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2023年度活動報告会・トークセッションダイジェスト~デジタルの力と子どもたちの変化~

2024年7月18日に、2023年度CLACK活動報告会~デジタルの力と子どもたちの変化~を実施させていただきました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

アーカイブはこちらからご覧いただけます。

活動報告会の中でトークセッションを行いましたが、今回のセッションでは、CLACKの伴走支援と向き合う担当者3名が話をいたしました。
日々現場で中高生と関わっているメンバーから伝えたいことを交わせた会となったため、要約してお伝えしたいと思います。
※記事化にあたり、単語・文章を適宜修正しています。


はじめに

CLACKは、貧困やさまざまな環境要因により困難を抱える中高生に、

  • STEP1:出会う

  • STEP2:学ぶ

  • STEP3:実践する

という3ステップで事業を実施しています。

それぞれの詳しい活動内容については、アーカイブ動画やCLACK HP、過去のnote記事等をご覧ください。
過去のnote記事例
STEP1:出会う よどがわベース
STEP2:学ぶ TechRunway
STEP3:実践する クエスト 

登壇者プロフィール

これまで、どんな中高生の変化を感じましたか?

ーステップ1の「出会う」で、中高生と出会う時の印象を教えてください。

井上
「出会う」のステップでいうと、プログラミング体験会やよどがわベースがあります。いわば中高生と初めて出会う場所ですね。ここに来る中高生は、大きく2パターンあると思っています。1つは、「なにか新しいことに挑戦してみたい」「部活や勉強をものすごく頑張ってるわけでもないから、自分が変われる機会が欲しい」のように考えてきてくれる子です。
2つ目が、元々プログラミングやデジタル、テクノロジーにすごい興味があったりして、ちょっとやってみたいなって思って来てくれる子ですね。

ーポジティブな要素が強いんですね。井上さんは10年以上子ども支援に関わっていますが、最近CLACKで出会う子供たちと、昔の子どもたちと違う点というか、時代の傾向などで感じるところはありますか?

井上
言い方は難しいんですが無気力というか、「こういうことしたい!」とかがあまりない子が増えたなっていう印象があります。何かしたいことがあるかというより、なにかを頑張るエネルギーがなさそうだなという印象を受けることが多くなったなと。
10年前ぐらいだと、経済的に苦しい家庭の子や家庭環境が複雑な子はエネルギーを持て余していて、夜遊び行くとかヤンキーっぽくなる子が一定いたなと思います。最近はそういう、エネルギーをどこかに爆発させるみたいな形で感情表現する子たちは減ったなという印象があります。

前田
なるほど。僕もZ世代なので気持ちが分からないこともないです。
昔よりはるかに子どもたちの選択肢が増えていて、増えすぎて何を選んだらいいか分からない。やりたいことをすごく求められるというか、自分の中に夢がなきゃいけないみたいな風潮が強くなってきてるのかなと。将来のこと考えなきゃ、やりたいことを見つけなきゃということはいけないことは分かるけど、どう向かっていいか分からない、自分の中にエネルギーがない、という感じは確かにあるかもしれないですね。

ーそんな子どもたちが、ステップ1を超えてステップ2「学ぶ」のTechRunway、TechRunway+に参加した時にどういう変化をしていくのか。これまでこういう高校生が印象的だったなみたいなところを、金子さんからお願いします。

金子
Tech Runway(プログラミング学習支援・キャリア教育教室)って、CLACKの事業の中でも比較的長い期間高校生と関わり続けるというのが特徴だと思います。その中でまず1つ目に、自己肯定感やそれを背景とした主体性の変化というところが大きいかなと思っています。
家が大変だったりいじめの経験があるなどの背景を持ってる子の中には、Tech Runwayに参加してはいるけど、やっぱり「自分なんて」って思って発言を遠慮しちゃったり、例えばプログラミングで分からないこととか聞きたいことを自ら表現するというのが苦手な子が多いなという印象です。そうした中でTech Runwayの3ヶ月という期間を通して、例えば大学生メンターが些細なことでも質問していいよ、という雰囲気を作ったりとか、気軽に雑談をすることで、メンターという存在を安心して頼って相談してくれるようになるという変化があります。学習面で言うと、分からないことがあった時に、メンターやエンジニアの大人の人を頼れるようになります。このように「ここにいていいんだ」という安心感を掴んでもらったり、その上で自分から発信していくというステップを踏める空間になっているのがすごく素敵だなと思っています。

