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Vol.7④ 法学徒の選択 〜2015年冬、本郷〜

Vol.7③ 法学徒の選択 〜2015年冬、本郷〜

成人式より美術館


ロシアといえば、駒場で印象的だった授業なんですが、2年生のときに、「ロシア東欧表象文化論」という授業を受講しました。
これは法学部の授業じゃないので自分で取ろうと思って履修したんですけど。

ロシアの文化や芸術をスライドで見ながら紹介してくださるという少人数の講義でした。

その時期に、神奈川の美術館でロシア・チェコのアニメーションみたいな展示があったんです。
それを、「皆さん、よかったら観に行かれたらどうでしょう?」と先生がおっしゃって。

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▲ 海岸際に建つ神奈川県立近代美術館葉山の中庭からは富士山も眺望できる

授業の課外活動みたいな感じですか?

そうですね。
団体見学の日が授業日でなく祝日だったのと、東京から行くのにけっこう時間がかかる場所だったので、参加は任意でしたけど。

せっかく先生が紹介してくださったんだし、行ってみたかったので喜んで行きました。
美術館は普段からよく行くんですけど、こういう展示は自分では行かないタイプだったので、新鮮で面白かったです。

先生も現地で待っていてくださって、お薦めの展示を教えてくださったりもして。

そんな楽しい課外授業もあるんですね!

で、その日が、1月何日だったか、ちょうどその年の成人式の日だったんです。

先生は課外授業のスケジュールを設定した後にそれに気がつかれて、私たち受講生に、「(皆さんが)成人式に行けなくなってごめんなさい」としきりに恐縮されていました。

私は成人式には出る予定がなかったので(笑)、普通に美術館に行ったんですが、現地で先生にお会いすると、「佐々木さん、成人式に行けなくしてしまって本当にごめんなさい」とおっしゃるんです。

とっさになんとお答えしてよいのか、「大丈夫です先生、成人式より美術館ですよ!(ガッツポーズ)」なんて、つい訳のわからない返しをしてしまいまして……(笑)。

あはは。

いや、その場で自分の身分を明かすのもなかなか難しかったんです……。

先生は本当に良い方で、授業でもとてもお世話になったので、私の成人式のことをあんなに気にさせてしまって今も申し訳なく思ってます。

普段の授業の後も芸術のお話を伺えたり、私の素人意見を聴いていただいたりと、とてもかわいがっていただきました。
ロシア文学や美術の研究者としてご活躍の、鴻野わか菜先生とおっしゃる方なんです。
今も先生のお名前を拝見するたびに嬉しくなります。

昨年はNHKラジオの「ロシア語講座」の講師を担当されていらして、私も先生の声が懐かしくて聴いてました。
先生の解説のおかげでロシアについての知識がまた少しつきました。
ロシア語はわからないままですけどね(笑)。


すごいなあ……。
佐々木さんが、ひとりの学生さんとして熱心に真面目に勉強に取り組まれて、それが先生方にも伝わって、先生とすごく良い関係を築かれて……。


東大は、佐々木さんが「声優・佐々木望」としてでなくいられる場所だったんでしょうね。
声優さんとしての場所もしっかりお持ちでいながら、それ以外の場所もお作りになって。


それってすごく貴重ですよね。

そうなんでしょうね。
普通の学生のひとりとしてそこにいられたことは、本当に貴重な体験だったと思います。

その幸せはたしかにありましたね。

⁂ ⁂ ⁂

“Age is just a number.”


私は歳に合わないくらい幼稚だと自分で思ってるくらいでして、そもそも自分の年齢に対する意識が希薄なんです。

まあ、それはおいておくとしても、年齢を何かの判断材料の出発点に置くのはもったいないように思います。

Age is just a number.(年齢っていうのはただの数字さ)というフレーズもありますよね。

実際にそういうフレーズがあるんですね。

誰かがこれから起こすアクションは、まだ現実に達成されていないしこの世に存在もしていない行動で、未来の未知のものですよね?

その未知のものに対して、最初から年齢というファクターを代入しなくてもいいんじゃないかと思うんです。
現実に年齢制限が規定されているものは別としてですけど。

ええ、たしかに。

自分が何かアクションを起こしたいと思ったとき、その妨げになるものっていろいろあり得るかもしれないですけど、肉体的なこととか規則的なこととか、その他どうしようもないこと以外で、実際に年齢自体が妨げになる場合ってどれだけあるんだろう、と思ったりします。

実際は年齢そのものより、人目を気にしたりってことの方が多いのかもしれないですね。
そうじゃなくありたいですけど……。


ただ、年齢は関係ないといっても、自分で自分の手綱を握っていられるというか、選択できる自由を自分が持っているということは、恵まれた環境にいるということですから、そこには感謝しないとですよね。

環境への感謝……。
本当にそうですね。
つい忘れがちなことかもしれないですけど。

次回は、いざ冬学期の試験へ!


お読みいただいてありがとうございます。
次回に続きます

Vol.8 法学徒の脇道⑴ 〜2014年冬、駒場〜

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↑ 本noteの元記事

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