練生
画像を使っていただいたnoteたち
寝ることが好きだ。 学生時代に趣味に関する英文を書けと言われて、睡眠について書いた程度には好きだ。 (よくわからないと言われたことだけは強烈に覚えている。) 変な夢をみた時の記録をノートにつけているけれど、枕元に置くならスマホのほうが手っ取り早い。 そんな訳で、noteを始めることにした。 文章に起こしやすいように多少脚色しているのは、ご容赦ください。
冷蔵庫にブドウが3粒入っていた。ブドウには白くてふわふわとしたポメラニアンが1匹ずつくっついていた。 ブドウはポメラニアンの動きにあわせてころりと転がった。私はブドウが食べたかったから、ポメラニアンからぶどうを奪い取ることにした。 4本の短い足でひしとしがみつくポメラニアン。特に風情もなく引き剥がして、ブドウを食べた。甘くて美味しい。 ポメラニアンは手のひらの上をくるくる、くるくると回っていた。抗議のつもりだったのかもしれない。
大好きなテーマパークに遊びに来た。入園チケットを買うための窓口に並んで、そわそわとしていた。 作務衣を身に着けた数人のスタッフが、何やら大きな荷物を運んでいるのが目に入る。それをぼんやりと見ているうちに自分の番になったようだ。 おとな用の入園チケットが一枚、トレーの上に置かれる。 期間限定のイベントとして、テーマパークのどこかに、ネコの髭を隠したらしい。それを見つけるとなにかいいものが貰えると説明を受けた。 ネコの髭は小さな長方形のケースに入れられている。な
寝台に横になると、天井がとても近く感じられた。北海道行きの夜行列車に、私は乗っていた。 消灯時間を過ぎた列車は、暗闇の中を走る。僅かな明かりが作る歪な幾何学模様は壁の上を滑っていく。何とも静かな夜だった。 列車は岩手のあたりを通過したようだ。脳裏に浮かぶ日本地図がそれを知らせてくれた。まだ先は長い。 唐突に、マナーモードに設定していたはずの携帯から、チープな着メロが鳴る。消さなくてはならないのに、携帯が見つからない。 消さなくちゃと焦れば焦るほど、音は大きく
私と彼女はファミレスに来ていた。四人がけの席の同じ側に並んで座って、散々悩んでから定食とサラダを注文した。 彼女はレシートの裏側に絵を描いていた。話をすることもなく、ずっとそうしていた。 注文はいつまでたっても来なかった。来たような気がしないでもないけれど、やっぱり来ていなかったと思う。 会計は自動精算機で行うようだった。何もない野原を歩いていくと、ぽつんと自動精算機が佇んでいる。 伝票を読み取らせて、次にポイントカードを差し込もうとしたところで、財布の定位
三月のとある高校。生徒会のメンバーで集まって、次年度の準備をしていた。天気のいい日だった。 次の学年でも使える机と椅子を残して、他を廃棄するという作業だった。寄せ書きのされた出席簿、手作りの消しゴム判子。机でも椅子でもないものを次々に棄てていく。次にくる生徒には関係のないものだから。 粗方片付けが終わって、整頓のために机を持ち上げた。中から何かが滑り落ちて、床にぶつかりチャリンと音を立てる。それは古びた鍵だった。 「それって」 「白いプールの鍵じゃないですか」
ふと目が覚めると、頭上の壁に蜘蛛がくっついていた。胴体は黒くて丸く、足は細長い、落書きのような蜘蛛だった。 視界の端で二匹の蜘蛛が絡み合い、喧嘩を始める。ぐちゃぐちゃと糸くずのように丸まって、突然もこもこと膨らんで。真っ黒なトイプードルになった。 その小型犬は可愛らしい顔をしていて、傍目には普通のトイプードルだ。でも足は8本ある。 舌を出していたかと思えば、後ろ足で首の後ろを掻いてみせたりする。丸まって眠る姿は犬にしか見えない。 店員に相談して、犬を洗ってや
目が覚めて、いつもどおりに時計を確認する。外の光がカーテンの間から差し込んでいた。 『10:38』 完全に寝坊した。8時半から予定が入っていたのに。何故かスマホには何も連絡がない。 どうしよう? 布団の中で考える。 目が覚めた。寝坊したのは夢だったようだ。少しホッとしながら、改めて時計を確認する。 『8:12』 やっぱり寝坊していた。 昨晩は酷く頭が痛かったことだし、体調不良ということにしようか。緑色のアイコンを指先で小突いた。 「体調が優れないの