2つ目はやはりプログラミング学習・キャリア教育から出る変化です。学習はあくまで手段で、学びを通して高校生自身が自分自身を再発見するというところが変化かなと思っています。例えばプログラミングをすごく気に入って凝ったゲームを作り出す子、3ヶ月間終えたけど、TechRunway+に進んでもっと頑張ろうみたいな子はもちろん、プログラミング中に「自分って意外とデザインや人への見せ方がうまいな」って自分を再発見したりとか、学習の計画を立ててペースを掴むことができるようになったりとか。プログラミングがただうまくなるというよりは、学習を通して「自分ってこういう特徴があったんだな」「こういうの得意だな」というのを発見してくれる子が多いのも変化の特徴だと思っています。

ー「学ぶ」のステップでは大きく変化が見られるんですね。そうした高校生がステップ3「実践する」に参加したときに感じる変化はあるでしょうか。

前田
僕が担当している「クエスト」という事業についてです。クエストは「実際に仕事をやってみよう」というステップなんですが、Tech Runwayなどを経てきてくれたからなのか、取り組むことに対しての責任感や主体性は強く感じるなと思っています。
例えば、もう2年くらいTech Runway、Tech Runway+に参加してくれている子がいるんですが、クエストでWEBサイトの制作を頼んだ時に、僕が思っていたよりも作業スピードも早かったし、「ここまでできました」という連絡もすごく細かめにくれました。なぜ早かったかというと、修学旅行と制作の納期が被っていたので、その子自身が納期に合わせて早め早めにスケジュールを考えて逆算して動いてくれていたんです。僕は修学旅行のことなどは後から聞いたので、自分でそこまで考えられるようになったんだなとすごくびっくりしました。こうした力は多分、Tech RunwayやTech Runway+の中で身に着けてくれたんじゃないかと思うし、そうして得た力を実践で発揮してくれるのはすごくいいなと思いました。

それぞれのステップで大事にしているポイントとは?

ーこうした子どもたちの変化を生み出していくために、あらためてそれぞれのステップで大事にしているポイントを話せたらなと思っています。ステップ2「学ぶ」Tech Runwayではどうでしょうか。

金子
やっぱり、生徒1人1人に合わせたステップをいかに用意していくかというのがとても大事になってくるかなと思ってます。習い事や塾などにあまり通ってない子も多かったりして、そうした子にとって、そもそも3ヶ月間学び続けるのってハードルが高いんです。
なので、ハードルが高い場所をどう楽しんでもらうかとか、小さくてもいいからいかに達成感を持ってもらうかという点で、メンターが高校生1人1人を見つめて導いていく必要があります。大前提として高校生と信頼関係を築く必要がありますが、大学生っていうのは高校生から見て「半歩先」の先輩くらいなんです。なので、全部の答えを知ってるわけじゃないからこそ、1人1人を見つめ、考え続けてもらうっていうのが大事にしてるポイントかなと思っています。

ースモールステップという点でいうと、中高生にとっての1番大きいステップって、やはり「CLACK(支援)に出会う」「デジタルに興味を持ってもらう」というところじゃないかと思います。そうしたステップ1「出会う」で大事にしているポイントって何でしょうか?

井上
さっき金子さんが言ってくれてたみたいに、習い事したことがなかったり学校以外のコミュニティに自分から参加したことがない中高生からすると、一歩踏み出すことにハードルがあります。そんな時に、そのハードル超えてみようか、と、誰が背中を押してくれるかがすごく大事だと思っています。
家庭環境が複雑な子とかだと、保護者の方も背中を押す時間や余裕がないこともあります。そうした中で、地域に根差して活動をしているNPOさんや行政、相談員さん、学校の先生、スクールソーシャルワーカーさんなど、既に一定の関係性がある人に「ちょっとこれ頑張ってやってみたら」「これ面白そうだよ」という一言を言ってもらえるかがまず大事かなと思ってます。なので、こうした方々としっかり連携をしていくということを重視しています。
あと、もちろん「デジタル」です。知らないデジタル技術に触れるときって、難しさや大変さを感じやすい。なので、プログラミングゲーム、VR、ドローンなどのキャッチーで楽しそうなコンテンツからはじめて、ステップ2の「学ぶ」まで、どうシームレスに繋いでいくかということをよく考えています。プログラミングをめっちゃやりたい!という子はもちろんなんですが、「ちょっとやってみたいな。でも1人じゃ踏み出せないな」という子が「これぐらいだったらできそう」と感じられるような活動にして、「出会う」のグラデーションを作っていくことが大事になると思ってます。

それぞれの事業でどんな未来を目指したいですか?

