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意匠の類否判断を考える #2
様々な意匠と審決を見て、類否判断を考えるシリーズ。今回は、香水瓶、鼻毛カッター、靴です。
香水瓶の意匠
以下の香水瓶(本件意匠と引用意匠)は似ていると思いますか?
答えは似ていない(非類似)と審決されました。
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相違点
(ア)高さと径の比率
本願部分は、高さと径の比率が約1:1であるのに対し、引用部分は、約9:11で、本願部分の方が引用部分よりやや縦長である
(イ)下端の枠体の有無
本願部分は、下端に略リング状の枠体を段差状に取り付けているのに対し、引用部分は、枠体は取り付けていない
(ウ)天頂部
本願部分は、天頂部の径が全体径の約1/3であるのに対し、引用部分は、約1/2で、本願部分の方が引用部分より天頂部が小さいものである点、
また、引用部分は、分割線より上全体を暗調子としているのに対し、本願部分は、暗調子としていない
判断
相違点(ア)について、本願部分は引用部分に比べて、約1.2倍程度、縦長ではあるものの、その違いは顕著ではなく、需要者に異なる美感を起こさせるものではないから、両部分の類比判断に与える影響は小さい。
相違点(イ)について、本願部分の下端の略リング状の枠体は、やや幅広かつ表面が平滑なため、その上方の細溝部とのコントラストが明確であって、比較的目立つものといえ、また、当該枠体は、本体と蓋との分割線上の目に付きやすい部位であることから、需要者に異なる美感を起こさせるものといえる。したがって、相違点(イ)が両部分の類比判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)について、引用部分の天頂部は、本願意匠の天頂部よりやや大きいことに加え、分割線より上全体を暗調子としていることで、誘目性が高く、また、香水瓶を手に取ったり、蓋を開けたりする際に、天頂部は目に付きやすい部位であることから、需要者に異なる美感を起こさせるものといえる。したがって、相違点(ウ)が両部分の類比判断に与える影響は大きい。
鼻毛カッターの意匠
以下の鼻毛カッター(本件意匠と引用意匠)は似ていると思いますか?
答えは似ている(類似)と審決されました。
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共通点
・基本的構成態様、すなわち、全体は、縦(高さ)、横(径)の長さの比率が約6.5:1の略縦長円柱体であって、上端から約1/3の位置に設けた横溝より上側をキャップ、下側を本体とし、本体の正面上方に、本体の縦の長さの約1/3の長さの略縦長トラック形のスライドスイッチを設け、底面に、略横長矩形状のUSBプラグを設けた態様は、意匠全体の骨格を成すものであって、本体の握りやすさや操作の容易さ、携行所持のしやすさを重視する需要者に強い共通の印象を与えるものである
・スライドスイッチの具体的態様は、使用時に目につきやすく、使用時の電源の入り切りの操作の容易さにも大きく影響を与えるものであって、需要者が強い関心を持って観察する部位に係るものである
靴の意匠
以下の靴(本件意匠と引用意匠)は似ていると思いますか?
答えは似ていない(非類似)と審決されました。
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相違点
(ア)ラインの形状について、本願部分は、やや幅狭のラインであるのに対し、引用部分は、やや幅広のラインである
(イ)ラインの本数について、本願部分は11本であるのに対し、引用部分は7本である
(ウ)略ライン状パターン全体の輪郭形状について、本願部分は、つま先側が先細り(つま先側高さ:かかと側の高さ:全体の横の長さの比率は、約1:1.8:5)の略弓なり様であるのに対し、引用部分は、つま先側が僅かに先細り(つま先側の高さ:かかと側の高さ:全体の横の長さの比率は、約1.8:2:4.5)で下辺にうねりがある略平行四辺形様である
部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ア)から(ウ)が両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。したがって、両部分の形状等を全体として総合的に観察した場合、両部分の形状等は、共通点に比べて、相違点が両部分の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。