開腹の兆し③
右卵巣の異変とともに隣町の救急病院へ紹介状をもって。
自身のホルモンバランスのために独占的稼働(一個しか残ってなかったから…)していた右卵巣。
孤軍奮闘、ひとり闘っていたんだな…
そしていつの間にか…その重圧に悲鳴を上げていたのか…
君ばかりに押し付けてごめん。
君の辛さを分かってあげられなくてごめん。
便秘だろうとか、盲腸かな?とか…
気づいてあげられなくて…ごめん…。
なんて感傷に浸っていたわけでもないが、病院まで約40分。
お弁当が傷んでしまうのではないか?という心配とか、色々と考えながら。
ビミョーに右下腹部に車の振動まで響かせつつ、駐車場に車を止めて病院入り口まで歩くこと5分。
だんだん、DANDANと痛みが増し重く感じる右下腹部。
『あー、こりゃ仕事いってもムリだったな。』
『…これ、帰りはまた運転してけるんだろか?』
自然と痛みで眉間にシワを寄せながら受付を済ませた。
ここは救急病院なので紹介状がなければ普段かかることもなく、
過去の急性胆石症、胆管炎と子宮筋腫と右卵巣一部摘出以来の診察だ。
またお世話になるとは…。
手術入院経験もあったので…
この病院=オオゴトになった
ような気もしたけど、かかりつけでの『5センチ大』という診察結果に期待するしかない。
過去の診察で(一般的には)5センチくらいまでなら腹腔鏡手術が可能と聞いたことがあったからだ。
腹腔鏡手術は胆嚢摘出の時に経験済み。
お腹を切るより遥かに楽なのは身をもって知っていた。
なんなら…ピルとか…投薬で小さく出来たりするのかな???
それならば手術をしなくても済むかもしれない。
でも…結婚前は病院なんてかかるようなこともなく、
健康に過ごせてきたのに
なんでここ15年くらいの間に病気ばかり…。
希望的になったり悲観したり…
まだ事の流れを家族にも知らせてない。
待ちながら一喜一憂をしながらも、幸いながら術後は毎度生還し、元気に退院している事を思い直す。
なんやかんやラッキーな人生なのだ。
きっと大丈夫。
5センチだもん、軽く済むに違いない。
大丈夫、大丈夫だよね先生!
だってここまで一人で来れたし!
ちょっと振動きついけど…大丈夫っ!!!
「…大きいところで7.2センチありますね、前回にカルテには癒着が多いとも記録にあるので大きさ的にもお腹を開けて取ります。」
「どうされますか?今日…今夜は空きもあるのですぐ手術しますか?」
「次の機会となると…ちょっとそれまで痛みなく過ごせる保証もないですし…」
「この時間なのでお食事は?されていないのならこのまま心電図と採血とやっちゃいましょう。」
「術前検査、CTと造影剤で…」
「外科オペいるから、今日がいいよ、癒着はがすから…」
「今夜だよ、もう今日、今から?できるからやっちゃいましょう準備できますよ。」
「ご家族連絡取れますか?今から来ていただけます?」
そんなやり取りが数分の間繰り広げられ。
この季節だからか?
研修の先生やら看護師さんやら6名が生討論をし
事務方の職員さんも方々に連絡を取り合うような会話で右往左往。
「ワクチン接種してますか?3回?ちょっと先にPCR検査しちゃいましょう」
奥から防護服のような装備をした別の先生や看護師さんが出てきてあっという間に取り囲まれ、長い綿棒を鼻奥に突っとす。
痛い。
…鼻に綿棒を突っ込まれながら見えた風景は
診察室奥から看護師さんやらお医者さんやらがまるで巣の出口を行き来するアリのように見えた。
『…そんなにたくさんいるの?お医者さん…』
こうして私の手術回避という希望的観測は
尽く打ち砕かれ、PCR検査の結果を待ち(陰性)
それから入院する運びとなった。