ーでは最後に、それぞれのステップの中で目指したい未来を話せたらなと思います。ステップ1「出会う」からお願いします。

井上
今まではCLACKの主幹事業であるTech Runwayに参加しませんか、という出会い方でしたが、もっとライトにデジタルを使える場所「よどがわベース」ができました。「まずやってみる」という経験ってすごく大事なんですが、経済的な理由だったり、なんらかの困難を抱える子たちって「やってみる」「チャレンジしてみる」ができてこなかった子が多いんです。だから最初の一歩を怖がっているのかと。
でも、よどがわベースでデジタルに触れることは、別に失敗してなんの問題もない、もはや失敗ですらないと思うんです。「とりあえず面白そう」とか「やってみたらちょっと向いてるかも」、から「もうちょっとやってみようかな」と思えるようなコンテンツやサポートをしっかり作っていきたいと思います。
あと、次のステップであるTech Runwayはがっつりの伴走支援なので、その伴走支援にどうグラデーションをつけて繋げていくか、という事業設計を頑張っていきたいですね。

ーでは、それを受けてステップ2「学ぶ」。Tech Runwayをどんな教室にしていきたいのか、生徒にどういう風に変わって欲しいのかというところを教えてください。

金子
Tech Runwayの3ヶ月間は地道な作業なので、激変と呼べるかは分かりません。もちろん3ヶ月通い切ってほしい、貧困による経験や考え方の不足が解消できるような設計にしたいとは思っています。
その上で、自分が最近こうなったらいいなってすごく思っているのが、高校生が大人になった時に、Tech Runwayで聞いたことやふと褒められた一言みたいなものがずっと心の中にあったら嬉しいなって。メンターは生徒を褒めるとか、生徒のことをじっくり見て少しでも気付いたことがあったら本人に伝える、というのを大事にしているんですが、それによって高校生が「自分を見ててくれた人がいるんだな」とか「こういう褒め言葉すごく嬉しかったな」と気付けるような体験が、高校生の将来にも影響していったらいいなと思います。
やっぱり中高生という年代に誰かからもらった言葉ってすごく記憶に残ると思っていて、例えば今日も高校生と一緒にIT企業見学に行ってきたんですが、Tech Runwayで出会った沢山の大人や大学生、一緒に参加している高校生によって、新たな気づきを得られる場所でありたいなと思っています。

ー最後に、ステップ3「実践する」の場ではいかがでしょうか。

前田
CLACKに関わってくれている子供たちが全員プログラマーやエンジニアになったらいいと思っているわけではないんです。ただ、「実際にやってみる」の1番最後として、CLACKが子どもたちに用意できる最終地点でありたいです。
社会の中で自分の身につけたものを使ってみるっていうところが大切で、それをやってみた上で本当に「やっぱりエンジニア向いてるかも」「プログラミングでお金稼いでみたいかも」と思ってもらえるならいいし、「ここまでやってみたけど、それよりあっちの方が向いてそう」とか「人に教えたり、サポートする役がいいな」と思ってもらってもいい。
ITや人と接した経験値を軸にしながら、自分でキャリアを選んだり広がったりしてくれると嬉しいなと思っています。
あとは、クエスト事業で実際にWEB制作をやっている高校生を他の高校生が見たときに、「自分たちとそんなに変わらない高校生がやっているんだ。じゃあ頑張ったら自分にもできるかも」という風に示していける場になるといいなと思います。

終わりに

今回のトークセッションでは、「デジタルの力と子どもたちの変化」をお伝え出来たかと思います。
「出会う」「学ぶ」「実践する」という事業の設計はもちろん、日々現場での子どもたち一人ひとりとの関わりを大事にして、2024年度も邁進していきたいと思います。

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