国際バカロレア(IB)とは?現役IB生が解説!~純日本人がIB校に通う話 Part0~

この記事を開いた方々は国際バカロレアに興味があるということなのではないでしょうか。今回は、そんな方々向けに情報提供をしたり、IBコースでの学問、生活、友人関係など、実際に通ってみないとわからない点について、ゴリゴリ深掘りしていきます!


初めに

初めまして、この記事を書いたNOZYです!
まずは簡単に自己紹介をさせてください。

名前: NOZY(のーじー)
学年: 高校二年生(当時)
趣味: 動画編集、PCゲーム、記事の執筆(New!)
特徴: 両親、祖父母ともに日本人。海外居住歴無し。短期留学経験有。英検準1級、TOEIC 795点、TOEIC IP(学生向けTOEIC) 945点保持。国際バカロレア指定校に通う。

みなさん、どうぞよろしくお願いします!

IB(国際バカロレア)とは何か?

近年テレビなどでもよく耳にするようになった国際バカロレアとは一体何なのでしょうか?
国際バカロレアとは、
スイスに本部を置くIB協会(International Baccalauriate Organisation)が提供する教育コースの総称です。
難しい言葉を使いましたが、要は世界を賢くしたい団体の名前です。
IB協会(IBO)は「全人教育」というモットーを掲げていて、これは全世界の学生が全世界の大学に進学できる教育を差別なく与えるというIBの特徴を表現しているのだと私は考えています。国際的なリーダーを育成するというキャッチコピーにも個人的には惹かれましたね。

しかし、教育コースの総称とは何なのでしょうか?
簡単に例えると、一般的に中学校を卒業したら通う"高等学校"と"高等専門学校(高専)"では全く違うことを勉強しますよね?IBは、それらの別バージョンのようなものです。
幼稚園や小学校の代わりにIBのプライマリーイヤーズプログラムを、
中学校の代わりにIBのミドルイヤーズプログラムを、
高校、高専の代わりにIBのディプロマプログラムをそれぞれ受講する。
といったように、高校の理数科、商業科のような分類とは少し違います。

ディプロマプログラム(DP)とは何か?

この記事シリーズを読んでいただくにあたってディプロマプログラム(DP)について理解していただきたいので本当に軽く解説を。
DPとは、筆者の受講しているプログラムで、日本での高校過程にあたる16歳から18歳の学生が対象となっています。
単に"ディプロマ"というと、それはDP卒業時に取得できる卒業証書を指していて、多くの海外大学への切符となります。
コースそのものは一般的にIBDPと呼ばれ、私の通う学校や他のいくつかのIB校ではPre-IB、DP1、DP2の三年間のプログラムとなっています。

ここからIBOの教育プログラムについての詳しい話をすると趣旨がずれるので割愛します。詳しく知りたい方はIBOの公式ページWikipediaを参考にしてください。

IBDPって結局何を学ぶの?

皆さんが一番知りたいのはここですよね。お待たせしました。やっとこさ話を始められます。
私がIBDPを二年間経験して出した結論として、ここで学べることは、実用的な技能や国際的なリーダーシップ、そして自律の力です。
具体的には、レポートをまとめる能力、プレゼンをする能力、グループで学習する能力、自分で予定を立てて計画的に課題を終わらせる能力、教師とメールや会話を通してフォーマルな会話をする能力などです。
将来大学に進学したり社会で生きていくために必要になる

IBDPでは、これらの技能を6つの教科+IB coreという構成のカリキュラムによって獲得していきます。
ではここから詳しく見ていきましょう。

6グループ方式の教科

IBでは6つのグループに分けられた教科からそれぞれ一つを選び、合計6つの教科を履修します。その中でも三つをハイレベル(HL)、もう三つをスタンダードレベル(SL)とすることを選び、得意分野を伸ばす授業が受けられます。では、そのグループについて詳しく見ていきましょう。

  • Studies in language and literature

  • Language acquisition

  • Individuals and society

  • Sciences

  • Mathematics

  • Arts

Group1: Studies in language and literature

一つ目のグループ、言語と文学は言語A(Language-A)とも呼ばれ、生徒の母語による文学の分析や言語を深めることを目的とした学びがメインです。いわゆる"国語"ですね。
私はJapanese-A SLを受講しています。つまり、母語である日本語で文学を分析するスタンダードレベルの授業を受けているわけですね。もちろんJapanese-A HLやEnglish-A HL/SLも存在します。

