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デジタル時代はチェンジニアになるだけだと言った社員
ソニー子会社時代、将来、電気製品がデジタル化されれば、私たちサービスマンはチェンジニア(基盤を交換する人)になるだけだ、と話していた。
私が在籍したソニーの子会社は、そもそもソニーサービスという会社を母体にして創業していた。
その企業で家庭用のソニー製品を修理していた人たちが中心だった。
そんな人たちが、業務用機器の修理もおこなっていたようだ。
あるいは、簡単な業務用のAVシステムの構築作業などをしていた。
ソニー本体では、放送局向けにB&P(Business & Professional部門)があったが、その他の一般企業などに向けて業務用製品を拡販していこうという方針があった。
そこに業務用機器の修理やメンテナンス、あるいはシステムエンジニアリング事業をおこなうため、私が在籍していた会社は1990年創業していた。
そんな電気機器を修理する人たちだったが、少しすれているところがあった。
理由は、修理の仕事には売上がなかったからだ。
常に、ソニー事業部のお抱え修理屋だということで、嫌なことをやらされているような感覚をもっていた、と私は感じた。
売上はないが修理をするために、ソニー事業部から業務委託料をもらっていた。
自分で稼がないのだから自立していない。
これがよくなかった。
事業計画をつくるといったところで、修理台数など元からわからない。
そもそも修理目標があるメーカーの存在はおかしなものだ。
一般的な企業における売上と利益がない。
このため下請け根性が染みついてしまう。
俺たちは、修理屋だ、と。
私がいた会社は、業務用機器の修理やメンテナンス、あるいはシステム構築ができたので、ソニー事業部から業務委託料をもらわない体制でスタートした。
自分たちで稼ぐ。
これがよかった。
自分たちで事業計画を作る。
当然、各部門に売上と利益責任がついてくる。
お世話になった社長は、徹底的に社員を鍛えて、修理屋根性から脱皮させた。
家庭用製品と違い企業が導入する業務用製品は、企業内で利用したり、収益を上げるために活用する。
そこでトラブルがあれば、売上や利益に直結する。
多くの企業では、企業が製品を利用する場合、トラブル時の対応と定期的なメンテナンスのために長期契約を締結することが多い。
私がいたソニーの子会社もこのようなメンテナンスができる体制を構築していった。
会社スタート間もない時期に、IBMとメンテナンス契約を締結できた。
業務が拡大し、体制ができれば、さらに多くの大手企業とメンテナンス契約をおこなっていくことができた。
時代はアナログからデジタルへ移行していくときだった。
私が在籍していた会社では、放送局用のデジタルVTR製品(当時、1台約5000万円)のアップデーションなどをおこなっていた。
そのアップデーションを担当していた社員が、将来、私たちはチェンジニアになるだけだ、と言った。
放送局向けのVTRには、すでに自動診断機能が搭載されており、製品が自分でここの調子が悪いのでチェックしてね、と指示してくる。
デジタルなのでプログラムを修正してROMに書き込んで製品に搭載すれば調整完了だ。
私もみていたが、アナログの修理とは、まったく別ものだった。
私も自分で使用するパソコンのディスクをHDDからSSDへ換装するが、素人でも簡単にできる。
私もチェンジニアになった。
現場の人間が話していた時代がきたのだ。
現場の人間は、未来をみている。
その見方が的確で、とてもはやい。
私がみてきた30年間だけでもあっと驚く展開だった。
Windows95にはじまり、あっというまにインターネット環境が現れて、さらに今日のAI利用へとつながてくるのだろう。
私のような横着者は、デジタル化の恩恵をもろに受けている。
確定申告で税務署へいくなど嫌で仕方ないし、めんどくさい。
一度もいったことがない。
常に、利用している会計ソフトから申告をしている。
しかも専門的な税法の知識もそれほど必要なく確定申告ができる。
本当にありがたい。
この話をした社員は、その後、転職をして他社で海外のシステム工事などをおこなった。
在籍当時は、スリランカなどへ行ってJICA(国際協力機構)がおこなっていた発展途上国への教育用システムの導入工事を担当していた。
私は、総務として少しばかり支えただけだったが、帰国後、その社員から聞く話はとても新鮮でおもしろかった。
もう定年を迎えて悠々自適な生活だが、あの時代を生き抜いた者として、私はいろいろなことを学ばせてもらった。
アナログからデジタルへの転換期、そしてWindows、さらにインタネット時代が続いた。
目まぐるしく変化する時代だったが、未来があった。
なにもなかったが、みな必死に働き、なにかをつくりあげていく楽しさがあった。
事業計画を自らつくり、売上と利益責任をもつことの大切さを学ばせてもらった。
予算実績管理は、ほんとうに厳しかった。
私の人生の骨格をつくることができた時代だ。
感謝しかない。
中小企業が稼ぐには、予算実績管理を徹底しなければならないのだが、これができない。
手取りを急ぐため、本格的な経営が身につかない、社員が育たない、売上も利益も上がらない、と三重苦になっていた。
なにごとも徹底しなければ成し遂げることはできない。
企業を成長させるのは、学歴や優秀な人間の存在ではない。
毎日、今いる社員に売上と利益責任をもたせて予算実績管理を徹底させるからだ。
ソニーというところは、自由なのだが、予算実績管理という責任の厳しさがあった。
他の企業でみたことがない厳しさだった。
社員が育ち、当然、企業も拡大成長していった。
そのような経営スタイルのコアをつくったの当時の社長だった。
スレタ修理屋根性を払拭した。
見事だった。