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NOZUの独り言#3 母のタバコ
母は喫煙者だった。
喘息持ちの自分を気遣ってホタル族(ベランダで吸う人)。
幼少期からその姿を見てきたが、たまたま喫煙している時に母の部屋に入るととても嫌そうな顔をされた。
その瞬間がとても嫌いだったし、幼い自分には喫煙がなにか秘め事のように見えていた。
今でこそ「家族だからこそ気を遣う」という心理がよくわかるが、後ろ暗いことが家族の中にあるということに言いようのない感覚を持っていたことは確かだ。
今年に入ってから、「何か新しいことをやってみよう」と思い色々なことを始めた。
喫煙もその一つだ。一人暮らしになっていなければ、絶対に始めなかっただろう。
なぜ始めようと思ったかは正直わからない。「なんとなくかっこよく見えそう」とか、俗っぽい動機だったと思う。
同時に母に隠し事ができてしまった。あれだけ喘息を気にかけていたのに、わざわざ自分から自らの肺を痛めつけることをしているのだから。
しかし不幸なことに、タバコは自分の好みにあっていたようだ。コンビニ銘柄を試して回り、今はLARKのKSと赤マルをよく吸っている。
しかも自分は凝り性なので、満足いくまで吸い方やら銘柄を研究し始めてしまった。一本吸うたびに肺や脳が有害物質で汚染されていくのがわかるようだ。
だが思えば、母が隠し、吸っているのに嫌っていたタバコを吸うことで、自分は母と遠距離で対話しようとしているのではないか。
あるいは、タバコを吸うことで、「自分はあなたのようになれているだろうか」という問いを自らと母に投げかけようとしているようにも感じる。
送り出してくれた母への感謝を、煙に乗せて届けたい。