SB Flat Call (後編)
はじめに
前半の内容にて、プリフロップのSB Callの戦略について学びました。
後半は、フロップ以降の戦略について解説していきます。
少しトリッキーで難易度の高い戦略ではありますが、これらを学ぶことで、実戦における選択肢が広がることは間違いありません。
是非、最後までご覧ください。
また、2部作の後編となります。
※前編となる下記の記事もあわせてご覧ください。
■フロップ SB 33%bet戦略
◇ドンクベットの選択肢を理解する
まずは、上記の集合分析を見てみましょう。
意外にもフロップ全体で、いわゆる「ドンクベット」をする頻度が14.28%とあります。
少ない頻度ではありますが、逆に言うと、「ドンクベット」を戦略に組み込む選択肢が存在するということですね。サイズに関しては「33%bet」をすることが基本のようです。
これらの情報から、戦略を構築していく上で、フロップに関しては、Check or 33%betという2つの選択肢を起点とし、そこから戦略を分岐させていく方法が考えられます。
では、まず33%betを深掘りしていきます。
◇33%のドンクベットを分析
Aハイボードから順番に、それぞれのボードにおける、「33%bet」の頻度がどれくらい存在しているのかをみていきましょう。下図のように分類し、その結果を表にまとめました。
今回の気をつけるべき点は、バランス戦略を完璧にできたとして、EVとNetEQであるEQRを重視することです。
・6ハイ以下・ブロードウェイ2種・ペアボード・モノトーン
上図だけでは分かりにくいと思うので、それぞれの数値結果を表にまとめました。
見やすいように頻度の数値ごとに赤〜緑で色分けを行いました。
※低い数値が赤、高い数値が緑になっています。
この表を見ると、
33%bet頻度が比較的高いのは
「T〜8ハイボード」時ということがわかりますね。
さらに平均EVにも注目すると、Tハイ〜7ハイにかけてEVが0〜+になっています。
ただし、7ハイ以下のボードに関しては、EQはそれなりにあるものの、EQR低くEVが0からマイナスになるということが見受けられます。特に6ハイ以下は、高いEQに対してEVは-になっていますね。
EQRが低いことで、相手からのBetに耐えきれずFOLDせざる得ないためだと考えることができます。
このような、EQが高いのにもEVが低い状態の時はCheck/Fold体勢を取ることが基本的な戦い方です。
したがって、7ハイ以下のボードにおけるドンクベットは選択肢から外してしまいましょう。
つまり、以上の集合分析からは、
T〜8ハイボード時が好ましいということがわかりました。
では、次に個々の集合分析のボードを見ていきます。
▽集合分析
Aハイボードが33%betに好まれないのということは、私の他の記事などでも触れてきた内容です。
しかし、プリフロップをSBでCallした場合、Aハイボードであっても例外的なボードが存在します。
例えば、A98ボードが43%もの頻度で33%betを行っています。
この事象は興味深いですね。
少し注目して見ていきましょう。
どうやら、A98r>A9s8>...>AT9rのような順番で33%betを行う頻度があるようです。
これらを抽象的に捉えると、
「T〜7のカードが2種類落ちている場合に33%bet頻度が増加する」
ということが考えられます。
もう少し深ぼってみましょう。
Aハイボードでミドル、ローカード、Unペアボード、モノトーンをソートして集合分析を出力します。
頻度の大きさはボードごとに違うものの、全体的に33%betの頻度が存在していることが分かりました。
以上のことから、どうやら前述で述べた
「T〜7のカードが2種類落ちている場合、33%bet頻度が増加する」
は正しいようです。
加えると、「Notペア、Notモノトーン」であることも関係しているようです。
では、このソート条件を使って、Aハイ以外のボードでも検証してみましょう。
Kハイ
Kハイボードでは、Aハイとは打って変わって「T〜7,2種時」であっても33%のドンクベットをする頻度はあまりないようです。
おそらく、この理由は、Kハイボードはオリジナルレイザーに圧倒的に有利ということが起因するからと考えられます。
これらを可能な限り明らかにするために、KハイとQハイでのEQlinearを比較することでこのKハイボードでは33%bet頻度が少ない理由を見つけていきましょう。
K98rとQ98rで比較してみました。
どうやら次のような特徴があるようです。
このEQlinearの違いにより、33%bet頻度の違いが生じていると考えられます。
つまり、SBは、Qハイ時には幅広いレンジで少々UTGのEQを上回っているが、Kハイ時にはUTGのレンジがSBに比べて強固なレンジと言えるでしょう。
