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支援付き住宅 関西地方の状況(一般社団法人 近畿パーソナルサポート協会)

抱樸が初のクラウドファンディングに挑戦した「コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援」の中心事業「支援付き住宅の全国展開」において、各地で担っていくパートナー団体の一つであり、関西地方を中心に活動する、一般社団法人 近畿パーソナルサポート協会の小林さんにお話しをお伺いしました。


一般社団法人 近畿パーソナルサポート協会の活動

私たちの団体では、有料老人ホームの運営を通して、生活困窮されている方への支援を行ってきました。
有料老人ホームとは言いながらも、老人ホームに入居される方はご老人の方だけではなくて、一般の住宅で生活していくには日常生活で支障が出る方もいらっしゃいます。

例えば、介護のボーダーの方です。
介護サービスを受けるには、介護認定が必要です。もっとも介護の必要度が高いとされる方が「要介護5」で、もっとも軽いとされる方が「要支援1」となります。
日常生活の中では、その人が社会的に健康な生活を送るための、食事や排泄といったような日常生活動作(ADL)を欠かすことができません。
しかし、何らかの事情で生活能力が低く、支援が必要な人はいます。それでも、認定が通らないようなボーダーの人がいる。こうした方の支援を行います。
それから、入退院を繰り返す人がいます。退院したばかりの人というのは、体力も精神力も落ちています。そうした方にも支援が必要なので、行政から依頼を受けて、当団体の有料老人ホームで支援を行っていくことがあります。

私たちは、地域のすきまにある困りごとを解決する事を運営方針に事業を行ってまいりました。
そして、改善された方は自分のいた地域に戻っていく。戻ることになったら支援を止めるわけではなく、一般の住居に戻られた方にも支援を続けます。
老人ホームの運営だけではなく、地域に戻られた方にも、支援が必要であれば、私たちがお手伝いをしたり見守りをしていく活動を行ってきました。

他にも、困っている方への声がけは週に一度、場所によって日時を決めてその場に行って行います。
しかしながら、外に出向いて声がけをするだけでは出会えないような困っていらっしゃる方もたくさんいます。友人や知人宅を転々としている人や、ネットカフェで暮らしている人を訪ねることは難しいです。
そのため、行政の窓口にご相談があった場合、行政の方のご判断と、ご本人の意向を汲んだ上で連絡いただいたり、私たちが訪問をして、ご本人の意志を受けて、私たちができる支援を説明していきます。


新型コロナウイルスによる影響

支援を必要とする方々の状況は、コロナウイルスの感染拡大とともに変化していきました。

勤め先の社宅があったけれど、コロナの影響で仕事も減り、会社が資金繰りで社宅を売却しなければいけなくなったために住むところを失う人たちが出てくるようになりました。
それから、仕事が減ったり、収入が減ってしまえば生活のレベルを落とさなければいけなくなります。収入が減っても食べていかなければいけないので、優先順位を整理すると家賃を減らすために建物を借り換えなければいけないこともあります。でも、例えばそんな時に仕事がなければ、借り換える際に職業欄を埋めることができません。そうした人もいるのが現実です。

また、ご高齢の方は、既往歴があることもあり、特に感染リスクが高いですよね。
そうすると、ご本人の方も人が集まるような仕事の環境を変えたいと感じる方もいますし、もともと病院での入退院を繰り返していたような方がこうしたリスクの高い状況になった中で一般生活を送るためにはサポートを必要とする方もいます。そうした方のもとで支援をしていくようになりました。

今はどこでも、仕事が減ってしまって、住む場所にも困っているという話は聞くと思いますが、私たちが見ていても、そうした問題は多く起きているように感じます。

コロナの影響で、これまでの生活とは違う優先順位の立て方をしなければいけなくなった方が多く出てくるようになったというのが、これまでと大きく違う点だと思います。
生活の立て直しのために、資産を売却するという話はよく言われますが、車がないと仕事に出られないから車を売ることができないという方もいらっしゃいます。

コロナの影響はもちろんとても大きいですが、その前から抱えていた問題に重なって、生活をすることが大変になってしまう方が多く、そこからの立て直しには時間がかかります。
状況が変わっていくなかで何を優先するか、ご本人のご選択と、私たちからの提案と相談を重ねて、支援をしています。


クラウドファンディングによる支援活動の拡大

コロナウイルス感染拡大によって生活の面でもお困りになっている方が増えた状況を受けて、私たちの方でも、クラウドファンディングを受けて支援を行うことにしました。

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これによって、29室のお部屋を新たに借り上げることができました。老人ホームのような一つの施設で完結する形ではなく、関西圏のいくつかの都市に支援住居があり、現状、満室になっております。
部屋を借りるだけではなく、家具や家電も用意して、そこですぐに生活できるよう準備してお入りいただいています。

