♯6 院内の看護研究は個人ではなく、病棟単位で複数年にかけて継続して行う
続けて院内の看護研究に対する提言です。
このような発信を続けることで、院内の看護研究の支援体制が改善することを願ってやみません。
今回の提言
院内の看護研究は個人ではなく、病棟単位で複数年にかけて継続して行う
今回の提言は、実際に大学院で研究を行っている僕の経験から生まれたものです。おそらく、大学院で研究に従事したことがある人は共感をいただけるかと思います。
課題
院内の看護研究の研究期間は1年間と短い
研究期間が短いと必然とアンケートを用いた実態調査になりやすい
その結果、研究に対する印象が悪くなる
最初の課題で示した研究期間は、♯4の研究結果から参照したものです。
まず、大前提として研究期間が1年間では、できる研究も限られます。倫理申請で約3か月はかかるため、CQや研究計画を練る時間がないまま倫理申請書類を書き始めなけれななりません。その結果、研究結果が出た後で、どのように分析すべきか困るケースが多いです。これは、実際にとある病院の看護研究支援時にも多く見られる状況です。
また、期限内に研究を終わらせるために患者を対象とした研究ではなく、看護師を対象としたアンケート調査等の研究になる傾向にあります。これらが密接に関連することで、特に初めて研究をする人の場合、研究に対する印象が悪くなる。この負の循環を打開する必要があります。
課題の深掘り
ここでもう少し課題の深掘りを行いたいと思います。
この課題の根幹には、教育システム上の課題があるでしょう。つまり、院内の教育システムとして1年間で研究を行わなければいけないカリキュラムとなっているということです。僕が、臨床にいたときはまさにそうでした。
ただ、一部の病院では、複数年かけて研究が行えるようにカリキュラムを見直しているようです。♯4の研究結果は11年前のものですから、今再度調査を行うと違った結果となっているかもしれませんね。
ただ、今も1年間で研究を行うようにしている病院もあるでしょう。そういった病院でも適用できる解決策が今回の提言です。
解決策
では、どうすればいいのか。ここで参考になるのが大学で行っている研究の方法です。そもそも、修士課程や博士課程では2-3年かけて1つの研究を行います。また、大抵の大学では、研究プロジェクトを立ち上げ複数人で行います。
例として、♯2であげたCQ「人工呼吸器装着下の患者に対する側臥位や完全側臥位、腹臥位等の体位交換は、患者の健康アウトカム(死亡、挿管期間、肺炎の予防)を改善するか?」で考えてみましょう。このCQを解決するためには可能な限り症例数を集めたいです。また、患者の健康アウトカムを調査するためには退院後の経過も負う必要がある。そのため、複数年にわたる調査が必須となります。さらに、調査項目が複数ある(死亡、挿管期間、肺炎の予防)ため、複数のメンバーが、それぞれの気になる健康アウトカムを調査する形です。
この研究手法の利点は、下記です。
大規模な研究が行える:研究期間が長くなると必然に症例数が増えます。
じっくり腰を据えた研究ができるため、
1度の倫理申請で複数人が研究に参画できる
そのため、この研究手法を院内の看護研究でも導入できれば、先述した課題が解決できるのではないかと思います。
提案
では、改めて提案です。
院内の看護研究は個人ではなく、病棟単位で複数年にかけて継続して行う
病棟全体での当該病棟の課題を話し合い、それを解決するための研究プロジェクトを立ち上げる。プロジェクトリーダーは、その課題を探求したいと思っている看護師や管理者。
ラダー等で研究をしなければいけない学年の看護師は、その研究プロジェクトに参加し、その研究の進捗に応じた介入(倫理申請の記載、データ収集、データ分析など)を行う。
ぜひ、実現してほしいです。