Full Metal Jacket

数年ぶりに見直しました。

映画のテーマはDuality。
ブートキャンプを経て、ベトナムの戦地で正気と狂気の間から狂気に染まっていく。
レナードしかり、ラフターマン然り。

映像的には顔芸の映画。
冒頭、狂気を表す殺人者の顔になる訓練を施される。
まずブートキャンプで早くも顔が変わったのがレナード。
そして戦地では特にラフターマン。
この二人の豹変ぶりがこの映画の真骨頂だろう。
もちろんハートマン軍曹の顔の表情も、大変印象的。

印象に残った点を三つ。

第一に、ブートキャンプでのレナード。落伍気味だったレナードがようやく見出した銃の才能を向けた先が切ない。

第二に、教官。自分が若い頃この映画を見た時はひどいと思った。今軍隊でなければ、1分でパワハラ認定だろう。
 しかし、今これを見ると少し印象が異なる。これはアマゾンのレビューにもあるが、優しさとまではいかないものの、落伍者に対してしっかりフォローしている。自分があの立場だったら、言葉遣いは別として、どこまで異なるアプローチができるのだろうか。

第三に、最後。どうもレナードが再来しているように見えてならない。日本人には欧米人の顔の識別が難しいので自信がもてないが。

スタンリー・キューブリックの映画はいずれも好きだが、この映画はその中でもシャイニングと並んで高評価である。

「時計じかけのオレンジ」では、人間の暴力性を、明示的で物理的なものと、社会や権力のかさをきた非明示的で精神的で集団的な暴力性を対比し、人間の本質についての問いかけをした映画だと思う。

これに対して本作では人間に内在する狂気をうまく描いたと思う。
そして最後にジョーカーが狂気にのみ込まれずにDualityを維持したことに、少し人間に対して救いを見たのかもしれない。とはいえ、正気での殺人の方が、実はさらに恐ろしいのかもしれないが。

10年ほどしたらまた見てみよう。

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