コロナ禍での学生団体の活動の変化〜「コミュニティを越えて人がつながり活動できるまちづくりを」近畿大学 建築学部 公認学生団体 あきばこ家〜
コロナ禍において、企業でもテレワークや在宅ワークが普及し、日本中でオンライン化が加速する一方で、大学のサークル活動や学生団体の活動などのオンライン化は上手く進まず、活動がストップしている団体も少なくありません。
本企画は、そんなコロナ禍においても、継続的に活動している学生団体に話を聞くことで、全国の他の団体の参考になればと思い、まずは建築系学生団体への取材を開始しました。
第3回目となる今回は、大阪で活動を展開されている、近畿大学 建築学部 公認学生団体 あきばこ家 代表の岡田哲さん(近畿大学3回生 ※取材時)と、副代表の藤本結花さん(近畿大学3回生 ※取材時)にお話をお伺いしました。
第1回目の記事はこちら
コロナ禍での学生団体の活動の変化 〜「実践的な学びと地域の課題解決」を目指す広島建築系学生団体scale〜
第2回目の記事はこちら
コロナ禍での学生団体の活動の変化〜「大学外とのプロジェクトを通して学生の成長に寄与していく」宇都宮大学建築デザイン学生団体UUAD〜
(上部:インタビュアー FUKUOKA2020パーソナリティ濱津さん、大嶋さん
左下:あきばこ家 副代表 藤本さん、右下:あきばこ家代表 岡田さん)
あきばこ家とは?
近畿大学公認団体。2014年に発足。「『まち』が活きる居場所を」という理念をもとに、コミュニティを越えて人がつながり活動できるまちづくりを目指して活動中。近畿大学の学生を中心に、大学や研究室の枠にとらわれず、地域住民、建築家と共にまちが変わるきっかけを創出している。
主な活動として、空き家のリノベーションや地域向けのイベントの企画などを実施。2016年に団体初の改修事例「ながせのながや」が竣工し、学生主体で地域へのサロン貸し出しや、団体OBと共同で学生用住宅の運営を行っている。
- 早速ですが、まずはじめに、あきばこ家さんの立ち上げ背景などについて教えてください。
岡田さん:あきばこ家は、近畿大学を拠点に空き家を活用して地域創生を行っている、近畿大学の公認団体です。2014年に設立されまして、僕は団体代表の8代目にあたります。団体の目的は、一言で言うと「地域創生」なんですけど、建築学部の建築の知識を使って街を活気づけたいという思いがあります。
建築研究会という団体の、空き家を改修するプロジェクトに集まったメンバーが、色々と活動を進めていたら自然と「あきばこ家」という団体になっていたと聞いています。当時のプロジェクトメンバーも団体OBとして今でもサポートしてくれています。
- ありがとうございます。活動内容についても教えてください。
岡田さん:築86年の長屋をリノベーションした「ながせのながや*1」の運営や、築約44年の住宅をリノベーションした「かみこさかの家*2」の運営をしています。その他にも、長瀬まるごとオンライン「おうちフェスタ!」や、地域住民向けのイベント企画なども行なっています。
「ながせのながや」のリノベーションに関しては、あきばこ家では、現況調査・改修案の作成・提案・工事などのサポートを担当しました。コロナ禍に入る前は、月一でイベントも開催していましたね。子供達とのクリスマス会や勉強会、それとサロン活動もしていました。
(「ながせのながや」での活動 -あきばこ家さん提供-)
ながせのながや*1・・・学生団体あきばこ家とその卒業生の会社で運営される シェアハウス+レンタルスペースです。レンタルスペースではヨガ教室、コーヒー屋さん、雑貨屋さんなど日々色んな地域住民の方に使用していただいてます。住人の方には普通の賃貸では絶対に体験できない古民家暮らしと共に地域の人と関わりこのまちの良さも体験してもらい、まちに愛着をもってもらえることを目的としています。(あきばこ家HPより)
(「かみこさかの家」 -公式HPから-)
かみこさかの家*2・・・かみこさかの家とは学生団体あきばこ家とその卒業生の会社で運営される学生のシェアハウス+地域サロンです。地域サロンでは地域の人が交流できる場を目指して運営しています。住人の方には土の建築のかみこさかの家で普通の賃貸では体験できない暮らしと共に、地域の人と関わりこのまちの良さも体験してもらい、まちに愛着をもってもらえることを目的としています。(公式HPより)
(地域住民向けのイベント -あきばこ家さん提供-)
- 何名ぐらいで活動されてるんでしょうか。
岡田さん:団体への登録は75名で、アクティブに活動しているのは30名程度ですね。基本的に建築が好きな人が多く、住宅改修やまちづくり、DIYや施工などに関わりたい人が多く在籍しています。
- 学生だけで運営されているんでしょうか。
岡田さん:基本的には学生だけで運営しています。顧問の先生もいまして、積極的にアドバイスなどをいただいていますが、基本的には学生だけでチャレンジしてほしいというとのことで色々と任せていただいています。
- 現在の活動に関して、コロナの影響はありましたか。
藤本さん:まず、直接会えなくなったというのはあります。下級生がどういう想いで団体活動に参加してくれてるのかなどを聞けなかったり。Zoomを使ったオンライン会議もやってるんですけど、いつものメンバーばかり集まってしまっていて、下級生からすると入りづらい環境になってしまっていたのかなと思います。
