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商標の類否判断を考える #2

今回はロゴの商標の事例を3つ紹介します。


令和6年(ネ)第10027号 商標権侵害差止等請求控訴事件

ロゴ商標の類否判断は、基本的に外観・称呼・観念を比較して総合的に判断されますが、下記のようなロゴ商標において、外観に基づいて判断された事件を紹介します。令和6年(ネ)第10027号 商標権侵害差止等請求控訴事件では、まず離隔的観察による類否判断をした後、取引の実情も考慮して非類似と判断されました。

原告商標
被告標章

商標の類否判断が離隔的観察によるべきことを前提としたものであるが、さらに原告が指摘する被告標章の大きさと被告商品における使用態様を考慮しても、例えば、被告商品の販売用ウェブサイトの各写真 (甲3~5、乙4)をみると、前記の相違点に係る被告標章の特徴は、一定以上の大きさで写された写真であれば明らかで、小さく写された写真であっても、その色彩、縁(辺)が直線からなる四角形の形状等、相違点の大部分は十分看取可能である。

(離隔的観察)『外側及び内側の各四角形状部分において、原告商標の縁 (辺)は緩やかな曲線、角はややなだらかな曲線であり、全体的に曲線で構成されるのに対し、被告標章は角のみが丸められた直線状の縁(辺)で構成されることに加え、被告標章は、原告商標にはない四角形状部分の立体的な装飾(相違点③)、中央に位置する幅広の十字部分につながる細い支持棒 (相違点⑥)が存在し、さらに外側の四角形と内側の四角形との間の部分の幅が原告商標より広いこととあいまって、原告商標がシンプルな印象を与えるのに対し、重厚で複雑な印象を与えるといえる。さらに、被告標章の色彩は、外側の四角形と内側の四角形との間の部分と 十字部分が金属的な光沢の銀色、その間の十字以外の部分が赤色で(相違点 ④、⑦、⑧)、それぞれが白色、黒色である原告商標の色彩とは全体として明らかに異なる上、被告標章はそれぞれの色が目立つとともにコントラストをなしており、前記の形状の相違を強調する効果も有しているといえる。』

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/324/093324_hanrei.pdf


拒絶査定不服審判、不服2023-650033

以下の本願商標と引用商標が類似であるとして拒絶査定を受けて不服審判で非類似と審決された事例を紹介します。外観、称呼及び観念の何れにおいても非類似と判断され、商標登録がなされ、妥当な判断だと思われます。

本願商標
引用商標

本願商標と引用商標を比較すると、まず、全体の外観においては、図形部分の有無という顕著な差異を有するものであり、本願商標の文字部分と引用商標との比較においても、両者はその構成中に「THz(THZ)」の文字を含む点を共通にするとしても、語頭の「0.96」の数字の有無から、視覚上の差異は大きく、両商標は、外観において明らかに区別できるものである。
次に、称呼及び観念について検討すると、本願商標からは「レーテンキューロクテラヘルツ」の称呼及び「0.96テラヘルツの周波数や振動数」の観念を生じる一方、引用商標は「テイエイチゼット」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものであり、称呼及び観念においても明らかに区別できるものである。
したがって、両商標は、外観、称呼及び観念において明らかに区別できるものであり、これらを総合して全体的に考察すれば、互いに紛れるおそれのない非類似の商標とみるのが相当である。


拒絶査定不服審判、不服2024-4140

以下の本願商標と引用商標が類似であるとして拒絶査定を受けて不服審判で非類似と審決された事例を紹介します。外観、称呼及び観念の何れにおいても非類似と判断され、商標登録がなされ、妥当な判断だと思われます。

本願商標
引用商標

本願商標は、上段に、三角形の切り欠きが入った縦長の長方形、左から右に斜めに表された細長の台形、青色で表された欧文字の「V」様の図形、右から左に斜めに表された細長の台形、左下部分が欠けた三角形の各図形を横一列に大きく表し(以下「本願上段部分」という。)、下段に、「INTELLIGENCE WITH ARTIFICIAL(各単語の語頭の「I」、「W」、「A」は他の構成文字よりもやや大きく表されている。)」の文字(以下「本願下段部分」という。)を横書きしてなる構成よりなるものである。
そして、本願上段部分は、本願下段部分を構成する各単語の頭文字をモチーフとして表現したものと看取される可能性はあるものの、図案化の程度が顕著であり、色彩の統一性もなく、直ちに特定の文字として判読し難いことから、幾何図形を表したものとみるのが相当であり、これよりは特定の称呼及び観念が生じるとはいえない
そうすると、本願上段部分は幾何図形を表したものであって、特定の称呼及び観念が生じることはないというべきである。
したがって、本願の指定商品及び指定役務と引用商標2の指定商品の類否について判断するまでもなく、本願商標の上段から「IWA」の文字を理解し、特定の観念は生じないとしても「アイダブリュウエイ」又は「イワ」の称呼が生じることを前提に、本願商標と引用商標2とが類似するとして、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、妥当なものではない。

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