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ネガポジどっち

市原氏

先日の雪,降るぞ積もるぞと何度も予報を耳にしながらも「またまた〜〜 言ってもそんな,アレでしょ? ちょぴっと積もって首都圏大混乱,みたいなことでしょ?」という東北出身者的キモチ・北から目線があったことは否めません。

けっきょく,翌日まちかどに小さな雪だるまがぽこぽこ出現する程度には積もりました。

ぼちぼち関東住みも長くなり,ほぼ”ノーガード”で雪を迎える地域は,わずかでも積もったならば,あちこちで救急車のサイレンが鳴り止まなくなる,という事象にも,心情的に慣れてきたような。

…と言いながら,ホースから水をぶっかけて雪を溶かしにかかる風景にはいつも「ヒィッ! 正気か!」と反射的に目を見開いてしまう自分がいます。

その都度

(ここは関東…そして氷点下がニュースになる地域よ…)

と認知の矯正を試みてはいますが,あれだけは,未だに慣れません。

***

人間の脳の中には、「意固地にたのしむ」という傾向もひそんでいるのではなかろうか。

ポジティブな意固地
Shin Ichihara/Dr. Yandel


前回いただいたお手紙の,この部分を拝読したときに,それこそ首がもげんばかりの勢いで頷いておりました。

多くの人が視聴し,賛辞を送っている作品だったり,あるいは身近な人が「めっちゃ便利だしコスパ最高はよ買えし」などと勧めてくれた家電,みたいなレベルでも起こりえることですが,それらの評を受け,すんなり「よし見るぞ/買うぞ」とならないことが,ちょくちょくあります。

「たぶん,経験後,わたしの人生は(大なり小なり)影響うけるんだろうな」という予感も理解もそこそこある。それでも

「あ,だいじょうぶです」
(いま,べつに,いいんだよね,このままで…)

と言いたくなる気持ちが勝ってしまう。

わたしはこれを,自身生来のものぐさ気質のためと思っていました。しかし,現状維持にだってそこそこエネルギーはかかるわけですし,「のってしまう」ほうが楽だし結果として利益も多い場合も往々にしてあるはずなんだよなあ…それでも,どうにもその気にならないのはなんでだろ…と不思議に思っていました。

損得以前の、もう少し緩い、ポジティブな意固地。前と変わらぬありようを満喫する、という脳のクセ。

ポジティブな意固地
Shin Ichihara/Dr. Yandel

そうか,そうだったのか。ここに報酬系が働いているとすれば,なるほど”変わらないこと”を選択しがちな自分にも納得がいくような気がしてきました。

まあ,それで「ものぐさ気質」が否定されるわけではないのですけど。

***

「バイアス」という言葉。そこにまとわりつくネガティブな印象が,わりと気になっていました。

バイアス=悪いもの,みたいなイメージがあるけど,この言葉が示すものは“なんらかの傾向”とか“ある母集団の性質”を示すものにすぎないのでは…? もうちょっとドライに扱ってもいいんじゃあなかろうか…

そう思って 英和辞書(WISDOM)で bias をひいてみたのですけど

1)偏見,(悪い)先入観,偏った好み,ひいき

うわ。めっちゃネガティブだった。

そうか…じゃあしょうがない…となぜか軽くショックを受けながら,同項目の続きを見ましたら

2)才能,興味

どうしてそうなった。こう,「とがってる」的な? パラメータを1つのステータスに全振りした状態,みたいなこと,だろうか。

〜〜
「最初はすごく偏った嫌なヤツだと思ってたけど,まあ,付き合ってみたら,結構おもしれえんだよな,切れ味あってさ あれはあれですげえよ」
〜〜

…とか,そんなやりとりが2つめの語義の起源にあったりしたら面白いけども,でもたとえば"You have an artistic bias"とかほめられたとして,これ今のネイティブの人は素直に喜べるものなのかしら…

***

2022年,一通めのおてがみで,そんな妄想を膨らませていました。

今年もよろしくお願いします。

(2022.01.21 西野→市原)