ただ、ここ数か月は、対面での活動が再開できてきました。1年間ずっとできてなかったイベントを先月あたりに開催できたので、それは嬉しかったですね。
- どんなイベントだったんでしょうか。
藤本さん:あきばこ家が親しくさせていただいている地域の方が主催しているマルシェへの出店ですね。あきばこ家も出店してみないか?とお声がけいただいて、出店しました。
あきばこ家の本来の活動とは関係ないんですけど、ハーバリウムの販売をしました。あきばこ家という存在、近畿大学の学生がこんなことをしてますよ、というのを地域の方に知ってもらうために、参加しました。
- ありがとうございます。コロナ禍において、逆にプラスだった面などはありますか。
藤本さん:団体内でオンライン講習会を新しく始めました。Zoomを使ってIllustratorやCADのツールなどについて、後輩にレクチャーしています。
- コロナ禍以前からZoomを使っていましたか?他に活用しているツールなどあれば教えてください。
藤本さん:コロナ禍になってから使い始めました。授業でもZoomを使っています。
後は、「SpatialChat」というツールを使って新入生歓迎会などを開催しました。「SpatialChat」は、オンライン上のスペースにそれぞれのユーザーのアイコンがあって、それを自由に動かすことができます。
アイコンの近くにいる人の声だけが聞こえるので、「先輩と話したい人はこちら」など、それぞれ自由に動くことができるので、Zoomのブレイクアウトルーム機能のように活用していました。
(SpatialChat公式サイトから)
岡田さん:「SpatialChat」は”会議感”がなくなるのが一番メリットが大きいかなと思いました。ズームだと映像だけなので、交流会ではなくて講習みたいな感じになるので、SpatialChatの方が、より対面に近い感覚を持ちました。
藤本さん:ただ、SpatialChat内では一人一人画面の共有ができるんですけど、それをやると重くなってしまって、画面が共有されないなどのトラブルもありました。その場合はZoomに移行したりと、状況によって使い分けが必要なのかなと思います。
また、団体内の連絡には基本的にLINEを使っています。
- 企業や他団体からの活動の支援などもあるんでしょうか。
OBの方が独立して建築事務所を経営しているので、そこから色々とサポートを受けていて、運営のサポートや、DIYをする際には金銭的なサポートも受けていたりします。
- 団体参加にあたって部費はありますか。
岡田さん:コロナ禍から無くなりましたね。コロナ禍に入ったと同時に、学校側から部活の仕組みを変更するという話があり、そこから部費を集めることは無くなりました。
その代わり、あきばこ家は近畿大学 建築学部 公認学生団体なので、学校側から割り振ってもらえる予算で補うようにしました。
現状はこの予算はDIYのプロジェクトに充てようかなと考えています。
- ありがとうございます。今後の展望をお聞かせください!
藤本:まずは、コロナ禍が終息したら、かみこさかの家を高齢者と学生によるシェアハウスとして完全に機能させたいです。また、ながせのながやや、かみこさかの家の運営とは別に、他の空き家もリノベーションして活用していきたいと考えています。世代が変わっても、あきばこ家だからできることは何かを考えていくことで、ずっと長瀬に貢献できればと思います。
岡田:私たちの代は、地域の方々と一緒に活動できていましたが、コロナ禍によってその経験をできていない後輩たちに、地域の方々と一緒に創造していく楽しさ・想いを伝え、あきばこ家の活動を持続させていきたいです。また、学生と地域の方との交流が増えることで愛着がわき、もっと長瀬に住み続ける人が増えてほしいと願っています。
- ありがとうございました!
取材後記(インタビュアー:濱津)
私も軽音部の副部長をしているので、コロナ禍における団体の継続方法や、新しいツールなども知れて参考になりました。あきばこ家さんは地域での活動がメインなので、コロナ禍での活動や団体内のコミュニケーションに難しさを感じることもあったと思うのですが、オンラインでできることを模索されたり、団体内でも新しい取り組みや、新しいツールを積極的に活用されたりと、他団体にも参考になる情報がたくさんあったのではないかと思います。近畿大学内の建築系学生団体の中では規模の大きな方だと仰っていたので、今後の活躍に注目したいです!
協賛企業からのお知らせ
今回の取材プロジェクトをご支援いただいている、トランスコスモス株式会社からのご案内です。
トランスコスモス株式会社は1984年に建設・住宅業界向けCAD運用サービスを提供してから今日に至るまで38年間の歴史を持つ一級建築士事務所です。ハウスメーカーやゼネコン等、建設業界の全てのお客様企業に対し、「業務の標準化・効率化及びDigitalの推進」を行っています。当社では現在、2023年4月入社の新卒採用として「建設設計エンジニア・土木設計エンジニア・DXエンジニア」の3職種を募集しております。最先端の技術を用いた次世代の設計に興味がある方は以下のURLよりエントリーください。
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