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Vol.13① 法学徒の発見 〜2016年夏、本郷〜

Vol.12② 法学徒の基底 〜2016年夏、本郷〜

東大法学部の試験対策システム

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▲待ち合わせの時間まで商法判例集を読む

試験勉強は、実際、皆さんどのくらい前から取りかかられるんでしょう?

佐々木(以下略) 基本的にこの学部では普段からたくさん勉強してる人が多いんですけど、期末試験期間の前になると、そういう人の存在があちこちで目視できるようになるんです。

試験前には、学内でも本郷界隈でも、法学部生はいろんなところで六法や判例集を開いて試験勉強をしてます。

試験期間はどのくらいの長さなのですか?

試験期間自体は、夏学期が7月に2週間くらい、冬学期は1月2月にかけて3週間くらいです。

試験前からしたら1ヶ月以上プレッシャーが続くのですね。
勉強は、法学部の学生さんは六法と判例集が必須なんですね?


六法は絶対ですね!
判例集は、いつでも調べられるように手近にあると望ましいと思います。

それと、東大法学部には、試験対策として、学生が協力しあって講義録を共有するシステムがあるんです。
一部の科目でですけど。
だから、タブレットやPCで講義録を読んで勉強する人も多いです。

そんなシステムがあるんですか!

大学が作ったシステムじゃなくて、学生によるものなんですけどね。

システムへの参加は任意なんですけど、参加者は、自分が割り当てられた回の講義の完全な書き起こしデータを作るんです。
それをみんなで共有するという。
集合知みたいなものですね。

欠席した講義でも、講義録があれば試験勉強がしやすいので、私も加入して書き起こしを作ってました。

なるほど!
書き起こしを作った人は他の人が作った書き起こしを読める、ということなんですね?


そうですそうです。

私は大学に行くこと自体が楽しかったので、講義も出られるときは全部出てましたけど、ひとつの科目の講義が一学期に10数回とか20数回とかあると、どうしても仕事で何回か出られないんですよね。

そうなると、欠席した回が歯抜け状態みたいになるので、そういうときに後から書き起こしを読んで補完するんです。

東大法学部で長年続いているシステムらしいです。
実際にずいぶん助けてもらいました。

試験なのに、お互いがライバルになるのでなくて、皆で団結して協力しあうなんてすごいですね!

やっぱり、科目数が多くて、それぞれの範囲も広いし試験も難しいし単位認定も厳しいので、協力し合って乗り切るのがみんなにとっての最適解だからなんでしょうね。

うん、賢いですね。

でも、ごくたまに、自分は書き起こしの義務を果たさないくせに人の書き起こしはちゃっかり手に入れてる人もいて、道義的な責任を問われてます(笑)。
いわゆる、「フリーライダー」、ただ乗りする人ですね。
やっぱりどんな共同体にもいるよねそういう人、みたいな(笑)。


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勉強の場所を探して



普段はどんなところで勉強されていましたか?

だいたい、大学の中ですかね。
気持ち的にも、その方が学生モードで勉強に入りやすいので。

学生モードと声優さんとしてのモードを分けて、大学では学生としての佐々木さんでいらっしゃったんでしょうか?

実際は、そんなにきっちり分けられなかったですね。
講義に出ているときは他のことはしてないですけど、それ以外は、大学の中にいても仕事関係のことをけっこうやってました。

もちろん大学で声の収録などはされないにしても、それ以外にもお仕事関係のことはきっといろいろとありますよね。

そうですね。
原稿を書いたり、電話やPCで遠隔打ち合わせをしたり。

収録は、駒場時代もそうでしたけど、講義を途中で抜けてスタジオに行って、また大学に戻って講義に出たり勉強したり、というパターンでした。

大学からお仕事の現場に行かれるだけでも大変なのに、お仕事が終わってまた大学に戻られるなんて……!

ああええ……。
正直に言いますと、仕事が終わったらもう大学に戻るのが面倒で、そのまま仕事の関係の人とごはんを食べに行ったりしたことも何度もあります、実は(笑)。

講義以外ではどこで勉強されました?
図書館に行かれたり?


ええ、勉強場所としては大学の図書館が多かったですね。

東大には総合図書館もあれば学部ごとの図書館もあって、他の学部の図書館も利用できるんです。
今日はこの学部の図書館、今日は法学部図書館、今日は総合図書館、みたいに、日ごとにいろいろ行ってました。

憲法の講義を聴くために週一回は駒場(キャンパス)にも行ってたので、その日は駒場図書館で。

学部ごとに図書館があるなんて、さすがというか!
きっと蔵書の数もものすごいのでしょうね。


そうですね、洋書でも雑誌でも、本は学内でなんでも探せますよね。

学生になるまでは、書店が「徘徊と渉猟」の場所でしたけど、大学の図書館も新たに「徘徊と渉猟」場所になりました(笑)。
インタビューVol.9① 参照

スタインベックの戯曲集をずっとずっと探してて、古書でも入手が難しかったんですけど、東大に入学してすぐに行ってみた駒場図書館の開架に普通に置いてあってびっくりしました。
すごいな、本当になんでもあるんだ大学図書館って、と思いました。

それはもう、東大の図書館ですものね!

図書館にいると、たまにふと悲しくなります。



いや、これだけの本が揃ってるけど、自分が一生のうちに読める本は、どんなにがんばってもここにあるうちのたかだか一角ぶんくらいなんだろうなって(笑)。

わかる気がします(笑)。

大学の図書館の雰囲気がすごく好きなんですけど、勉強場所としては、他に学内をけっこう探しました。

法学部には学生用ラウンジがあるので、そこにいることもありました。
でも、ラウンジなので当然なんですけど、打ち合わせやディスカッションをしてる人たちもいるので、静かなところで勉強したいときは他に行きました。

たしかに。
法学の勉強は、静かに一人でする勉強と、何人かでディスカッションしながらする勉強があるのですね。


試験前は図書館もラウンジも混むし、周りがみんな法学部生の中で勉強するのもなあと思って、キャンパスの中でも法学部から遠めの場所に行くこともありました。

試験直前期は、どんなに遠くに行っても必ずといっていいほど法学部生がいるんです。
学内のどこにでも、本当に!(笑)

机の上に六法を広げてるので、チラッと見ただけでその人が法学部生だってすぐわかるんですよね。

本の形とか色とかを遠目で見て、あっ六法だなとわかるんですね?

法学部生なら絶対わかりますね、六法の姿形は(笑)。

でも、その人もきっと、他の法学部生がいないところで勉強しようと思ってせっかく離れたところを探して来てるはずなのに、そこに私がきてしまうわけで。
内心「あっなんかすまん。後から来ちゃって」みたいに思います(笑)。

で、もしかしたら向こうも、「あっなんかすまん。先にいちゃって」みたいに思ってるのかもしれないですね(笑)。



お読みいただいてありがとうございます。
次回に続きます!
Vol.13② 法学徒の発見 〜2016年夏、本郷〜

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↑ 本noteの元記事

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