夜行列車
寝台に横になると、天井がとても近く感じられた。北海道行きの夜行列車に、私は乗っていた。
消灯時間を過ぎた列車は、暗闇の中を走る。僅かな明かりが作る歪な幾何学模様は壁の上を滑っていく。何とも静かな夜だった。
列車は岩手のあたりを通過したようだ。脳裏に浮かぶ日本地図がそれを知らせてくれた。まだ先は長い。
唐突に、マナーモードに設定していたはずの携帯から、チープな着メロが鳴る。消さなくてはならないのに、携帯が見つからない。
消さなくちゃと焦れば焦るほど、音は大きくなる。
それは目覚ましの音だった。
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