私は更衣室で上履きを手に立ち往生していた。自分のロッカーがわからなくなってしまったからだ。 「かわいいって使えなくなったんだって」 隣にいた友人がそんなことを言った。『かわいい』という言葉が突然廃止されたのだと。 「え、じゃあなんて言えばいいの」 「『うさぎのたべのこし』だよ」 なるほど。確かに可愛い気がする。 私はようやく自分のロッカーを見つけて、上履きをしまうことができた。4人で一つを使うタイプの、少し大きなロッカーだった。 そのロッカーの中には古
友人が手料理を振る舞ってくれるというので、楽しみにしていた。友人の料理が上手なのは有名だったし、私も何度かごちそうになったことがあった。 紙のお皿とコップを持って、会場に向かう。その途中で別の友人に出くわした。友人はストローにつける飾りを手渡してきた。 それをつけて飲み物を飲むと、泳いでいるみたいでかわいい。そんなことを言っていたと思う。 会場は盛況だった。運良く空いていた席に座ると、一人用の焼肉セットが目の前に置かれた。パチパチと火花が弾けて、周りでは焼肉を楽
「なんてこった、こんなに降るなんて」 青年はそうつぶやいて、上着を頭から被った。晴、ときどきシャボン玉。それがこの日の天気予報だ。 視界を埋め尽くすほどのシャボン玉が空から降り注いで、何かに当たると弾けて消える。地面は既にシャボン液でびしょ濡れになっていた。 マンションの立ち並ぶ、緩やかな上り坂を青年は走った。シャボン玉の勢いはとどまることを知らず、ますます激しくなっていく。 坂をのぼり切ったあたりで、白い塊が路地に置かれているのが目に入った。青年が思わず足を
ラグジュアリーなホテルの一室に、緑色の髪をした少女がいた。白いバスローブ姿で、背中の中ほどまである長い髪をブラシで梳かしている。 部屋の中には花束がたくさん置かれていた。『センチメンタル』というタイトルのその作品は、アニメ化することに決まったらしい。 「300年かかったんですよ」 少女が鏡に話しかける。なんでも、髪の毛を緑にするのに300年もかかったらしい。だから今は319歳だ、と。 両手で髪をすくい上げると、天使の輪のようにキューティクルがつやつやと光を反射
どちらのバスに乗るべきか、悩んでいた。 片方はA駅行き、もう一方はB駅経由C駅行き。 前者は家まで少し遠いけど乗車時間が短くて、後者は家の近くまで行くけど遠回りをする。まあ、実際には存在しない路線だった。 A駅行きのバス停には長蛇の列ができていた。C駅行きのバス停は見当たらない。頭の中にめちゃくちゃな路線図を展開して考えていた。 どちらを選んだのかはよく覚えていない。どこで夢が終わったのかも、わからない。
左眉に貼るはずの絆創膏を貼りそこねてしまった。なぜかはよくわからないけれど、貼っておかなければならなかったのに。 廊下を歩いていると、天気の良い中庭を隔てた向こう側で、誰かがあっと声を上げた。それから大急ぎでこっちに向かってきたようだった。 逃げないと。少し左にカーブした、石造りの廊下を全力で走りはじめる。 絆創膏を貼っていなかったことに対して、怒っているようだ。深い理由はしらないが。消毒液を片手に追いかけてくるから、逃げるだけだ。 二人でループしている廊下
そこはアクアリウムのようだった。壁は黒くて、水槽がたくさん置かれていたから、そう思った。 背の低い水槽の上に、水草が並べられている。それらはすこしずつ束にされていて、小さな小さな値札がくくりつけられていた。 私にはA4の用紙が数枚渡されて、「よろしく」なんて声をかけられた。水草と値段が合っているか、点検してこいということらしい。 さっそくとりかかる。 もじゃもじゃの水草、500の値札、まるっこい水草、300の値札、半熟卵、バツ印のシール。 必死に見ていた
ボードゲームをして遊んでいた流れでタイ旅行に行くことになった。タイに行くにはひとりひとつずつ、パラシュートをつけなければならなかった。 ようやくタイにたどり着いた。まばゆい金色と、一面のどぎついピンクに迎え入れられる。ほぼマゼンタのようなそのピンクは印象的で、空気がそんな色をしている気さえした。 まずは公衆浴場に行った。ミストサウナが有名だと聞いたからだ。洗い場はめちゃくちゃ混雑していてうんざりした。ミストサウナにはありつけなかった。 壁のような坂をやたらに歩か