Group2: Language acquisition

二つ目のグループ、言語習得は言語Bとも呼ばれ、第二言語の習得を目的としています。いわゆる"英語"みたいな授業です。
私はEnglish-B HLを受講しています。HLなのは学校がSLを提供していなかったからです。ちょっと残念ですが、まあ背に腹は代えられません。これから完全なカリキュラムを提供できる学校が増えることを願うばかりです。
英語話者はJapanese、Chinese、Spanishなどの言語からさらにHL/SLを選択し、受講します。うちの学校はEnglish-B HLとJapanese-B HLしか提供していません。

Group3: Individuals and society

三つ目のグループ、個人と社会はいわゆる社会科です。経済(Economics)、歴史(History)、地理(Geology)、ビジネスマネジメント、哲学(Philosophy)、心理(Psychology)、国際政治(Global politics)など、幅広い学問を学べるんだぞ! 
私の学校は経済学 HL/SLと、なぜかわかりませんが元々は科学分野のESS SLという教科から選べます。私はEconomics HLを選択しました。経済なんて学んでおいて損はないですからね。(個人の意見ですが。。。)

Group4: Sciences

四つ目のグループ、科学はわかりやすいです。物理(Physics)、生物(Biology)、化学(Chemistry)、Environmental Systems and Societies(ESS)、コンピュータサイエンス、デザインテクノロジー、スポーツサイエンスなどがありますが、案の定私の通う学校は物理 SL、生物 HL/SLしか提供していません。化学はなぜかGroup6扱いです。
私は物理が大好きなのでPhysics SLを受講しています。HLが提供されていないのはちょっと勘弁してほしいですね。入学する前に知っておくべきだった。。。皆さんはしっかり調べてから入学しましょう。
ESSはIB特有の教科です。この教科についてしっかり解説すると一本の記事になってしまうので、また今度の機会に紹介しようと思います。

Group5: Mathematics

五つ目のグループ、数学もあからさまですね。Analysis and approaches(AA)とApplication and interpretation(AI)という種類があり、選択制のようですが、私の通う学校は問答無用でMath-AI HL/SLです。これらの違いは微分積分を勉強するか否か、、、だったと思います。詳しく知りたい方ははくまいさんという方が書いたNoteがありましたのでそちらでご確認ください。
私はMath-AI HLを受講しています。ド理系なのでバチバチに勉強できるAAを受講したかったのですが、まあ、提供されていないので、仕方ないですね。

Group6: Arts

六つ目のグループは芸術です。ダンス、映像(Film)、音楽(Music)、映画(Theatre)、ビジュアルアートという種類がありますが私の通う学校で提供されているのはFilm HL/SL、Music HL/SLとなぜかChemistry SL。
私は小学生のころから動画を制作していたこともあり、スキルアップにFilmを履修しようと思っていたのですが、よく大学の募集要項を調べると、Physics "SL"では応募できない理系大学が多いようで、しかしそんな大学もダブルサイエンス(科学教科二つ)を履修すれば応募できる所が多いということがあり、Chemistry SLを履修しています。
Physics HLさえあればFilm SLを受講できたんだ、、、くそう。。。

IB Coreとは何か?

IBを語る上で最も特徴的で異彩を放っているのがこのIB Coreです。このCoreは、ひとつの授業とふたつの課題で構成されています。それがTheory Of Knowledge(TOK)、Creativity, Activity, and Service(CAS)、そしてExtended Essay(EE)です。これらは一つとっても長い記事になってしまうほど奥が深いのですが、今回は上っ面を軽くだけ解説します。

TOK

Theory Of Knowledgeは、直訳すると知の理論となります。これだけでは分かりませんよね。聴くより体験する方がわかりやすいでしょう。今から、TOKがどんな授業かというのを皆さんに体験して頂こうと思います。
いくつかTOKの授業で訊かれそうな質問と予測回答を見てください。隣に優秀な生徒が座っていると思って読み進めてください。

