「分析総合」算数指導
「算数指導を考える」 劣等意識
子どもが持つ意識の中で最も学力に悪影響を及ぼすのが劣等意識です。30年ほど前までは、小学3年生後半から4年生ごろに劣等意識が芽生えてくると言われていました。しかし、最近ではその年齢が下がり、幼児でも持つと言われるようになってきました。幼児期では、過度な受験対応と、合格に至らない場合において顕著に見られるようになりました。また、保護者による言葉の虐待が招くこともあります。虐待の中でもかなり日常化している精神的虐待は、言葉による人格の否定、能力の否定などがあります。精神的虐待は、現代社会に於いて特別なケースではありません。場合によってはどのご家庭でもあり得るのです。
劣等意識は、自らの否定を意味しています。すると、学習には後ろ向きな考え方しかできず、「何をやってもできない」と自分自身を決めつけていきます。この時点で、脳は学習を必要な情報ではないと判断し、学ぶことを拒否します。大人の言動から始まる劣等意識とは別に、子どもの精神的弱さも自分自身を劣等意識に導くことがあり、それは子ども自身の、「失敗」の経験不足が原因の一つとして考えられるでしょう。いずれにしても、劣等意識は他との比較から始まることが多く、言葉によるダメージは、子どもにとって決定的となります。
劣等意識からの脱却は失敗体験と共に、成功体験の積み重ねです。「わかる」・「できる」この二つが重要で、その為には、理解するための語彙数を持つことになります。また、劣等意識は主に算数から始まるとも言われています。最初は簡単であった算数学習も次第に難しくなり、テストの点数が下がっていきます。特にテストで40~80点を行き来し始めてくると、落ちこぼれの兆候といえます。3年生でこうした状況になる原因は1年生にあります。基礎算数を簡単に過ごし、足し算から指で計算をさせることを黙認していると、概念的に難しくなる引き算でつまずき始め、掛け算で指が使えず、そのまま割り算の指導が始まります。この時期が3年生です。桁数の多い足し算では、まだ指計算は可能でしょう。しかし、引き算になると1000-406のような計算でミスが出始めます。指計算は、数えることであって計算ではありません。次第にテストも時間が足らなくなってくるのです。
こうして、子どもの算数嫌いが始まり、劣等意識を高めていきます。子どもの算数嫌いの予防と劣等意識の回避は、必然的に基礎学習の充実と言う事になります。最近になり、「タイルの購入希望の方が増えてきました。」とご報告をしました。また、幼児・小学生教室へのお問い合わせも増えています。情報化社会ですから、教育がどの方向に進んでいるのかご存じの方は多いでしょう。低学年の算数・国語学習を甘く見てはいけません。プロでも難しい基礎指導、やはり専門に任せるべきでしょう。計算で躓く子は、まず筆算の構造理解をしっかりさせます。位取り指導はしっかりしましょう。タイル指導を考えると、1のタイル、10のタイル、100のタイル、それぞれ10ずつまとまり次の位へと進むことが目でしっかり捉えることができます。これを計算指導で活かします。特に、繰り下がりで躓く子はタイル指導が一番です。劣等意識が構造的に作られるものなら、それは、学習指導や言葉で回避できるはずです。だから、数字だけの指導でなく、実際に動かして体感できるフィジカルな学習指導が必要なのです。
繰り下がりの引き算、一の位で引けないとき、隣の10の位から「10」借りてくる、10の位の計算で引けないとき、隣の百の位から「10」(?)借りてくる、100の位の計算、引けないときは隣の千の位から「10」(?)借りてくる。全て「10」を借りてくることに疑問を感じたことはありませんか。数字だけで機械的に教えると何の疑問も抱かず学習は進んでいくのかも知れません。百の位から借りてくるのに何故「10」なのか。この疑問に見事答えることができるのがタイルです。数字という抽象の世界だけでなく、タイルという具体で考えさせると、考え方も整理されていきます。理解の過程を一つ一つ確認し、認め誉めてあげる。学習をさせて劣等意識を芽生えさせては本末転倒です。子ども達が興味、関心を持って学べる場を、それが私達の役目かも知れません。
2014/3/26
著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫
石川先生監修!
幼児教室・学習塾のキッズスクールアップル富ヶ谷
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