子ども達の現状
「低学力対策」
新指導要領が実施され予想通り、学力の二極化は深刻さを増しています。しかし、残念ながら、保護者の中にも、生徒自身も学力について深刻に考えている方が少ないというのが現状です。現在の学習内容と進行を考えると、中学生では、小学校で躓き遅れていた分を補うには非常に困難だと言えます。小学校生活6年間の遅れを補うには、保護者、子ども双方によほどの覚悟と時間が必要なのです。実際、今春中学1年生の女子が入塾希望者がきましたが、中学の教科指導どころではありません。1桁の足し算から習熟させなければならない状態です。その後待ち受けている方程式では加減乗除が出来ていなければ指導すら出来ません。英語に至ってはアルファベットの5文字程度しか読み書きできません。それ以上に問題なのが、学習に対する意欲と姿勢です。全てに投げやりで、初めから学ぶことを放棄しています。ここまで放置してきた大人側の責任が見え隠れします。
学力の低い子ども達は共通して、学ぶことは面白くないと考えているということです。面白くないという背景には、学習の達成感が不足していることを意味しています。また、学習が人間性全てを決定するという考え方に押しつぶされています。「数学が出来きる人は頭が良い、優れた人だ、それに対し、数学が出来ない人は頭が悪く、人間性にも劣る人だ」という学習、学力に対する偏見です。まず、このような考え方を大人が捨てることです。学力はその人の能力の一部にしか過ぎません。
しかし、私たちは、その学力を上げる努力をしなければなりません。アニメ界では世界的に著名な宮崎駿さんが、引退記者会見で「子ども達に、人生は生きるに値する事を伝えたい」と仰いました。このことばは、私たち大人一人ひとりが持たなければならない大切な信念です。
学力不信を排除し、学力不振を防ぐには、早めのスタートが大切です。学習の開始時期が早ければ、一定の学力は保てます。まさにヘッドスタートを真剣に考えるべきです。大切にすべきは国語力です。幼児期では、読み聞かせ、ことばがけ、会話、話を聞く等の言語性を高めるようにします。勿論、ことばがけや、会話はお母さんだけの仕事ではありません。おじいちゃん、おばあちゃんの存在は重要です。祖父母の方は、積極的にお孫さんの教育に参加されてください。当然お父さんの存在も重要です。子育てはお母さん一人で行うものではありません。ある意味子育てチームワークという考え方で臨むべきです。
既に小学生の場合、ご家庭でできる最大の学習は各教科の予習です。それには、教科書の音読み、書写が効果を発揮します。予習では、各教科に出てくることばを事前に学ぶことが大切なのです。平成の子は、学習に関係のないゲームやお笑いネタなどの語彙は豊富でも、思考力に関係することばが不足しています。そこで教科書の音読が大切なります。会話同様、ことばを声に出すことが求められています。今、小学2年生であればかけ算九九を毎日しっかり唱えるようにしておきましょう。
計算学習は指を使わせないことが大切です。タイル指導をされている教室(関東では、プリンスジュニア、中部地区では名古屋の西塾など)に通うことも対策の一つです。タイル学習は、半抽象学習とも言えます。具体的な内容を数字や記号で表したのが抽象と呼ばれるものです。その間に半抽象学習が入れば、思考力の向上にも繋がります。短絡的な判断が多い現代社会では、指導者も同様に短絡的なものの解釈や判断をしがちです。計算だけでは能力が育たないのにはこうした理由があるからです。初めから抽象化された式で計算を学んでも、文章問題で式化する思考学習にはなりません。低学力で悩む子どもは、その学習指導にも大きく影響されているのです。続く
2013/9/7
著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫
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