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小学1年生から始まる…

「中学生で引き算ができない」

学習の始まりをヘッドスタートと言います。我が国では義務教育が満6歳から開始されることから、一般的には6歳が公的なヘッドスタートということになります。今、政府が進めている幼児教育無料化の話がありますが、教育と言うより保育の面が強いようです。

一般的なヘッドスタートが満6歳ですが、民間では胎教から始まる幼児教育があります。極端な例では、小学校入学前までに学習に関して6年間の差が生じることになります。0~3際・4歳~6歳とほぼ3年ごとに成長発達の節目を迎えます。ことばの習得、基本的生活体験と経験、抽象思考の発達、論理的思考の発達など、知的発達から考えて決して見過ごすことのできない内容が詰まっています。

満6歳から始まる小学校生活ですが、既にこの時期から子ども達の間に学力に関する差が見られてきます。その一つが月例差です。ただ、」この差は年齢が上がる毎に解消されていきます。そして、幼児期の学習で十分補うことが可能です。次に上げられるのが能力差です。これは、家庭力が問われます。十分な遊び、運動面、生活体験、経験、集団行動を通した生活力です。基本的な人間関係も含まれます。そして、知力に関する差があります。小学校の教科書をご覧になればお判りの通り、全て文字と一部絵や写真で表されています。また、授業もことばを中心とした聞く学習が中心となって進められていきます。この時点で、聞くことのできない子は、授業にはついてこれません。先生の話すことばの意味を理解できないと「学校はつまらない」所となるでしょう。更にテストでは書くことができなければテストになりません。

今の公教育では、五十音の清音や、濁音、半濁音。促音等々が読み書きできなければ、学校の授業について行けなくなってしまいます。今から40年ほど前、学校では入学説明会で「ひらがなの読み書きは学校で教えます。」と保護者に伝えていました。ところが、それは建前で、その後多くの「落ちこぼし」(落ちこぼれではなく、学校が落ちこぼしたという考え方が強くなってからこのことばに)の子ども達を出してしまいました。

では、この差は縮まるのでしょうか。新指導要領の実施が、今後の教育界を大きく変化させてくると予想されます。学習内容の質と量の増加がより学力差を生むからです。現場の先生方は、増加した教科書のページ数をどう消化するか時間数との戦いを強いられています。事前の予習や復習をしておかなければなりません。ヘッドスタートの時期が、子ども達の学力差を生む、決して脅しではなく、今、現実に起こっていることです。放っておいては差が益々広がるばかりです。

中学1年生の数学で「正負の数」が最初に出てきます。では、この数学概念の基本はどこにあるでしょうか。中学の数学を担当している先生にお聞きしてください。

ここからは、ちょっとややこしい話になりますが我慢してお読みください。中学生の子ども達が最もミスを犯すのがこの正負の数です。数式に関係する「+」「-」の概念をつかむことがなかなかできません。数式を解く際に必要な解法の手順「アルゴリズム」、しかし、式を解くときに必要な正負の符号で躓きます。連立方程式を指導すると、その生徒の問題点が浮き彫りされます。この基本は何でもない数の学習にあります。ほとんどの方が簡単だと見過ごす学習です。その基本とは幼児期の大小比較です。量の大小比較ですが、見れば判ると、指導者でも簡単に素通りします。量の概念の始まりです。これは、多少比較へと進みます。多少比較では見た目ではなく、数としての差が出てきます。そして、同数比較となり同じ数の物を多く扱い、具体物「★★」=タイル「□□」=数字「2」=数詞「に」と数字の理解へと進みます。

そして最も大切な学習に入ります「0」です。ここまでが整数という数の概念形成です。ところが世の中は情報化社会、「-」という情報が無造作に入ってきます。そして、小学生で習う足し算と引き算へと系統的に繋がっていきます。この指導で、方程式の基礎的な考え方が出てきます。また、引き算では「0」に関する計算を重要視します。ここまでが正負の数に大きく関係してきます。

話はだいぶ長くなりましたが、成績不振に悩む子ども達には、その学習履歴をたどることが大切です。すると、中学生や高校生であっても、幼児期から小学3年生までの基礎学習にたどり着きます。例えば、中学生であれば9年分の基礎教育の見直しをしなければなりません。これは大げさかも知れませんが、どうぞ基礎教育を見直してください。

中学生でも、再度基礎学習を楽しんで行うよう心がけてください。高学年でも同じです。

2013/6/1


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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