明日はまだ手つかず。⑦
2022年6月25日土曜日
手術は終り無事に戻ってきた。
また毎日は始まるんだけど、家族はどうしただろうか…
と一瞬は思ったものの私が居なくなったところで別に大した事はない、残る家族に家事の負担が増える程度。
幸いにも敷地内同居、隣家近隣は親戚もいるので助け船もある。
有難いことに、大変に恵まれた環境で嫁生活をさせて頂いて来させて貰い(日本語?)
それでいて家族は何度かの手術により『母親担当が不在』というものを経験せざるをえず、その都度鍛え上げられ、家事については相当なスキルをそれぞれが持っているので「私が居なければ家族が困難になる」というのは初めての手術入院時くらいだったかと思う。
家族にはとても申し訳なく思うし、
なんでまた手術なのかと自分に腹立たしく思うも
また一瞬(基本的に一瞬だけ)。
手術終わりの朝に目が覚めてから長々いろいろと逡巡、反芻したのち、現実に還るべきかどうか考えた。
顔だけ横を向いた時にテレビ棚にスマホが置いてあり、何かしらが届いてる事を知らせる通知ランプの点滅が見えたからだ。
家族、親戚かもしれない
はたまたパート先のどなたか?かもしれない
もしくはたまたま連絡してきた友人かもしれない。
スマホの先には、これまで辿ってきた現実があるような気がして…
そこにアクセスしたならば…
既読としてしまったら…
返さないといけないのだろうし、手に取り見始めたらずっと見ちゃうんだろうな。
まあでも確認するか…家族は心配してるだろうし。
と、手を伸ばしてみたけど、ちょっと届かない。
どうしようかな、看護婦さん呼ぼうか…
いやでもスマホ見るために呼び出すのも悪かろう。
っても、なんか重大な連絡来てたりしたらな…
ナースコールすべくか悩み頭の上を確認してみたが仰向けの状態ではナースコールボタンが見つけられなかった。
反対側の頭側にでも置いてあるのかな?と思ってはみたけどやはり見当たらず…
仕方無し、ここは諦めよう。
ちゃんと動いていい許可が出るまで『気付かなかった』ということで…連絡をくれた人には待って貰っとこう。
目を瞑りまだ眠れそうだな…と少しウトウトとし始めピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
スッカリ切り忘れていたスマホの毎日アラーム(5:30)が鳴り出してしまった。しかも結構けたたましく。
やばい
切ったお腹が!だとか、こわばってる筋肉がとか言ってる場合でもなく、痛いっ、痛いけどアラーム止めなきゃ!早くぅ止めろ!
動く首と片腕で反動をつけ体をよじりながら手を伸ばし切ったタイミングと合わせることでスマホ奪還に成功した。(手が届いたってだけ)
ピピピピピピ。
マナーモードにしててもアラームは鳴るんだな…学んだぜ…慌てた割にようやくアラームを止めて、麻酔明けの乾ききった喉を通ったガサガサの声で「すみませんでした」と謝った。
返事はない。
大部屋のはずなんだけどな、誰もいなかったか。
もう何度かも経験してるのに、麻酔覚醒の寝起きからガタガタと、大音量でアラームまで鳴らしてしまい、急な入院とはいえ慌て過ぎというか…もうちょい大人らしく落ち着こうよ自分…何やってんのさ。
病院内で携帯いじりばかりなのもどうかとは思いつつ、通知ランプの内容を確認する。
…ついでに某アイドルが最近始めたばかりのTwitterと見とくか。うんうん。
スマホ乖離生活もわずか半日にて終了。
家族のLINE部屋に「おはよう」スタンプを押し、金輪際、この大部屋病室で無暗に無駄な音を出さないようスマホ設定を入念に確認した。
まだ、目が覚めたというだけで
何も始まってはいない。
窓の外は明け方の光がどんどんと強まり、すっかり朝の始まりだった。