ひっそりと…
まるちゃん。
マルチーズの男の子。
我が家に来たときは、片手に乗るくらいの小さな躰だった。
マルチーズとはこんな大きさなのだなと、超未熟児だったことを知らなかった当時の私。
まるちゃんは小さかったけど、気は強かった。
ご近所のゴールデンくんに向って、きゃんきゃん鳴いていた。
もちろん、ゴールデンくんは無反応。大人の対応だった。
トイレの場所も二週間くらいで覚えてくれた。
「まる、いくよ」
というと、すぐに私の後をついてきたまるちゃん。
膝の上に乗りたがり、よく乗せてとせがまれた。
私のお布団の中に、いつのまにか入りこんでいる。
この頃の毎朝の日課は、起きたらまずお布団を軽くパフパフすること。
そうすると、足元のどこかには小さな塊に行き当たる。
てんかんという病気はあったが、元気だったまるちゃん。
でも、老いは誰にでもやってくる。
寝てることが多くなり元気がなくなってきた。
てんかん以外に特に病気はなかったまるちゃん。
ある朝、いつものようにお布団をパフパフしても小さな塊に当たらなかった。
「あれ?……まるちゃんは?」
リビングに行くと、家族が一所に集まっていた。
「まるちゃん、死んじゃった」
「……昨日、マンマちゃん食べたよ?」
ソファの上で小さく丸まって動かないまるちゃんを触ったら、冷たくなっていた。
「うそだぁ……」
ひっそりと、ひとりきりで逝ってしまった。
「まる……、まる……」
だった八年しか一緒にいられなかった。
成犬になってもマックス1キロ弱にしかならなかった、超未熟児のまる。
朝一でお寺に頼んでお経を上げてもらい、家に帰り、段ボールに花やらマンマちゃんやらと一緒にまるちゃんを入れて、しばらく一緒に過ごしていた。
当時、近所にペットの火葬場はなかったので、遠方にあるお寺でペット供養もやっている所をみつけ、そこでお葬式と火葬をお願いした。
火葬している間、控室で姉が先に大泣きするから、私は泣けなかった。
最後の最後まで、泣けなかった。
遺骨はそのお寺で管理してもらうことにした。
私が、小学三年生から高校生になる頃の出来事だった。