見出し画像

罪深い男

 ななは肉球命の男だった。

 常に両手両足のお手入れを欠かさない。

ので、ベッタベタになっていることも多々、ある。

 ある時、眠っているななのお手々の肉球が、私を誘惑してきた。

『ぷにぷにだよぉ〜』

『すっごい柔らかいよ〜』

『触ってごら〜ん』

 気がつくと肉球をぐりぐり触っていることに気づく。

 ななも、『なに!?』と起き上がり、『離せ!』とお手々を引っ込めてしまった。

 残された私の人差し指。

 微かに湿っていた。

 駄目だと分かっていても、その指を鼻に近づけて…………。

「くさっ!!」

 お酢の臭いというか、なんというか、すっぱい香りが鼻を突く。

 ……ってなことを何度か繰り返していた。

 

 恐るべし、ななの肉球。

いいなと思ったら応援しよう!