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クラウドファンディングのおかげで29室のお部屋を借りることができたのはとてもありがたいことですが、こうしたサブリースで貸してくれる保証会社さんや大家さんははじめ多くありませんでした。地道にどうにか借りれるところを探して、ようやく入居できるようになったのがちょうど1年前の2020年12月でした。そこから1年が経ち、今満室となっています。

基本的には一つの建物の中で数室を借りるようにしているので、ある方へ支援が必要になった時などには同じ建物内に住んでいらっしゃる方へもお声がけしています。
生活能力があまり高くない方には、部屋の整理整頓やゴミ出しなど具体的なサポートもします。

それから、コロナによってみんな気が滅入ってしまって、求職活動をするにも気持ちがそこにそこに持っていけない人もいます。「どうせ仕事は見つからない」と思ってしまうんです。
そういう時は、私たちの方が就労支援を行い、求職活動に同行したりしています。そうすれば、今度は私たちだけではなく外との接点も増えていくので、今度はそこで対話ができます。

そうした、点と点を繋げながら、またそのサポートを続けています。本人がやっているかやっていないかなどの確認をするだけではなく、私たちの方でも一緒に考えながらサポートをしていくという形です。

また、私たちのところに相談にやってくる方の中には、精神的に苦しい方も多くいます。コロナが原因で、外出をほとんど避け、人とも会えず、必要最低限の買い物も厳重に対策をしながら行くような方は精神的に不安定になってしまってもおかしくないですよね。そうした方とは電話で少しずつ話を聴いていきます。
そうすると、本人も、本当は人との接触を避けていることがよくないと考えていることが判明したり、精神的な問題のために通院することが必要だと考えているとわかることがあります。
必要なことが何かわかってくれば、私たちもそのサポートをしていきます。

心の問題はなかなか表に出てこないので、わかりづらいものです。だから、こうして対話をしていくしかありません。
そうして、その中で出てきた一言を逃さず、必要なサポートにすぐに繋げていく。そういう、支援のタイムリーさは重要だと思います。


支援活動を通じて見えたこと

現在支援住宅に入られている方は、全員男性です。
私たちのもとに相談に来たり出会う方の中にはもちろん女性もいらっしゃるのですが、経済面や病気、DVなどで苦しんでいても、支援の行き場や施設がない女性も多くいらっしゃるのだと思います。女性の方の中にも困っている方は男性と同じくらいいます。
路上生活者は男性のイメージが強いかもしれませんが、女性の路上生活者だっています。

行政からの相談は男性が多いですが、問題を複雑に抱え、解決が長期になるのは女性であることも多いです。今後、女性の相談もかなり増えてくるでしょうから、家族用の部屋を用意したり、女性への支援をしていくことも、もっと必要になると思っています。
そうしていくと、また支援のあり方は少しずつ変わってくるのかなと思います。

今は、どこも先が見えない苦しい状況です。
事業を縮小したり、廃業してしまう会社さんも出てきてしまっていますから、行政の支援窓口には常に相談が殺到している状況です。そうなってくると、どこかで行政からの支援の施策がなくなるときが来るのではないかと注視しています。私たちにもそのタイミングは読めません。

いきなり生活保護に申請する人は今も多くはなく、まずは給付金や貸付金でしのいでいる人がいます。
でも、それが急に維持できなくなると、生活保護への申請が急増していくではないかと緊張感もあります。難しい状況はまだ続いています。

でも、生活のレベルを一時的に下げたりしなくてはならないことは出てきますが、それも今後上がっていくための道程に過ぎません。自立のためにチャレンジできる施設があることがやはり重要だと思っています。

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寄付をしてくださった方へのメッセージ

苦しい時期にあっても、それが今後よくなっていくためのきっかけだと思っていますから、そうした支援をしていくための施設をつくりたいとずっと思ってきました。
今回のクラウドファンディングによって、そうした気持ちにさらに火がつき、背中を押してもらった気がしています。皆さまの期待に応えていきたいと考えております。

生活に困った人が、一緒にまた階段を登れるような環境をつくっていくことができるように、私たちも頑張って、その環境をつくるきっかけをいただいた皆さまにお返しをしていきたい気持ちです。
本当に感謝しております。ご寄付をいただき、ありがとうございます。


いただきましたサポートはNPO法人抱樸の活動資金にさせていただきます。