これらがKハイボードでは33%betをあまり打たない理由だと考えることができます。
Qハイ(T〜7,2種をソート)
Q98
次にKハイと比較したQハイボードを見ていきましょう。
Q98rボードでのSBアクション内容が上図になります。
ショーダウンバリューがあるような77s,55sがCheck頻度が比較的高くなり、それ以外は全レンジで33%betをしていくようです。注目すべきなのは、AKoなどが33%betに大きく含まれていることです。
これは、2オーバーのEQを殺してしまう可能性があるアクションのため考察の余地がありそうです。
先ほどSDVがあるからCheck頻度が大きく残すと述べた77sや55sには、本当にSDVがあるのかを考えてみましょう。
それぞれのEQRとEVに観点をおいて見ていきます。
▽EQRとEV
<2オーバー>
AKo→41.27EqR、EV Check +0.99, 33%bet +0.99
<ポケット>
JJs→74.46EqR、EV Check+2.82,33%bet +2.83
77s→30.47EqR、EV Check+0.76, 33%bet +0.78
55s→24.88EqR、EV Check+0.54, 33%bet +0.55
これらを見ると、Checkも33%betもEVがさほど変わらないことがわかりますね。
おそらく77や55でCheckをする理由は、Checkと33%betのバランスを守るためだと考えられます。
Jハイ(T〜7,2種をソート)
J98r
次にJハイです。
J98rのボードを見ていきましょう。
Qハイ時と同様にSDVのないハンドと2オーバーカード、Tophitを33%betレンジに組み込んでいます。
Checkレンジを「SDVなし+BDFD」とローポケットにしています。
Qハイと同じ考え方でプレイすれば良さそうですね。
ここまでの内容からピクチャーボードの場合、
「T〜7 2種ボード notペア、notモノトーン、Kハイを除く」という条件が揃っていれば、33%betが可能だということが分かりました。
そしてレンジ構成としては、下記のするのが良さそうです。
次にTハイ以下(T~7)で上記のことが当てはまるのか確認していきましょう。
Tハイ以下(T〜7,2種をソート)
T98r
T92tt
9ハイ
8ハイ
87L
874tt
85X
様々なボードで集合分析をまとめました。
これらの結果は非常にシンプルで、「T〜7,2種時であれば33%beすることができる」ということがわかりましたね。
これらを元に簡易戦略を構築することで、ある程度戦えそうです。
では、次に、ターン以降のストリートアクションを詳しくみていきましょう。
■フロップ SB 33%bet戦略
◇SB Flop33%bet後のターン戦略
ここまでの考察で、SBでプリフロップをCallした場合、ボードが「T〜7,2種時に33%betすることができる」ということがわかりました。
次に、フロップで33%betを行った後のストリートアクションを詳しくみていきましょう。
ストリートアクションを調べるにあたってボードを以下の3つに分類します。
こちらのドンクベットに対して相手がCALLを選択してきた時のターン以降の戦略を見ていきましょう。まずは、SBが高頻度で33%betできるボードの場合です。
①高頻度(60% Fq以上)ドンクベットボード
今回はQ98rというSBが、レンジ全体で33%betを約75%でできるボードをピックアップしてみました。
Q98rでは、SB側がレンジの76%ほどで、33%betを選択します。
33%betするハンドレンジは、レンジ全体です。(レンジCBに似た考え方ですね)
EQ分布を確認すると連続的にSB側がUTG側を上回っています。
また、上位レンジにおいてもSB側が大きく、EQでUTGを上回っていることが確認できます。
まさにレンジCBと同じような考え方ですね。
では、Q98rでSB33%betに対してUTGがCALLしたという状況を考察していきましょう。。
ターンの集合分析を確認していきます。
▽Q98rターン集合分析
上図がターンでの集合分析です。見て取れる情報としては
Check 61.30%、33%CB 22.44%、75%CB 4.08%、150%CB 12.19%となるようです。
以上を考慮するとCheck or 33%CB or 150%のプレイラインをとるのが王道のようです。
下記にターンカードとアクション頻度の共通点を挙げていきます。
▽共通点
33%CB→上ストレート完成カード、2ペアのコンボを減少させるカード
75%CB→下ストレートが完成するカード
150%CB→下ストレート完成カード、ラグ
