島から大人が来たら、小さな子供が熟練したら、我らは塵のように細かく砕かれる。誰か彼と接触してくれ! あの子を上陸させるな!」
 「誰があの子と逢う?」
 「エハハの息子、コネレがいいだろう」と、コンホヴォルは云った。
 「なぜコネレを?」と、ほかの者が訊ねた。
 「論理的な考えと雄弁とを振るうなら、コネレは適役だ」とコンホヴォルは答えた。
 「俺が行きます」と、コネレは云った。

 ちょうど少年が浜に到着したときに、コネレも着いた。
 「少年よ、きみは充分遠くまで来た。きみがどこへ行き、きみの仲間がどこにいるか、我々に教えてくれ」
 「僕は誰にも僕のことを知らせない」と、少年は返した。
 「そして僕は誰のことも避けない」
 「上陸してはならない。きみの素性がわかるまで」
 「僕は目指したところに行く」

 少年は顔を背けた。すぐに、コネレは云った。
 「こっちを向いてくれ、少年。*****コンホヴォルがきみを護るだろう。勇敢なネッサの息子、コンホヴォルに眼を向けてくれ。Coscraの息子シェンハに、大隊を負傷させる炎、赤い刃のフィンタンの息子ケテルンに、詩人のアマルギンに、大軍勢のクースクリド・メンに。勝利のコナルが守護する者を歓迎しよう。*****成熟していない、髭のない若者を迎えることは、アルスターの者が許可しない」


 「きみは我々に出逢えた*****。それゆえに、答えを持っているだろう。*****もとの場所へ戻れ!」
 「数多くの兵を持っていたとしても、あなたには僕を止められない」
 「やれやれ」と、コネレは云った。「ほかの者に話をさせてくれ!」
 そしてコネレはアルスターの男たちのもとへ行き、彼らに話した。

 「俺が生きているあいだに、アルスターの栄光が奪われることはあってはならない」と、《勝利のコナル》は少年のほうへ向かった。
 「きみの技は見事だ、少年」
 「あなたにはたいして面白くないでしょう」
 少年は投石器に石を載せ、宙に放った。その轟によって、コナルは仰向けに倒れた。少年はコナルが立ちあがるまえに、盾の帯を彼の腕にかけた。
 「誰か、彼に対する者は!」と、コナルは云った。
 そのようにして少年は、アルスター軍を嘲った。

 クー・フランは少年のほうへ向かっていたが、しかし、フォルガルの娘エウェルが彼の首に腕をまわした。
 「下りて行ってはだめ!」と、彼女は云った。
 「あそこにいるのはあなたの息子よ。たったひとりの息子を殺すなんてだめ! *****我が子に立ち向かうなんて、公正な戦いでも賢明でもない。*****わたしを見て! わたしの声を聞いて! わたしの意見は正しいもの。クー・フラン、聞いて! わたしはあの子がどんな名を名告るか知っている。あそこにいる少年が、オイフェのひとり息子のコンラなら」

 すぐのちに、クー・フランは返した。
 「おい、じゃまをするな! *****そこにいるのが我が子だったとしても。俺はアルスターの名誉のためならば殺すだろう」

 それから、彼は自ら下りて行った。
 「おまえの技はおもしろいな、見事だ坊主」
 「あなたの技はそうじゃないね」と、少年は云った。
 「あのふたりにはできなかった、僕自身のことを知られるかもしれない」
 「俺は小さなガキを連れて行かねばならなかったんだが。しかし、おまえは名告らなければ死ぬぞ」
 「それならそれで!」
 少年はクー・フランのほうへ進み、彼らは剣戟を振るった。少年は実に正確な一撃で、クー・フランの髪を切り落とした。
 「茶番はここまでだ!」とクー・フランは云った。「さあ、素手でやろう!」

 「僕はあなたのベルトに届かない」と少年は云った。
 彼はふたつの石に登り、三度、クー・フランをふたつの石柱のあいだに押しつけた。少年は足首が石に入り込んでしまうまで、石からどちらの足も動かさなかった。少年の足跡はそこにまだ残っている。これによって、アルスターでは《足跡ガ浜》と呼ばれている。
 それから、ふたりは海に行き、互いを溺れさせた。しかも少年は二度、クー・フランを水に沈めた。
 その後ただちにクー・フランは海から少年に襲いかかり、ゲイボルグで彼を騙し討ちした。というのも、スカサハはかつてクー・フランただひとりにだけ、その武器の使いかたを教えたからだ。
 クー・フランは海を貫いて槍を放ち、少年のはらわたは足許にまで垂れ下がった。

 「なんだこれ! こんなのスカサハは教えてくれなかった!」と少年は叫んだ。
 「あなたが僕を傷つけるなんて悲惨だな!」
 「そのとおりだ」と、クー・フランは云った。
 彼は少年を腕に抱き、*****仲間の前まで運んで下ろした。
 「そら、みんな、これが俺の息子だ」
 「ああ……!」と男たちは嘆き、「ほんとうです」と少年は云った。
 「僕が仲間になっていたら、五年後までにこの世のすべての人間を打ち負かし、あなたたちはローマまでの王権を握っていた。でも実際はこうだ。だから、この場にいる有名なひとを教えてください。僕が別れを告げられるように!」

 その後、コンラは次々に首に腕をまきつけ、父親に別れを告げ、すぐに死んだ。
 クー・フランの悲痛な叫びがあがり、コンラの墓が作られ、石が設置された。そして三日間、少年を悼んで、アルスターの人々は親牛から子牛を引き離していた。


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