夜の世界で「大人って汚い」と思ってた。片倉廉さんがつくる幸せな循環 -後編
日本全国と海外で50店舗展開するシェアハウス リバ邸 。高校生を支援するNPO法人D×P(ディーピー)は、大阪で2軒のリバ邸を運営しています。
代表の片倉廉さんは、リバ邸を通じて様々な人に居場所を提供していても『いいことをしている』とは思われたくないと言います。
「善意で君を助けたいって、ぜったい怪しい。『いいことしている』と言われると、マザーテレサじゃないんだからって思います。」
そんな片倉さんの過去は、シンプルにヤンキーだったそうです。
バイクで暴走することで、仲間とのつながりを感じていた高校時代。その後、身を置いた夜の世界。社会の闇で大人を見つめた先には『善意』に対する大きな不信感がありました。
片倉さんの過去を振り返りながら、無償の『善意』ではなく、私たちが無理なく広げていける“幸せの循環”について話をききました。
プロフィール
片倉廉|株式会社リバ邸代表取締役
1995年生まれ24歳。株式会社リバ邸代表取締役。有限会社スーパー片倉代表取締役。世界一周、No.1ホスト、Girl’s Barの経営/倒産。そして、祖父母が経営する会社を事業継承。3度目の起業として家入一真さんからリバ邸を引き継ぎ株式会社リバ邸を創業。基本的に居場所という名の「機会」をつくる仕事をしています。
ほんと、漫画みたいな出来事が起き続けてるんです。
船を降りてからは、出会った人に会いに日本各地に出かけます。そのうち、手持ちのお金は尽き、歌舞伎町に向かいました。
片倉さん:その日のうちに「知り合いの社長さん紹介するね」と、怪しいバーに連れて行かれて。住む場所も決まり、働くことになりました。先輩から、2リットルのペットボトルをぶつけて起こされて「寝てる暇あったらナンパしろ!」と言われたこともありました。でも、実家に戻っても引きこもるだけ。だから、頑張るしかないと思っていましたね。
歌舞伎町中を靴底が減るまで歩き回り、ナンパし続け4ヶ月ほどで売れるようになりました。しかし、2年ほど続けると急に売れなくなり、トラブルも重なってホストを辞めることになります。
片倉さん:しばらく、お客さんのヒモになってました。ほんと、漫画みたいな出来事が起き続けているんです。
善意で君を助けたいってぜったい怪しいと思います。
華やかさの裏で欲望が渦巻く街と称される歌舞伎町。片倉さんは冷静に大人を見つめていました。
片倉さん:多くの人は、綺麗な部分しかみないんです。例えば、風俗で働いている女の子でも、多いのは大学生です。風俗に行く人も『大学生の女の子が働くこと』は、否定することが多い。僕が16歳の時、大人は自分の都合のいいようにしか物事を見ず、汚いと思ってました。
それからも「君のことを思って」という言葉とともに手を差し伸べてくれた人が、「今までこれだけやってあげた」と手のひらを返すことがありました。
片倉さん:僕は、善意で君を助けたいってぜったい怪しいと思います。
だからこそ、井上さんがリバ邸の役員を引き受けるとき「れんくんが好きだから、お金はいらない」と言ったことが信じられなかったそうです。
片倉さん:まだ信じているわけじゃないんですよ!(笑)。でも、「善意」の捉え方が少し変わった気がします。彼の話を聞くと、「れんくんがやっていることは俺がやりたかったこと。手伝えば、俺もやってると言えるし。」って。全然善意じゃないですよね(笑)。
井上さん:れんくんは、好意を言葉にして伝えてくれるんです。それだけで、僕はれんくんから何かをもらっている気がして、嬉しいですよね。何かを返したくなって、『自分に何ができるのか』をつい考えるような感覚なんです。れんくんが、ストレスを抱えていたら好意を伝えることもできないと思います。だから、余力があったり満たされている環境がある人が、余っている分を渡していけばいいんじゃないかな?
