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【イベントレポート】2024/7 教えて編集者さん!ライターにカメラは必要ですか?

「今回の取材、カメラ撮影もお願いできますか?」と依頼されドキッとしたことがある取材ライターは多いのではないだろうか。カメラ撮影の技術があれば問題ないのだろうが、未経験の場合は「自分にできるのか?」と不安を感じるだろう。

取材ライターが未経験から撮影も行う場合、どんなことに気をつけたらいいのだろうか。そもそも、取材ライターならカメラスキルは必須なのだろうか。そんな疑問を解消すべく、編集者として複数のメディアで活躍されるえるもさんに話を聞いた。

登壇者紹介

1.ライター時代、カメラを始めたきっかけは?

現在は編集者やディレクターとして活躍しているが、その前はライターとして自ら取材や執筆をしていたというえるもさん。当時から、自前のカメラで撮影を行っていたという。そもそもえるもさんがカメラを始めたきっかけを聞いたところ、趣味で参加していた社会人コミュニティだったと教えてくれた。
所属していた社会人コミュニティで写真を撮るイベントがあり、それに参加するときに初心者向けのカメラを購入したそうだ。
「購入から7〜8年ぐらい経っているけど、現在も月1回くらいで利用しています。プライベートはもちろん、仕事でも同じカメラを使っていますよ。買うときは高いな、と思ったけれど、もう元は取れていますね」と教えてくれた。

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ライターをしていた当時よくカメラを利用していたのはビジネス系の取材だったようだ。
ご自身のカメラで撮影した写真が掲載されている記事を見せていただいた。

過去にはスマートフォンで撮影していたこともあったが、スマートフォン上の画面だと気にならなくても、記事に差し込むと写りが暗かったり、画質が粗かったりして、違和感があったのだそう。
一方、「当時は撮影の仕方とかよく分からなかったけど…」とえるもさんは言っていたが、一眼レフで撮影した写真は記事に自然と溶け込んでいる印象を受ける。
やはり自身で撮影をするなら、スマートフォンではなく一眼レフカメラが必要になりそうだ。

2.発注者目線で、カメラ×ライターのメリットを教えてください

現在メディア運営をしているえるもさんの目線で、「カメラ撮影もできるライター」になることのメリットを聞いたところ、「仕事内容にもよるけれど、写真撮影もできるライターさんだと、依頼の優先度が高くなることがある」と教えてくれた。

多くの記事には、制作するための予算が決められている。予算が少ない場合は、カメラマンに撮影を依頼すると追加で費用がかかってしまう。そのため、写真撮影ができるライターに依頼をすることが多いようだ。
中でも飲食店の取材やイベントのレポートのような写真の掲載が必須の記事は、写真も撮れるライターにお願いすることが多いという。

3.ライター×カメラマンに求められる写真スキルとは?

ライターがカメラスキルも身につけることのメリットは、十分に理解できただろう。しかし、撮影技術がないと不安に思う読者もいるのではないか。
えるもさんいわく、「プロのカメラマン」と「カメラもできる取材ライター」に求められるスキルは異なるのだそう。基本的には以下のポイント2つを満たせば、「カメラもできる取材ライター」と言えるのではないか、と教えてくれた。

▼構図のバリエーションを増やす

1つ目のポイントは、様々な構図で写真を撮れることだ。
「カメラマンが撮影するように、印象的な写真を撮らなきゃ、と思う人は多いかもしれません。綺麗に写すことや笑顔の写真をとることにフォーカスしがち。だけど取材記事ではそれ以上に”構図のバリエーションが豊かな写真”が求められています」という。
色味などの加工は後から修正できるが、「上半身アップの写真」「全身写真」「右側からの写真」「笑顔の写真」「真面目な表情の写真」など、構図や表情は撮り直しがきかない。
1記事に必要な写真は大体4〜5枚、多い場合6〜7枚。できる限り、すべて違う構図や表情の写真を差し込むことが好まれる。つまり、6〜7パターンの異なる構図や表情の写真を撮っておく必要があるのだ。
バリエーションの作り方は、取材で一緒になったカメラマンの動きを見ていると勉強になるという。えるもさん曰く「プロのカメラマンは取材の間、常に会場内を歩き回り様々な角度から撮影していることが多い」とのことだ。

テクニックをより詳細に記載したえるもさんのnoteはこちら

▼写真の良し悪しの判断

2つ目のポイントは、取材記事に適した写真を選べることだ。
写真の選定には、取材でライター自身が撮った写真から選ぶ場合と、カメラマンが撮った写真からライターが選ぶ場合がある。その際に取材記事に適した写真の特徴を知っておくことが大事だという。
例えば、口や目が半開きになっていたり、表情が暗く映っていたりする写真は記事中に使いづらい。また、同じ構図の写真も使いづらい。
より良い写真を選定するために、数を多く撮っておくことが重要である。

この2つのポイントをまとめると、ライターに求められるカメラのスキルとは「いろんな構図でできるだけたくさん撮り、その中から写りが良く、構図や表情の異なる写真をピックアップする」ことだといえる。

4.ライターがカメラもできると、単価があがるってほんと?

