【翻訳】●クー・フランと偉大な女神との出逢い●
・本人の英語力は地を這うレベル
・そのため翻訳の内容についての質問は受けつけかねます(誤訳についてのご指摘はありがたく……)
・登場人物の名前は英語読みとアイルランド語読みが混在しています
・人名や地名など固有名詞の一部は訳せないままになっております
・一文が長いところは適宜、改行しています
・意訳し、補足し、削除したほうがわかりやすそうな冗長な部分は若干削除しました
・本文中の()、また[]内は英文にあるものです。【】は、追加しました
・兄貴好きのマスターがざっくりと話の内容を知りたかっただけの代物です
・おなじようなことを考えているかたもいるのではと公開
・意味が不明な部分もあります
・こまかいことを気にしないひと向け
この話にはYBL版とEgerton 1782版があります。これはいちおうYBL版ですが、YBL版は破損が多く、英語訳以前にアイルランド語版の段階でいくらかの文章をEgerton 1782版で補っています。
YBL版ではモリガンではなく、別側面のバドヴだったらしいのですが、英語訳が Morrigan になっているので倣いました。
作中、戦車に関する語で「ferta」と出てきますが、これがなにであるかはわかっていません。おそらく戦車の後ろにあり、取り外し可能な、長さの調節できるポールであったと推測されてます。
●クー・フランと偉大な女神との出逢い●
Tain bo Regamna
The Yellow Book of Lecan
英語訳: http://www.ancienttexts.org/library/celtic/ctexts/regamna.html
クー・フランが Dun Imridで眠っていると、北から叫び声が聞こえた。それは彼に向かってまっすぐやってきた。また、叫び声は不吉で、クー・フランをひじょうに恐れさせた。眠っている最中に眼が覚めたため、彼は大きな心配とともに、彼の部屋から屋敷の東側の地面に落ちた。彼は武器を持たずに出ていき、家の前の芝生の上にいたが、妻が彼を追って武器と服とを持ってきた。それから彼は、北のFerta Laigから来た、馬具をつけた戦車に乗ったロイグを見た。
「どうしてここに?」と、クー・フランは訊ねた。
「叫びだ。平原に響き渡っている」と、ロイグは答えた。
「どちら側だった?」
「北西からだな。Caill Cuanの大通りを越えたところだ」
「あとを追ってみよう」
彼らはただちにそこから出て、Ath da Fertaに行った。彼らがそこにいると、すぐに、Culgaireのローム土壌の区域から、戦車のガラガラとした音が聞こえた。すると、彼らの前に戦車がやってきた。そのなかに赤毛の馬が一頭いた。馬は一本足で、胴体には楔が通り抜けるまで戦車の軛が貫通しており、それが額にしっかりと固定されていた。
戦車には赤い女性が乗っていた。彼女は赤い外套を羽織っていて、赤い眉毛をしていた。外套は戦車のふたつのfertaのあいだに落ちた。
赤い外套の大きな男が戦車のそばにいて、背には二又のハシバミの杖があった。彼は自身の前に牛を追い立てていた。
「その牛はおまえに追い立てられるのをいやがっている」と、クー・フランは云った。
「その雌牛はあなたものではなく、あなたの友人知人の牛でもない」と、女が返した。
「アルスターの牛は俺が保護するものだ」
「この雌牛についての決定をあなたが? あなたの手に与えられた仕事は多すぎる。おお、クー・フラン」
「なぜ女が応える? どうしてその男じゃないんだ」
「あなたが話しかけたのはその男ではなかった」
「やれやれだな。俺は彼に話しかけたが、あんたが代わりに答えたんだ」
「Cold-wind-and-much-rushes が、彼の名」と、彼女は云った。
「じつに、驚くほど長い名前だな」
さらにクー・フランは云った。
