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とあるコンビニでの話。

数年前、残業で遅くなった夜のこと。
その日は一日中忙しくて、ようやく職場を出たのは午後11時を回った頃だった。
疲れた体を引きずりながら車に乗り込み、「喉が渇いたな」と思い立って、途中のコンビニに立ち寄ることにした。

店内に入ると、薄暗い外とは対照的に、明るい蛍光灯の光と冷房のひんやりした空気が迎えてくれる。喉を潤すにはこれだろうと、私は迷わずよく冷えた三ツ矢サイダーを手に取り、レジへと向かった。

レジに立っていたのは、まだ若いアルバイトのお姉さん。おそらく大学生だろうか。私が商品を差し出すと、彼女は微笑みもせず、淡々とこう言った。

「温め、どうされますか?」

「は?」…一瞬、時間が止まったような気がした。
三ツ矢サイダーを温める…? えっ、そんなのアリ…な…の?

頭が混乱して、つい口から出た言葉は、
「あっ…普通はどれくらい温めるものですか?」

お姉さんは特に驚いた様子もなく、無表情のまま「……あ、そのままでよろしいですね」と一言だけ。そしてそのままバーコードを読み取り、レジを済ませた。

「ほっとサイダーなんてものが流行ってるのか?」
帰り道、炭酸飲料を温めたらどうなるんだろう?…と想像しつつ、少し不安と興味が混じった気持ちで帰宅した。


翌日もまた残業。疲れ切った体を引きずって、帰り道に再び同じコンビニへ立ち寄った。昨日と同じように三ツ矢サイダーを手に取り、レジへ向かう。

今度のレジ係は違うお姉さんだった。
昨日のお姉さんとは雰囲気が異なる感じ。私は特に気にせずサイダーを差し出すと、彼女はやはり真顔でこう言った。

「年齢確認をお願いします!」

「は?」…いやいや、これは…サイダーだよ? これってもしかしてお酒…?

驚きつつも、レジ画面に目をやると、年齢確認ボタンすら表示されていない。
彼女が冗談を言っている様子もなく、むしろきちんと仕事をしている顔つきだ。

「いつから三ツ矢サイダーは“大人の飲み物”になったんだ…?」

結局、その場は笑いもせず、特に突っ込むこともなく商品を購入。帰り道、「もしかしてこのコンビニ、私を試しているのでは?」とさえ思った。


この話を同僚にしたところ…爆笑。
「炭酸飲料を温めるなんて聞いたことない」「年齢確認なんて酔いそうな勢いのサイダーなの?」と、好き勝手に突っ込んでくる。もしかして作り話?なんてことも言われた。

けれど、あの場の空気感を思い出すと、私はどうも笑えないのだ。
二人のアルバイトさんは、どちらも冷静で、一切動じる様子がなかったし…あまりに自然な対応だったので、私自身も「本当にそういう文化があるのかも」と信じてしまいそうになったくらいだ。

しばらく、そのコンビニには足を運ぶのをやめた。ちょっと怖くて行けなかった。次、三ツ矢サイダーを買うときには、一体どんな試練を用意してくるのだろうか……。


以上、「とあるコンビニでの話」でした。たかがサイダー、されどサイダー。
まぁ、どうでもいい話なんですが…
こうして振り返ると、時々、珍事件と遭遇することがあります。

なんか引き寄せているかも…。

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