死期に向かうということ
治療を止めてから、三ヶ月余り。
後ろ足の腫れがなくなり、元の太さより細くなった。
免疫力が弱くなり、躰全体がベタベタになってしまった。
これは、なながもともと持っていたマラセチア(カビの一種)が悪化したものだと思われた。
マンマちゃんも食べる量が減り、残すことも増えてきた。
そのうち器から食べなくなり、手から少しだけ食べることが続き、ついには要らないという日が増えてきた。
カリカリのマンマちゃんを食べなくなれば、お湯でふやかしてみたり、ふりかけをかけてみたり、半生のマンマちゃんをあげてみたり、いろんなものを試してみた。
どれも少し食べては、要らないと食べなくなった。
大好きだったお芋のおやつもあまり食べなくなってきたので、小さな小袋のぶどうゼリーをあげてみた。
匂いを嗅いで一口食べると、美味しかったらしく、完食してくれた。
「食べる?」
二袋目を差し出すと、袋に噛み付いて離さない。
「なな、中身を出せないから、口開けて」
チュールのように押し出さないと、中身が出ないので、噛み付くななの口を離すのに必死だ。
それでも、何かしら食べてくれることが幸せだ。
なぜなら、ななの食べる量で、
「これだけ食べられるから死なない!」
と根拠のない自信を持てるから。
毎日、今日も食べてくれたと家族に報告しては、まだ大丈夫だと自分に言い聞かせていた頃が、懐かしく感じた。
ほんの数ヶ月前のことなのに。
太くてしっかりした前足が、今ではか細くなってしまった。
やせ細った姿を見るたび、ななに忍び寄る死期を意識せざるをえなかった。
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