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どこで売っていますか?

投稿者 有限会社フルーヴ 手塚貴子(新潟県地域プランナー)

こんにちは!手塚貴子です。
「商品が売れない」「インターネットで販売したい」などの相談を受けることが多くあります。農産物に限らず、ものもサービスも売る(=買ってもらう)のはなかなか厳しいですよね。
「売る」と言っても、100個売りたい場合と5000個売りたい場合では、売り方が異なります。また、価格が500円なのか1000円なのかによっても、商品を置いてもらうお店は違います。
ここでは、私が担当した「米が売れない」という米農家さんのご相談例をご紹介します。(守秘義務や個人情報保護の点から、内容は一部アレンジしています)
 
「どこで売っていますか?」
農作業の環境は厳しいけれど、おいしいと評判の地域の米生産者グループからご相談をいただきました。

写真はイメージです

JA以外でも販売したいと考えたそうですが、「売れない」とおっしゃいます。そこで、私がまず質問したのが「どこで売っていますか?」です。
直売所かな、道の駅なのかなと想像しました。どんなサイズで売っているんだろう、とも考えました。
答えは「どこにも売っていません」。
一瞬、時間が止まったような気がしました。
確かに、販売していないのだから売れないんですが、生産者さんたちが「売れない」と思ってしまう理由はなんとなくわかります。
〇×△直売所で、私たちの米を販売してもらおうかな → でも待てよ、既に他の人の米を販売しているからな → 新しく自分たちの米を取り扱ってもらうのは無理なんじゃないか → じゃあ他にどこで売ってもらおうか? → 近くには〇×△直売所しかないしなー
と考えているうちに、お米を売ることのハードルがドンドン上がってしまったのではないでしょうか。
生産者さんたちは「売り場がない」イコール「売れない」と考えているのだと想像しました。米に限らず加工品でも、「売れない」という言葉は「売る場所を見つけることができない」を意味している場合が多いように感じます。
 
そこで、生産者さんたちと話し合って、以下を実施することにしました。
 
【やること】
その1.売り場を探す 
 ・近くに道の駅、直売所はありませんでしたが、宿泊施設がありました。
 ・1か月後に、地元で観光客が多く訪れるイベントがあることに気がつきました。
決定!イベントにブース出店して販売する
 
その2.何グラム?何キロ入りで販売するのか決める
・1度にたくさん買った方が得だから30キロか、少なくとも10キロ入りがいいという意見が多くありましたが、はて、観光客が気軽に持って帰れるのだろうか? 
・5キロがいい
決定!観光客がたくさん来る道の駅などで、どれくらいの量で販売しているか調査する
 
その3.イベント準備
・一口サイズのおにぎりをつくり試食してもらって、美味しさを知ってもらう。
・ブースでは、収穫前の田んぼの写真を展示する。
決定!当日はイベント場所近くの生産者さんが家族で対応する
 
【イベント当日】
◎サイズは、持ち帰りやすい900gに決まり、15袋用意 
◎試食は、炊き立ての新米を、普通のおにぎりサイズで提供
結果!試食した人はみな美味しいと言い、すぐに完売!!
 
 
その2の市場調査では、生産者さん皆さんで1日かけて道の駅など5か所を回り、写真も見せてくれました。2合や3合サイズで売られているのを見て、「あんなに少し買ってどうするんだ?」と思ったそうです。
一般的な家では大量のお米を置くスペースがないですし、今は冷蔵庫でお米を保存する人もいます。1世帯あたりの家族人数が少ないと、1か月のお米の消費量も少量です。また、自家用車以外の旅行者が重たいお米を持ち運ぶことは難しく、お土産用として手頃なサイズ&金額が好まれます。

都内で定期的に開催されているマルシェ

ものを販売するには、商品の付加価値を整理したり、誰に売るのかなど、ある程度のマーケティングを行い、準備することが必要です。しかし、今回は収穫時期であり、新米を売りたかったので、まず「売れる」体験を通して、「売れなかった」のではなく「売っていなかった」ことに気づいていただきました。これを経て、「どこの」「誰に」「どんなふうに」販売するのか考える、次の段階へすすみます。

乾燥を防ぎ、そのまま冷蔵で保存ができるクラフト米袋(300g~5キロ)も人気です

農家さんが抱える問題は多岐にわたります。
私はまず、相談者さんのお話をよく聞いて、どこが問題なのか考え、それらを相談者さんと共有し、アドバイスや提案を行い、解決方法や対策を一緒に考えます。しかし、最終的な判断や実際に行動を起こすかどうかは、相談者に決断していただきます。
私以外にも、様々な得意分野を持つ地域プランナーがいます。皆様の地域振興局担当者にご相談の上、是非ご利用ください。




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