ユニット就労で農業就労促進を目指す 泉州アグリ 加藤秀樹さんインタビュー(後編)
NPO法人福祉のまちづくり実践機構ではホームレスや障がい者、ひとり親家庭など、職につくことが難しい人たちを就労につなげるしくみづくりとして、「行政の福祉化」の発展につながる調査研究に取り組んでいます。
このnoteでは、「行政の福祉化」に関わるさまざまな情報をお届けしていきます。
人手不足や耕作放棄地の増加が問題となっている農業分野で、障がい者など社会的困難を抱えている人が働き手となる農福連携が注目されています。
大阪の泉佐野にある株式会社泉州アグリは「ユニット型就労」というユニークな取り組みにより、農業分野でユニバーサルな働き方を提案しています。
前回に引き続き、代表取締役の加藤秀樹さんにこの取り組みについてお話をお伺いしました。
入り口を低くするためのユニット就労
その日出荷する野菜のリストがずらり
ーーおっしゃる通り、ユニット就労が農家さんのことを考えたとても使いやすいモデルなんですね。実際に就労する人にとってはどんなメリットがあるんでしょうか。
後進が育ちにくいことの一つに、勘や土地によって作物の育て方が違うといったマニュアル化できない部分があるので、ハードルが高く感じてしまうことがあります。そういった方に対して農業の入り口を学べる機会になるのが一つです。
また、ユニット就労が農業就労への入り口として機能して、来てくれた人の中から誰か雇いたいとか、アルバイトしてほしいという話が来ることもあります。
また、1人では就労体験に行きにくい方も、複数人だと行けるということもあります。なるべく入り口のハードルを低くすることに役立っていると思います。
ーー4人一組のユニットであることはほかにどんなメリットがあるんでしょうか。
ユニットとしての働きが注視されるので、一人一人が優秀じゃなくても大丈夫ということでしょうか。ある程度これ以上の能力は必要という基準はありますが、一人一人がめちゃくちゃ優秀である必要はない。そのおかげで、1人だと就労が難しい人でも働けるという点ですね。
温室ではさまざまな苗を育成中
ユニットリーダーの育成が課題
ーーものすごく理想的な仕組みに思えるのですが、何か問題点や課題はあるのでしょうか。
一つ目は農家さんが求める作業は全部できないことを理解してもらわないといけない点ですね。収穫ならスピードだけでなく傷物をよけて欲しいとか、一定の品質のものだけ収穫してほしいといったことも求められると、僕たちでは難しいです。
スピード重視の代わりに大きさがばらばらだったり傷物が入ったりすることは許容してほしいとか、とにかく品質重視でとか仕事の基準を作らないといけない。その調整の難しさはあります。
もう一つが、ユニットリーダーの育成ですね。ユニットを動かすにはユニットリーダーが必要なんですが、育成には時間がかかるのと現場でしかユニットリーダーのスキルは身につかないので、なかなかすぐには増えません。しかし、ユニットリーダーを増やしていかないことには、この仕組みも広まらないので、どうにかしたいところですね。
ーーこちらで就労支援や農業体験をされた方のその後のキャリアはどんな感じなんですか。
卒業して働きに出たメンバーもいるし、農業で独立したメンバーもいるし、いろいろですね。
できたらいろいろな農業の形を見てもらいたいので、ユニット就労である程度農業やユニットで働くことに慣れた人たちには「泉佐野アグリカレッジ」の仕組みを使って、青森でリンゴや加賀でナシ生産に携わってもらいます。
さまざまな作物に触れ、都市型農業や地方の農業に触れることで、漠然とした農業がやりたいという思いがどんな農業を目指すのか具体化できていいみたいです。
ーー就労支援というと、1人1人が社会で必要とされる決まったスキルを身につけて完璧になってから就職するというイメージをもっていましたが、全然違っていて驚きました。
やはり間口を広げないと農業人口は広がらないと思いますね。農家さんも農業はこうという固定観念のある人が多いので、そうでなくても人を雇えると言っていきたいですね。
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