「その男が答えないなら、あんた自身で答えるんだな。名はなんだ?」
「あなたが話している女性は、Little-mouthed-edge-equally-small-hair-short-splinter-much-clamour」と、男は云った。
「俺を莫迦にしてるのか?」とクー・フランは叫び、彼女の戦車に飛び乗った。つまり、彼は彼女の肩に両足を置き、彼女の頭のてっぺんに槍を載せた。
「鋭い武器を向けるのはよして!」
「本当の名を名告れ!」
「私から離れて!」と、彼女は云った。
「私は本当は女性の風刺詩人です。そして彼はクアルンゲのドーラ・マク・フィアハナ。すぐれた詩の代金として、この牛を連れてきた」
「では、その詩を聞かせてみろ」と、クー・フランは云った。
「ただし私から離れて。私の頭のうえでそれを振り落とすのは、あなたのためにもならない」
その後、彼は戦車のふたつの棒(ferta)のあいだまで移動し、彼女は彼のために歌った。
*****【元本で詩の部分が破損しているため翻訳不能。これから起こるクアルンゲの牛争いを嘲った内容であることはわかっている】
クー・フランは戦車に突進したが、馬も女も戦車も男も牛も、見失ってしまった。
そのすぐあと、彼は、彼女が黒い鳥になって近くの枝に留まっているのがわかった。
「危険な女だ」と、クー・フランは云った。
「今後、この粘土質の土地は《有害なドルイド》と呼ばれるだろう」と、女は云った。
それ以来、《ドルイドの沼地》となっている。
「あなただとわかっていれば、こんなふうに別れはしなかった」と、クー・フランは云った。
「そなたがしたことは、そなたに不幸を招くだろう」と、彼女は云った。
「俺に対して、あなたはなんの力も持っていない」
「それどころか、妾には権力がある。それはそなたの死を監視すること。そして妾はそうするだろう」と、彼女は云った。
「妾はこの牛をクルアハンの妖精の丘から連れ出した。クアルンゲの黒い雄牛、つまりドーラ・マク・フィアハナの雄牛の子を産ませるために。この雌牛の胎にいる子牛が一歳になれば、そなたの人生もそこまで。そしてそれこそが、クアルンゲの牛争いに通じている」
「その牛争いのために俺は、いっそう輝かしい存在になるだろう」と、クー・フランは云った。
「俺は戦士たちを殺すだろう、大いなる軍勢を破るだろう、そうして俺は牛争いの生存者となる」
「どのように? そなたと力がおなじで、戦勝もおなじくらい豊かで、おなじように手柄を立て、おなじように獰猛で、おなじように不屈で、おなじように気高く、おなじように勇敢で、おなじくらい偉大な男と戦っているとき、妾はうなぎになり、浅瀬でそなたの足に絡みついて、そなたにたいへん不利な戦闘になるようにする」
「俺はアルスター人が誓う神に誓う。俺は浅瀬の苔の生えた石にあなたを叩きつけよう。そうして、あなたが俺から離れないなら、俺はあなたを癒すことはない」
「真に、妾はそなたに対抗する灰色のオオカミになる。そうして、そなたの右手から左手にのびるまで、そなたの筋を剥ぎとろう」
「俺はあなたを叩きのめす。槍でもって、右眼か左眼があなたの頭から飛び出るまで。それでも俺から離れないなら、あなたは俺から決して癒しを得ることはない」
「妾は真実にするだろう。そなたがおなじ力量の男と戦っているとき、耳の赤い白い雌牛として、妾は浅瀬の近くの湖に入る。百頭の赤い耳の白い雌牛が妾に味方している。そして、『人の真実』がその日に試される。そうして、それらはそなたの頭を奪いとるだろう」
「俺は投石器で投げるだろう。あなたの下側から右脚か左脚、どちらかを壊すために。それでも離れないなら、あなたは俺の援けを得ることはできない」
彼らは別れ、再びクー・フランはDun Imridに、モリガンは牛を連れてクルアハンの妖精塚に戻った。
この物語が、『クアルンゲの牛争い』の前触れとなるように。