(写真右が、リバ邸取締役を務める井上 拓美さん。「たくみくんはいいことを言うので、ぜひ記事に入れて欲しい!」と紹介していただき、話を聞きにに行きました。)
片倉さん:僕は、夢はないけど好奇心は半端なくて。やりたいと思ったら、すぐ実行に移したい。人もコミュニティも面白いと思ったら、がんがん関わります。僕が関わることで、僕の周りやリバ邸の住人もれんくんが言うなら行ってみようと動くきっかけなる。僕以外にも依存先が増えていくといいなあと思います。
運だけでやっていくのは、難しい。
片倉さん:資本主義の社会の中では、お金持っている人が偉いというような風潮もあって、お金でふるいにかけられてしまった人は居場所がなくなる。それってハッピーじゃないと思うんです。
でも、何もせずに自分がハッピーでいられる居場所が見つかることはないと思うんです。そんなの、超、運最強かよ!運だけでやっていくのは無理だから、僕は「居場所がなかったけど、自分で動いてつくりたい」という人のサポートがしたいです。それが、リバ邸の管理人なんです。
僕は、もともと自分でもシェアハウスやってたんですが、住人が集まらなくて。リバ邸の名前借りたら、もっと集まるんじゃない?という他力本願でした。もちろん、僕も動いて人を集めていたんですが。だから、頑張るのはその人だけど、リバ邸を名乗って得られるものは使って欲しいと思っています。
(運営ノウハウはもちろん、人との繋がりも。様々なコンセプトのもとリバ邸は立ち上がっているので、リバ邸コミュニティのなかで今まで出会えなかった人と出会うきっかけがあります。)
若者が幸せに生きていけるような循環をつくっていく
片倉さん:これから、大きく社会は変えられないと僕は思っていて。人はみんな利己的で、自分が幸せになりたいものだと思います。自分に都合のいいほうを選択する。人口的にも少なくなっている若い僕らは、見捨てられているようなもの。それでも幸せに生きていくなら、自分たちでコミュニティをつくって幸せな循環をつくっていくしかないと思います。
だれもがいつも元気なわけではないし、状況によっては動けなくなってしまうときもあります。誰かの手を借りエネルギーをため、動けるようになったら今度は誰かに手を貸す。そんな循環を回しながら、リバ邸というコミュニティを広げています。
片倉さん:「リバ邸があってよかった」とハッピーな声が増えると、利益もでるからダブルで嬉しいです。幸せな循環をつくるためにもリバ邸が増えればいいと思います。いまは、自分に余裕ができてきたから、当時の僕みたいな高校生と話してみたい。たくさん悩んできたけど、たくさん動いてもきたから、今の僕はなりゆきなんです。でも、僕みたいなやつでも普通にいきていけるし大丈夫っていう話をしたい。
中高生だった当時、例えば僕がD×Pと出会って「相談していいよ」と言われても怪しいと思ったと思います。だから、相談もできない。でも、同じような環境にいた人には相談してもいいと思うかもしれない。だから、僕が過去を話すことによって、道はひとつじゃないと思えたらいいですね。
同じような状況の人だったら、自分の悩みを話せるかもしれない。
頼ることができるかもしれない。
D×Pは、通信制高校や定時制高校に多様な大人が出向き授業や居場所をつくっています。
最初は、片倉さんように怪しむ高校生もいます。でも、多様な人のなかで「この人となら話してもいい」と思えることもあります。
私たちは、高校生と関わるなかで高校中退や卒業後に居場所を失い孤立してしまうことがあると知りました。暮らしのなかで「人とのつながり」を得られるように、リバ邸と提携しています。
(大阪にあるリバ邸箕面にも遊びにきてくださいました!片倉さん自身も、D×Pのサポーターとしても活動を支えてくださっています。)
D×Pに関わる人も「善意」というよりは、高校生から何かをもらったり返したりする幸せな循環のなかにいるような気がします。
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