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Vol.7① 法学徒の選択 〜2015年冬、本郷〜

Vol.6④ 法学徒の模索 〜2015年秋、本郷〜

「上位互換が何人もいる」環境

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▲ 赤門の先に建つ東京大学医学部本館と美しい洋風庭園

冬学期はどんな科目を取られたのですか?

佐々木(以下略) 必修の法律科目には、民法第3部、民事訴訟法、刑事訴訟法などがあったんですが、それらは全部来年以降に回そうと思いました。

で、この学期に新たに履修したのは、高齢者法、ロシア・旧ソ連法、憲法演習でした。

選択科目で、ということですか?

そうです。この3つはどれも選択科目です。

でもさすがに必修の負債がかさんでいるので、冬学期の学期末試験では憲法第1部と政治学も受ける予定にしました。
この2つは2年生のときに取り残していた必修科目だったので。

合計で5つということですね。
先ほどおっしゃっていた「時間割の密度を下げる」という作戦でいかれると。

インタビューVol.6② 参照

そうですね。

ただここでちょっと面倒だったのが、憲法と政治学は駒場2年生の配当科目なので、講義も駒場で行われるんです。
受けられる講義はできるだけ受けたかったので、よく本郷と駒場と仕事場を行ったり来たり移動してました。

いや、面倒とか言っちゃいけないですね、そもそも2年生のときに取れなかった自分のせいなので(笑)。

憲法演習というのは、必修科目の憲法とはまた違うんですね?

そうなんです。
演習科目は少人数でするいわゆる「ゼミ」なんですが、学期ごとにどの演習を取るか、あるいは取らないかを自由に選択できるんです。

このときは、年度末に憲法第1部の試験を受けるつもりでしたから、演習も憲法を選びました。

なるほど、ゼミでも憲法をじっくり勉強できると試験勉強にもなって一石二鳥ですね!

いやあ、そのつもりだったんですけどね……。

ゼミは私には高度すぎました。
先生ももちろんですけど、ゼミ生の皆さんがあまりに優秀で、議論している内容もちんぷんかんぷんでしたし、何を発言していいのかもわからなくて。

ゼミは毎回3時間以上かかってたんですが、その間だいたい下を向いて座ってました(笑)。

一度は発言しないといけない決まりがあったんですけど、自分だけピント外れのことか、そうでなくてもすごくレベルの低いことを言ってたと思います。

いや、きっとそんなことないと思いますけど。

でもゼミって3時間以上かかるんですか!
それはすごい緊張感でしょうね。


本当に毎回冷や汗ものでした。

なんとなく興味で法学部に来てしまったけど、こんなに優秀な人たちの中で明らかに自分のレベルは低いし、しかも必修科目はぜんぜん取れてないしで、あれっ法学部来てよかったのかこれって、もしかして卒業できないんじゃないかって、一時期は真面目に思ってました。

ああ……。
でも、先ほどのお話にもあったように、勉強や卒業に不安を抱えていらっしゃる学生さんは他にも多かったのかもしれませんよ。

インタビューVol.6① 参照

でも、他の優秀な学生を見ていてもきりがないんですよね。
この大学は、おそらく99%の東大生にとっては、「自分の上位互換が何人もいる」環境なんだと思うんです。

ただ優秀どころか、きわめて優秀で非凡な方があたりまえにたくさんいらっしゃる大学なので、周りと自分を比べるのは本当に意味がないんだなっていう実感が強まりました。

実際、人と比べてどうのって言ってる学生はほぼ見たことがなくて、多くの方は横ではなくて前や上をまっすぐ見ているというか、自分の勉強に集中していらしたようでした。

私もそうしようと思ったんです。

すばらしい!

それで、ゼミでも、わからない恐怖心を抱えて過ごすのではなくて、ちょっとでもわかるところを、「そうそう、知ってるよ! わかるわかる、そうだよね!」みたいに楽しもうと思いました。
いやもちろん声には出さずに心の中でですよ、心の中で!(笑)

まあ、ただの気の持ちようなんですけどね(笑)。

なんか、「よかった探し」みたいですね(笑)。
こんなレベルでした(笑)。

いえ、すごく面白い切り替え方だと思います!

それと、優秀なゼミ生の皆さんが何を考えてどんな動きをしているかを見て、そこからも勉強させてもらおうと思いました。
別に、じっと観察していたとかではないですけどね(笑)。

皆さんひとりひとりの考え方の道筋や論理展開のやり方が違うので、それらをなぞろうと思って、自分の中に落とし込みながら、頭の中で反芻しながら発言を聞いていました。

そういう見方、勉強のやり方としてとても参考になります。

このゼミと関係あるようなないような話で、ひとつ思い出したんですけど……。

ゼミでは毎回順番に発表を担当するんですが、発表者はあらかじめ皆さんに配布するレジュメを作らないといけないんです。

で、私の担当回のレジュメ提出の締切の前日が銀英伝のイベントだったんです。
※サントリーホールにて開催されたイベント「銀河英雄伝説 ~Forever Yang~」

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▲ 荘厳なオーケストラ演奏と共演した「銀河英雄伝説」イベントでユリアン・ミンツ役を演じる

うわー、大変じゃないですか!

華やかなイベントでしたけど、レジュメができてなかったので終わったらまっすぐ帰宅しました(笑)。
イベントには友人が何人も観に来てくれて、後で楽しく食事などしたらしいですけど、私は「憲法があるので。じゃっ」って(笑)。

それは……(笑)。
後ろ髪を引かれながらご帰宅、だったのですね(笑)。


おとなしく文献を読んで朝までレジュメ作ってました(笑)。

一大イベントへご出演されてスポットを浴びて……という華やかなお立場から一転して、深夜おひとりで法律学のレジュメ作成というのが、またどなたにもできる体験ではないですね(笑)。


お読みいただいてありがとうございます。
次回に続きます!
Vol.7② 法学徒の選択 〜2015年冬、本郷〜

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↑ 本noteの元記事

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