Tutor: 空は何色ですか?
Student: 水色です。
T: なぜ空は水色なんですか?
S: 空気が水色以外の色を吸収して、水色だけが目に届くからです。
T: その知識の根拠を教えてください。
S: 本で読みました。
T: その本が書いてあることが正しいことはどう証明しますか?
S: 多くの科学者が正しいと言っています。
T: では、多くの人が正しいと考えることが正しいことですか?例えば世界で最も多い信者数を持つキリスト教は正しく、イスラム教や仏教は間違いであると言えますか?
S: 言えません。。。そもそも宗教の話と科学を混ぜて考えるのは間違っているのでは?
T: では科学と宗教の違いはなんですか?
S: 現実世界を研究しているか、空想世界を研究しているかですか?
T: それは危険な考えです。第一に、神を空想だと言いきれる証拠はありません。第二に、科学が空想でないという証拠もありません。しかし、科学が根拠に基づいた学問で、とても信頼されているものであるのも事実です。科学を科学たらしめているのはなんなのか、議論してみましょう。

どうでしたか?TOKは、知ることとは何か、正しさとは何か、視点とは何かなど、哲学的な理論を学ぶ授業です(だと著者は感じました)。個人的な分析では、国際的なリーダーシップを育てる上で大事な、物事を多くの視点から判断する技能を身につけることが目的だと考えています。
課題の難易度も高く、とても理解するのが難しいですが、その分ほかの学校では得られないスキルを得られる良い機会だと思います。

CAS

CASとは、創作(Creativiry)、活動(Activity)、奉仕(Service)をする課題です。提出期限に縛られる課題ではありませんが、生徒自らが例えば動画制作、部屋の掃除、筋トレ、スポーツ大会への参加、ボランティア、献血などを行う予定を立てます。そしてそれをしっかりと企画、実行し、レポートに纏めるという内容です。これは生徒の自発性、計画性、忍耐性を育てる目的で行われています。実際に私はこのnoteをCASのCreativity, Serviceの一環として行っていて、裏では記事と並行して提出するためのレポートを書いています。この記事の更新が続いていれば、忍耐しているなぁというふうに思ってください。

EE

EEとはExtended Essayの略で、あえて訳すなら拡張論文です。わかりやすい似た課題で例えると大学の卒論のようなものですが、それよりも短いです。長さは英語4000語以内、日本語8000字で、生徒が自分で決めた教科のトピックについて研究して、その結果をエッセイの形式で纏めるものとなっています。余談ですが、私の論文テーマは静止軌道衛星の安定性についてです。監督のPhysics担当の先生と一緒に研究テーマとそれに準ずる研究方法を模索し、何とか形になってきました。
EEについては記事一本でも収まりきらないほど語れることがあるため、また今度書こうと思います。乞うご期待ください。

まとめ

今回はIBDPの教科システムについて解説しました。IBの入学から卒業までの過程は険しい旅のようなものです。学校の先生はよくIB journeyと呼んでいます。しかし、その旅を経験した人は確実に強くなっているとIBの先生は言います。この記事は皆さんのそんな旅を支えるしおりになればいいと思います。IB生の皆さん、IBを志す皆さん、そしてその保護者の方々。一緒に頑張って道を歩いてゆきましょう!

これからの記事の内容

これから出来たら毎週ペースで、IBについての詳細な情報から、日常の雰囲気が伝わるしょうもない日記まで多種多様な情報を皆様にお届けしたいと考えています。
例えば。。。
IB校に入学するためにはどうすればいい?
IB生の雰囲気ってどんな感じなの?
IBの生存術とは?
先生って日本語を喋るの?
宿題の量は?
部活は?
恋愛は???
など、たまに本当にどうでもいいことを更新するかもしれませんが、暖かく見守っていただけると幸いです。

お知らせとお願い

私のYouTubeチャンネルでは、どちらも純日本人の現役IB生と新IB生が対談形式でこの記事よりも映像を交えて解説しています。
そちらもご確認ください。

最後までお読みいただきありがとうございます。今日はここで休憩しましょう。

この旅の続きはまた、次回の記事で。

参考文献

Wikipedia Contributors. “国際バカロレア.” Wikipedia, Wikimedia Foundation, 17 Feb. 2024, ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E3%83%90%E3%82%AB%E3%83%AD%E3%83%AC%E3%82%A2. Accessed 20 Feb. 2024.

International Baccalaureate Organization. “DP Curriculum.” International Baccalaureate®, 22 Aug. 2014, www.ibo.org/programmes/diploma-programme/curriculum/. Accessed 20 Feb. 2024.

‌はくまい. “【IB DP】Mathematics AA? AI? 違いを現役IB生が語る.” Note(ノート), note(ノート), 10 Sept. 2022, note.com/zundamochii__/n/n127936fdf2b9. Accessed 20 Feb. 2024.


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