さて、ライターが取材のみではなく写真も撮影するとなった場合、気になるのは一記事あたりの単価だろう。
えるもさんいわく、取材と執筆のみよりも、1万〜2万円ほど単価が良い場合が多いという。
カメラマンの手配が不要になることで、その分の予算をライターに還元できるのはもちろんのこと、ライターが「カメラディレクション」もできれば、取材の編集者の同行が不要となり、その分もライターに還元できるからだ。

「カメラディレクション」とは、撮影現場での指揮を執ることをいう。
具体的には余計なものが映らないようにテーブルを片付けて撮影環境を整えたり、構図の指示をしたりする。
例え自身で撮影をしない取材であっても、カメラマンと写真の構図等を相談できることで編集者の役割も担うことができるため、スキルとして評価されやすいようだ。

この話を受けて仲さんからは、「短期間で取材力・執筆力を伸ばして単価を大きく上げることは難しいけれど、写真撮影ができれば1ヶ月後には単価を上げられる可能性があるということですね」という夢のある言葉をもらった。

5.写真も撮れるライターには、どんな仕事がくる?

飲食店などの取材や、イベントレポートなど、実際に現場に出向くような取材が増えるという。
また、先ほど話した「カメラディレクション」ができると、ディレクターや編集の仕事につながる可能性もあるという。
現場取材の同行の場合、取材のフォローができる編集者が重宝される。
ライターをしながらカメラディレクションの経験を積んでいけば、仕事の幅を広げられる可能性がある。

6.初心者カメライターが気をつけるべきことは?

では、取材も写真撮影も行う「カメライター」として取材現場へと伺ったとき、注意することはあるのだろうか。えるもさんに聞いたところ、「時間配分」と「自然な表情の撮影の仕方」についてアドバイスをいただいた。

▼時間配分

例えば、取材時間として1時間半確保している場合、えるもさんならインタビューで1時間、写真撮影で30分は取るようにしているという。いろんな構図や表情で撮影するためにも、撮影時間はしっかり確保するのがポイントだそうだ。

▼自然な表情の撮影の仕方

カメラマンが別にいる場合、取材中に撮影が可能なため自然な表情が撮りやすい。
しかしライターが自身で撮影する場合は、インタビュー前後に「取材風」の撮影をしなければならない。そのため、取材相手は緊張した表情になってしまいがちだ。

まず、自分と取材相手以外の人がその場にいるときは、その人と取材相手が話している様子を撮影する。
自分と取材相手以外誰もいない場合は、「ここに私がいると思って表情を作ってください」などと声がけをしたり、表情や手元のポーズなどを細かく指定しているという。
スムーズに撮影を進めるためにも、どんな構図や表情の写真がほしいのか、取材前にきちんとイメージして撮影に臨むのが大事だと教えてくれた。

7.カメラが苦手でも取材ライターなら無理にでも頑張った方がいいですか?

ここまでの話を聞いて、「ライターが写真撮影もできるとメリットが大きい」ということは十分に理解できただろう。しかし、それでも「カメラはちょっと……」と苦手意識を持っている人もいるはず。
それに対して、「苦手だったら、無理に撮影をしなくても大丈夫です 」とえるもさんは話した。
ただ、その代わりに「カメラマンの知り合いを作っておくといい」という。
編集者がライターに撮影を依頼してくる理由の1つに、「カメラマンがなかなか見つからない」というものがある。
取材とあわせてカメラ撮影を依頼され、撮影はできないとお断りする場合でも、代わりにカメラマンを紹介をすることができれば、仕事が決まる可能性が高いという。

取材で知り合ったカメラマンとは、互いに仕事を増やすためにも、長い付き合いをしていけるとよさそうだ。


編集後記

ここまでの話を聞いて、ライターとして写真を撮ることについての解像度が上がった。

繰り返し語っていたのは、
「カメラマンになる必要はない、押さえるべきポイントを理解していることが大事」であるということだ。
今回教えていただいたポイントを忘れず、いつ写真をお願いされてもいいように、心構えをしておこうと思う。

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