♯5 院内の看護研究に関する指導は、若手研究者に委託する
♯4で紹介した論文の研究結果と実体験をもとに、次からは院内の看護研究体制に対する提言を行っていきます。
今回の提言
院内の看護研究に関する指導は、若手研究者に委託する
もう少し詳細に言うと、院内の看護研究に関する指導は、当該病棟の管理者の観察下のもと、最初から最後まで若手研究者に委託するです。
次にこの提言に至った背景を説明しますね。
背景
♯4の論文の結果にもありましたが、院内で行っている研究支援として研修会を開くが68.5%、看護師長・主任・先輩看護師が指導しているが66.2%、委員会を設け運営しているが59.5%でした。
ただ、院内の看護研究に関する先行研究でも言われていますが、院内において研究に精通している人材は皆無状態です。大多数の大学病院においても同じ状態といえるでしょう。
勿論、専門看護師(CNS)や診療看護師(NP)などは大学院を卒業する過程で研究に従事しています。が、資格取得のための実習や講義等が中心となるため、同じ修士課程でも研究職を志す方と比べると研究に割く時間は極めて少ないのが現状です。また、資格取得後はその職務に就くため臨床をしながら研究を継続的に行っているCNSやNPは極めて少数派でしょう。
その状況下、つまり研究に精通していない看護師長や先輩看護師が研究の指導をしているという状況が現在の院内の看護研究です。
僕自身、とある病院の看護研究支援をしているときに下記のような相談をうけました。
せん妄に関する研究をしたいが、先輩に「やり尽くされてるからやる意味がない」と言われた と。
詳しく聞くと、先行研究を見ることなく、「絶対同じようなテーマをされている」と言われたそうです。具体的な研究テーマを聞いた後、先行研究を探しましたが、日本においては同様のテーマはありませんでした。
そうやって、ろくに文献検討をしないまま形だけの指導をして、研究の種を踏みつぶさないでほしいなと思います。
解決策
実は、♯4で紹介した院内で行っている研究支援の回答には続きがあります。それは、外部講師から直接研究指導を受けるが39.2%、外部講師から講義や研究成果の講評を受けるが38.4%の回答があったことです。
餅は餅屋に。という言葉がある通り研究者に委託するというのが現状の解決策だと思います。ただ、ここでも気になる点が1つ。
指導を委託する相手が教授が多いという点です。これ自体は悪くはないのですが、研究を相談したい院内の看護師からすると、教授に対して看護研究の相談をするというのは心理的な障壁が高いのではないでしょうか。また、多くの教授は研究プロジェクトや講義などの多忙のため、研究の指導に時間を割くことが困難だと思います。
提案
そこで、提案したいのが表題の院内の看護研究に関する指導は、若手研究者に委託するです。
ここでいう若手研究者は、博士号取得者とします。助教授などが該当するでしょうか。むしろ、教授と比べると比較的時間の融通が利き、年齢も若いため適任だと思います。なので、付属の大学や近隣の大学に所属している助教授に院内の研究支援を委託することをお勧めします。
ここで、注意点としては、完全に委託をするという点です。中途半端に看護師長や先輩看護師が指導に関与すると指導が二転三転して困るのは当事者です。勿論、指導内容や進捗状況を委託者に確認することは重要ですが、基本的に指導に関しては委託者に任せることが重要だと思います。
以上が提言でした。
研究支援を通じて、臨床で働く看護師と看護研究者が交流する機会となり、その結果共同研究という形ができれば理想的だと思います。