Check→Top2ペアができるカード、ボードペアになってしまうカード、上SD完成カード、A
これらを参考に簡易戦略を構築してみてください。
②中頻度 (30〜59%Fq)ドンクベットボード
次にJT8rというSBが、レンジ全体で33%betを約38%でできるボードをピックアップして考察します。
JT8rでは、SB側がレンジ全体で38%ほどの頻度で33%betを選択するようです。
33%betするハンドレンジは、レンジ全体でも悪くはなさそうですが、SDVがあるがEqRが低い55s,44sをCheck/Callする体勢に回すのが良さそうです。
EQ分布を確認すると先ほどのQハイボードと比較して、SBとUTGの分布がお互いに近いです
また、全体的にはSBが上回っているものの、一部でUTGが上回っている部分も見受けられます。
上位レンジにおいてはQハイ同様にSB側が大きくUTGを上回っていることが確認できます。
頻度に関しては、これらが理由でしょう。
では、33%betを行い、UTGがCALLしたという状況でターンの集合分析を確認していきます。
▽JT8rターン集合分析
上図がターンでの集合分析です。見て取れる情報としては
Check 57.49%、33%CB12.06%、75%CB 9.10%、150%CB 21.35%となるようです。
以上を考慮するとCheck or 33%CB or 150%のプレイラインをとるのがメインのようです。
ここでターンカードとアクション頻度の共通点を挙げていきます。
・33%CB→下ストレート完成カード、2ペアのコンボを減少させるカード、相手レンジのコンボ数を減少させるカード
・150%CB→ラグ、ペアになるカード
Check→上SD完成カード、A
これらを参考に簡易戦略を構築してみてください。
③低頻度(30%Fq以下)ドンクベット
最後に、A7s9ttというボードを見ていきましょう。
これはSBが、レンジ全体で33%betを約20%でできるボードです。
A7s9では、レンジ全体で20%ほどSBが33%betを行えるレンジが存在しています。
33%betするハンドレンジは、レンジ全体で打ってそうですがやはり、SDVがあるTopペア、AXsのキッカーが弱いハンドレンジでCheck/Call体勢をとっています。
EQ分布を確認するとSBとUTGの分布がお互いに近く、一部でUTGが上回っているものの、全体的にSBが上回っていることが確認できます。
さらに、上位75%程のレンジでSBがUTGを上回っていることが確認できます。
AハイボードであるにもかかわらずTopレンジがSBに存在するというような特殊なパターンですね。
では、A7s9でSB33%betに対してUTGがCALLしたという状況のターンの集合分析を確認していきます。
▽A7s9ターン集合分析
上図がターンでの集合分析です。見て取れる情報としては
Check 53.77%、33%CB17.31%、75%CB 18.74%、150%CB 10.18%となるようです。
特定のベットサイズが大きいといったような特徴はなく、比較的均等ですね。
簡易戦略を用いるときは、自分の打ちやすいサイズを選択すると良さそうです。
ターンカードとアクション頻度の共通点を見てみましょう。
33%CB→Flush完成カード、相手レンジのコンボを減少させるカード
75%CB→ストレートが完成するカード(下スト>上スト)
150%CB→ラグ、ペアカード
Check→ボードペアになってしまうカード、上SD完成カード
これまでの結果をまとめました。
まとめ
①〜③のそれぞれのボードを分析したことで、下記のようなことが分かりました。
これらを参考に簡易戦略を構築するのがよさそうです。
以上でSB Flat Call戦略のご紹介でした。いかがでしたでしょうか?
今回の一見使えなさそうに見える戦略ですが、
SB vs UTG 2BPという状況と類似した状況が存在します。それは、3bet-potでの OOP Callです。ポジションがないが、3betにCallしたシチュエーションにおいても同様または類似したドンクベットが採用されることが示唆されました。
このSB Flat Callは単純な戦略の枠だけにとどまらず、レンジvsレンジでのお互いの近接度により戦略差が生じるという概念や感覚を身につけていただければ幸いです。
今回の記事は終了です。
今後も様々なスポットにおける戦略考察記事を作成しますので、是非フォローしていただければと思います。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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