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男女・仕事・時代「独り言」

「優先順位?」

高校教師が自校の入学式を欠席し、同日行われた我が子の入学式に出席した事が問題となっている。聖職者として自校の子ども達、そして入学式を優先するのは当たり前という識者は多い。他方、一人の親として、我が子の入学式は一生に一度の大事なもの、だから我が子を優先しても良いのではとする意見も多い。難しい問題なのだが、それぞれの立場で意見が異なるのが、今回のケースではなかろうか。

まず、男女で意見が異なる。男女の仲でも、専業主婦と仕事を持っている主婦でも意見が異なる。教育者の中でも、男女それぞれの職責という面では異なる意見が多い。世の中は、女性の社会進出を望んでいる。普段はあまり手をかけてあげられないから、せめて入学式など、行事には出てあげたいと思うお母さんは多い。子どもの大事な行事、ここで夫婦同時に仕事が入ってしまった場合、夫婦どちらの仕事を優先するのか。今回も同じケースのようだ。仕事を持たれている女性の場合、社会人としての立場、主婦という立場、母という立場、奥さんという立場、男性も似たような立場ではあるが、家庭の仕事は主に女性にウエイトがかかっている場合が多い。だから、お母さんが仕事をキャンセルする場合が多いようだ。子育てという、親として大切な問題は、どの家庭でもまた、社会でも皆公平に扱われるべき筈だ。立場が違えば優先順位は変わる。夫婦が同時に職責を問われた場合はどうするか、優先順位という言葉では簡単に片付けられない現実的な問題を突きつけられる。

年代においても意見が異なる。女性の社会進出が当たり前になる世の中で、今後こうした事例が増加すると予測される。若い世代と60代では過ごしてきた時代背景を考えると、仕事に対する考え方に相違があることは確かだ。しかし、今回の方は50歳代という。だからではないだろうが、基本的なルールを踏まえ、聖職者という立場ではなく、社会人としてルールに則り行動されている。この方の対応に不備はない。学校に対し、相談と報告、そして確認と許可、更に欠席に対する対応策を踏まえた準備であった。責任感を感じさせる対応であったと思う。こうした対応から、若者からは何が問題なのかという疑問の声も上がった。仕事よりも大切なものがある。ただ、仕事の内容が問題視されるのだろう。医師、警察官、消防官、教師(いわゆる聖職と呼ばれる職業)など、人命や教育に関わる仕事に就いている方々に対して、より多くの重い職業意識を問われる。ところが現実社会では、そのような見方や認識は薄くなっているように思う。識者の方々は、聖職として、今回の先生の行動を捉えている。世間的にも、初めての顔見せである入学式という場であったからなおさらだろう。私も仕事先で父親の急変を知らされた覚えがある。100名ほどの保護者を前にした教育講話だった。この場合、判断は自分で下すしかない。私は、急な状態であったため交代はきかず現場を優先した。

私は、今回のケースで「何を優先すべきか」ではなく、教師として何をすべきかを考えた。敢えて我が子の入学式に参加した事を素直に述べた教師は、その後生徒達に何をすべきかを考え手紙に託した。更に冷静に考えれば、これから生徒と共に日々切磋琢磨する学校での指導が大切だと捉えることが自然の判断だ。入学式は大切だ。それはわかりきったことだが、入学式という「点」で見るのではなく、これからの高校生活という線や面で見ていく必要があると考える。つまり、これからの高校生活を大切にして欲しい。ご本人もかなり悩まれた上での判断は、教育の現場で活かされる筈だ。親として子どものことを考える人が担任であること、時代は時として聖職者を一人の母親に戻すのかも知れない。

識者はどう見るのか。産経新聞より、
「『聖職性』の高い教職員として、あり得ない行動。上司の管理者としての責任、意識も問われる」と厳しく断じるのは教育評論家の尾木直樹氏だ。「息子さんを第一に取り、職業人ではなく母親の行動を取った。単純な学力ではなく、人間教育も求められるのが教職。子供たちへの職責に反している」

社会のさまざまな場面で学ぶ機会が増え、「学校の価値が相対的に落ちた」とも分析する尾木氏は「世間の『認識』に甘え、教師自ら乗ってしまうようでは、さらに信頼を失う」と懸念。「職責に真正面から向き合うのが教職。先生が尊敬を受けてきた理由について思いをいたさないとならない」と力を込めた。
 以上産経新聞より 

敢えて、教育評論家 尾木先生のお考えを載せさせて頂いく。久しぶりにきく「聖職論」だ。私自身、身が引き締まる思いで拝読した。

2014/4/21


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川先生監修!

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