思考の前の知識
「基礎がものを言う」
ES細胞やiPS細胞とは異なる新しい万能細胞、『STAP細胞』の作成に成功した小保方晴子さん。これは我が国の基礎研究レベルの高さを世界に知らしめた。しかし、その画期的な、また常識破りの論文であったため、昨年春、世界的に権威ある英科学誌ネイチャーに投稿した際は、「過去何百年の生物細胞学の歴史を愚弄している。」と酷評され、掲載を却下されたと言う。なるほど、こうした知識偏重と権威主義が科学の進歩を遅らせる事もあるのだといことを知った。いずれにしても、こうした研究は基礎研究なくして成り立たない。常に失敗の連続なのだろう。しかし、地道な実験作業、仮説検証の繰り返しが素晴らしい発見を産むことになる。
私たちは、算数や国語という教科指導では何が求められるのだろうか。また、テストの結果から何を読み取っているだろうか。点数という単純判断だけでは、次の成績向上は考えられないだろう。実際、研究者達は、実験結果の殆どが落第点だ。失敗の連続とは、子ども達のテストと似ているところがある。何故失敗したか思考を巡らせる事、新たな仮説をたてることが次の成功を呼ぶのだろう。こどものテストには次の学習に向けた問題提起を示す情報が満載だ。この分析が私たちの授業にフィードバックされる。また、教材開発に活かされる。私の作る教材の中に、答えが幾通りも考えられる問題がある。どれもが正解で、どれもが間違っているとも言えるそんな問題を考えた。答えは一つではない。そんな問題があっても良いだろうと。問題作成の意図は、「様々な考えに触れる」だ。例えば、幼児であれば、「いけない事をしている人に○をつけましょう。」という内容の問題がある。場面から想像するのだが、喧嘩している場面では、優勢と劣勢がありどちらが悪いか単純に判断できるようにしている。しかし、沈思黙考すると、見方によっては逆の場合がある。1枚の絵は、見方によって様々な考え方が出来る。その課程に至るまでにあったこと、その後の展開、そこから何が悪いことか、問題の本質を探ることになる。また、小学生のテキストで、ある文章の題を考える問題がある。文は1枚のプリントでは完結しない。何枚かに分けられるが、その都度、文の題を考えなければならない。思考の継続・思考の繰り返しにより、題が変化してくる。これを読解という、文章を読み解く学習の基本になる。何故なら、文章や物語の題は、その作品の主張を色濃く表しているからだ。だから、この幼小のテキストは、指導者によって大きく変化してしまう。○×主義や知識偏重に至った指導者ではこのテキストを使いこなせないだろう。テキストも指導者を選ぶのかも知れない。
思考力を重視する時代になったが、現実的には、その求めに応じられる人が育成されていない。私の所には様々な質問だ寄せられる。取材やテレビの番組協力の依頼もある。私自身万能ではない。それら全てに対応出来る能力は持ち合わせていない。即答できない問題も多い。いくら思考重視と言っても、基本的な知識が必要であると言える。知識だけでなく、基本的な力が必要だということも気付かされる。子ども達には「聴く/聞く力」が必要だと言い切るが、では聴く/聞くとは具体的に何を指すのか。聴く/聞くには、「聞く耳を持つ」「全ての事柄に耳を貸す」ということが含まれているのだろう。人間にとって当たり前のことを当たり前に、基礎学力とはここを指している。
物事、知識から判断すれば、それは良いか悪いか、○か×かという判断に至る。今回の小保方晴子さんが良い例だ。知識・博識・権威で打ち消されるところだった論文は、小保方さんを暖かく取り巻く日本の世界的科学者達の存在があった。科学雑誌ネイチャーも、知識・博識・権威という非科学的な力で危うく貴重な論文を葬り去るところだった。やはり思考しなければ。
2013/1/30
著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫
石川先生監修!
幼児教室・学習塾のキッズスクールアップル富ヶ谷
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