心因性発熱のはなし
こんにちは!医療ヘルスケア同好会です。
第9回目の医療情報記事をお届けします🎁✨
過去の記事も是非のぞいてみてください👀
※この記事は病気の治癒を保証するものではありません。
記事担当
当記事は、医療ヘルスケア同好会運営メンバーの Яita が担当させていただいております!
名前:Яita(りた)
所属:N高・ネットコース
学年:3年次
自分自身、精神疾患をいろいろと抱えていることもあり、精神の病気やお薬にちょっと詳しいです。
ということで、今回の記事ではメンタルヘルスの不調によって引き起こされる「心因性発熱」について取り上げたいと思います。
心因性発熱とは?
みなさんは熱を出したことがありますか?
誰もが一度くらいは発熱を経験したことがあるでしょう。そんな時には”解熱鎮痛剤”を内服することが多いのではないでしょうか?
今回お話しする「心因性発熱」に解熱鎮痛剤は効きません。検査をおこなっても異常がなく、解熱鎮痛剤などの発熱抑える薬を飲んでも効果がないことが特徴なのです。
では、どういった場合にそのような状態に陥るのか?
「心因性発熱」はその名の通り、精神的ストレスが強かったり、長い期間かかったりすることで生じる体の反応で、37℃以上の高体温となる状態のことを言います。
症状の出方には次の2つに分かれています。
急性型心因性発熱
急性型の場合、心理的ストレスが原因で急激な体温上昇が起こります。発熱の時間が短く、基本的に24時間以内に平熱に戻るのが特徴です。主に子どもや若い人に多くみられます。
急性型心因性発熱における心理的ストレスには、登校や試験、手術当日、嫌な人との面会や口論などが挙げられます。
慢性型心因性発熱
慢性型の場合、慢性的なストレスが続く状況下で、37〜38℃程度の微熱が数ヶ月以上続くのが特徴です。ストレスから解放されても平熱に戻らないケースが多く、さらに発熱していることを本人が気づかないケースもあります。慢性型心因性発熱は、主に成人に多くみられます。
慢性型心因性発熱における慢性的なストレスには、いじめや両親の不仲、仕事や介護の疲れなどによる心身の消耗が多いです。
この場合、発熱に加えて抑うつ状態や予期不安などを伴うケースもあります。
なぜ体温上昇が起こるのか?
心因性発熱の詳しいメカニズムはまだ分かっていませんが、交感神経(※)という神経が関わっているといわれています。
※ 内臓の機能などを、意識せずに自動的に調節する働きをもつ自律神経のうちのひとつです。もう一方は副交感神経と呼ばれ、交感神経と副交感神経は互いにバランスを取って内臓機能を調節しています。交感神経は体を活動的にさせ、副交感神経は体を休息させます。
では、その交感神経のどのようなはたらきで体温上昇が起こるのでしょうか?
心理ストレスは多くの場合、交感神経系を亢進させ、体温や心拍、 血圧などを上昇させます。
こうした反応が起こるのはなぜかわかりますか?
ヒント:交感神経系=「闘争と逃走の神経(Fight and Flight)」と呼ばれています。
分かりましたか? 野生動物が天敵に直面したときのことを考えてみてください。そんな時、体がリラックスしてたら……どうなるでしょう。先ほど、交感神経系は体を活動的にさせると説明しましたよね。具体的に何が起こるのかというと、体温を上昇させると同時に、血液循環を促進することによって筋肉などのパフォーマンスを上げるのです。そして、その危機的状況を切り抜けます。
【野生動物が天敵に直面したとき=ストレス状況】
として考えると、人間は強いストレスがかかると本能的に「闘争と逃走の神経」が反応して熱を出すということなんですね。
心因性発熱の治療
心因性発熱の疑いがある時、「心因性」だからと言って、真っ先に心療内科や精神科を受診すべきかというとそうではありません。発熱を伴う病気は数多く存在するため、まずは最寄りの内科を受診しましょう。そして、血液検査やCT検査、レントゲン検査などで発熱を生じる他の病気と心因性発熱を見分けていきます。また、そのうえで「解熱剤が無効であること」や「ストレス状況の存在とそれによる体温の上昇が認められること」を確認します。
その後、心因性発熱の症状改善のために以下のような治療をおこなっていきます。
生活指導
睡眠や食習慣などの基本的な生活習慣の改善のほか、発熱時の活動の仕方や休息の目安などを指導します。
薬物療法
不安やストレスを和らげたり、交感神経の働きを抑えたりするお薬を用いて症状の改善を図ります。その具体的なお薬には、抗うつ薬、抗不安薬、自律神経調整薬、漢方薬などがあります。
これは余談かつ僕の前知識ですが、注意したいのが抗不安薬です。抗不安薬といえば多くがベンゾジアゼピン系といわれるお薬になります。ベンゾジアゼピン系というのは「依存性」があり、「離脱症状」が起こりやすいものが多いです。
あくまで一時的に不安を落ち着けるために使うお薬なので長期的に使うことは避け、少量またはベンゾジアゼピン系のうち依存性の低いものを短期で使うのが望ましいです。これは医師の判断になると思いますが、このことを頭に入れ、医師と相談するように心掛けた方がいいと思います。処方してもらう場合には、必ず医師の指示を守り、同時にお薬以外で不安に対応する方法も身に着けていくべきです。
もっと言及したいところですが、「心因性発熱」から脱線してしまうのでこのあたりにしておきます。(笑)
自律訓練法
呼吸法などを用いながら自律神経のバランスを整えるトレーニングを行います。効果としては、心身の疲労回復やイライラ感が収まったり、肉体的・精神的な苦痛を和らいだり、といったことが挙げられます。
心理療法
カウンセリングや認知行動療法など、心理療法には様々なものがあります。心に溜まった精神的負担や日常生活におけるストレスを軽減またはそれらに対処できるように公認心理師や臨床心理士といった資格を持っている人が手助けをしてくれます。
まとめ
「心因性発熱」は多少偏りがあるものの、あらゆる年代に発症しうる病気です。僕自身もN高に来る前に心因性発熱と思われる症状があり、毎日37℃~38℃の熱がある状態で学校に通っていました。”思われる”というのは、僕はその頃まだ「心因性発熱」というものの存在を知りませんでした。その後、別の精神疾患で入院し、症状が収まってからこの病気の存在を知りました。
そして、いま僕の弟もこの病気を抱えています。コロナ禍に発症した弟は、熱があると学校に入ることができないため、1ヶ月以上学校に行けないこともあります。
だから、この病気のことをより多くの人に周知するためこの記事を書いています。
みなさんも心や体のSOSを見逃さず、健康に毎日を過ごしてくださいね!
参考文献
伊藤 有毅(監修). ”「心因性発熱」って「ストレス」が原因なの?医師が監修!” . Medical DOC . 2023/4/3 . URL , (2023/4/5)
中村 和弘. ストレス性体温上昇の神経機序 ―感染性発熱との比較から―. Jpn J Psychosom Med. 2020;60:203-209.(2023/4/5, URL)
岡 孝和. 心因性発熱に関する最近の研究の発展 ―特に日本人研究者の貢献について―. Jpn J Psychosom Med. 2021;61:407-415.(2023/4/5, URL)