ようやく政府が「経営者へのリスキリング」を方針として明記
政府は企業経営者のリスキリングを後押しするため、地域の産学官の枠組みで、令和11年までに約5000人の能力向上に取り組む目標を打ち出しました。
地域の企業と大学、行政などをつなぐ枠組み「リカレント教育プラットフォーム」を活用し、経営に関する最新の知識や戦略を実地に反映させて企業の成長を図ります。
経営者にリスキリングの重要性を理解してもらい、従業員の学び直しを促すとともに、収益力強化を通じた賃上げを後押しするという狙いもあります。
リスキリングに関しては経済産業省、文部科学省、厚生労働省からそれぞれ支援制度が提供されてきましたが、いずれもどちらかというと従業員向けのものでした。
有識者のみなさんは「経営者のリスキリングを」と訴えてきたにも関わらず、経営者はなぜか蚊帳の外に…しかし、今回はじめて政府の方針として「経営者のリスキリング」というワードが出てきました。
なぜ、経営者のリスキリングが必要なのでしょうか?
①適切な経営判断をするため
リスキリングは、急速なデジタル技術の発展と社会への浸透が背景にあります。
企業としては、この変化のスピードについていく、というよりは、むしろ先頭に立って牽引していき、新たな価値創造をすることが求められます。
その爆心地は間違いなく、AIやデジタルなのですが、経営者がそれらに関する十分な知識を持っておらず、流れをつかんでいないのであれば、これからの市場の変化を予想しながら、正しい経営判断や投資の意思決定をすることはできません。
わからないから丸投げでいいや、で済むわけはありません。
②経営者は従業員のお手本になる
パーソル総合研究所のリスキリングに関する調査でいうと、メンバーのリスキリング行動には、上司の探索行動が影響を与えているという結果があります。
つまり、新しいことを取り入れていこうという姿勢を見せているかです。
また、リクルートの調査によると、非IT職のデジタルリスキリングに関する実態調査で、上司のDXリーダーシップについては、学習効果に強い影響を与えるこういった結果が出ているそうです。
「俺はやらないけど、君たちはやりななさい」そんなリーダーの言う事を誰がきくのか…当たり前といえば当たり前の話です。
さて、経営者のリスキリングを推進するにしても、実効性が求められます。
ポイントは①どうやって知ってもらうか、②どうやって参加してもらうか、③どうやって成果につなげるかの3つのステップです。
①どうやって知ってもらうか
これまでDXやリスキリングに関しては、メディアでかなり報じられていますが、それだけでは十分ではありません。
たとえば、少なくない中小企業の経営者が「DX」や「リスキリング」というワードについて、知らない、説明できないと回答をしています。
「地域の産学官の連携」で、どこまで彼らの行動範囲内に情報を提供することができるのかがポイントです。
②どうやって参加してもらうか
パーソル総合研究所による「学び合う組織に関する定量調査」では、学習行動を阻害してしまう思い込み「ラーニング・バイアス」が提唱されました。
たとえば、その中で最も学習意欲に負の影響を与えていたのが、「新人バイアス」。学習は新人や若者がやるものだという思い込みです。
そして、この新人バイアスは男女ともに50代、60代で最も顕著でした。
年功序列が根強い日本型組織では、ポジションが上がるほど、年代が高い。したがって、新人バイアスが強く働いている傾向があると予想できます。
リスキリング施策として、経営者としては「若くていきのいいやつを送り込む」としてしまいがちですが、以下に本人に本気になってもらって、自ら取り組んでもらえるようにするか。
容易にはいかないように感じます。
③どうやって成果につなげるか
詳しい報道はありませんが、今回のプログラムは「経営に関する最新の知識や戦略」とあります。
AIやデジタルは含まれていないのかなという気もしますが、どうなるでしょうか。
「実地に反映させて企業の成長を図る」とあるので、成果につなげることはイメージされているようです。
経営者向けリスキリングでいうと、僕が手掛けている「ノンプロ越境学習」を紹介したいと思います。
学習コミュニティ「ノンプロ研」に参加していただき、学習をはじめさまざまな活動をともにしていただくというものです。
必ずしも経営者向けのプログラムではありませんが、経営者自らが越境学習に参加しているケースでは、いずれも目覚ましい成果を上げている。
本人のリスキリングはもちろん、従業員のリスキリングの展開、目に見えるDXの推進までたどり着いていることがほとんどです。
越境学習には、これまでの固定観念を揺さぶって解きほぐす、アンラーンの効果もあるので、ラーニング・バイアスの解除を期待できます。
経営者のリスキリング、決して簡単ではありませんが、僕自身もあの手この手を考えて進めていきたいと思います。
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