Vol.5③ 法学徒幼年期 〜2015年夏、本郷〜
来世は世界史の子に?
▲ 遅くまで勉強して帰る学生を優しく包む校舎の灯り
それは……。
けっこう深刻な状況だったんですね。
とはいっても、ちゃっかり楽しんでもいましたよ!(笑)
試験期間中に、学内学外の法学部の教授や研究者の方がたくさんいらっしゃるシンポジウムが開催されたんです。
アメリカ外交に関するもので、アメリカの大学教授がゲストスピーカーで登壇されていて。
学部生でも参加できると聞いたので、行ってきました。
ちょうど、その時間は必修の「民法II」の試験の最中だったので、「ああみんなは今ごろ民法なのに自分はブッチ野郎だ……」とちょっと後ろめたかったですけど(笑)、講演はすごく面白かったです。
試験はまた受けられますけど、その講演はきっとその機会しかないですものね!
ありがとうございます(笑)。
そういえば、駒場でスペ語に浸かっていたとき、たまたま「ローサのぬくもり」というスペイン映画を観に行ったんです。
行ってから知ったんですが、日本語字幕がなくて(笑)。
オールスペイン語でした(笑)。
ええー!
じゃあ培ってこられたスペイン語力を発揮して?
それがさっぱり聴き取れませんでした(笑)。
ところどころ単語がやっとわかるくらいで。
でも、観ていればなんとなくストーリーはわかりました。
その日ちょうど会場に主演の女優さんがいらしていて、上映の後に懇親会があったんです。
おおー。スペインの女優さんですか?
そう、アナ・フェルナンデスさんというスペインの女優さんです。
せっかくスペ語を勉強してるので、勇気を出して話しかけてみました。
スペイン語で。
すごい! 実践ですね!
通じたんですよね?
ちょっとわかんないです(笑)。
スペ語作文で培った文章能力を駆使して、と思ったんですけど、やっぱり人と話すのとひとりで文章を作るのとでは全然、ぜんっぜん違いますね。
なんとか、自己紹介と、映画の感想と、これからもご活躍を的なことを言いました。
自己紹介はなんておっしゃったんですか?
“Soy actor de voz.” だったかな?
スペ語から遠ざかって久しいのでもう覚えてないです(笑)。
たぶん、めちゃくちゃなブロークン・スパニッシュだったと思います。
でも “Muchas gracias.” と言っていただけました(笑)。
たぶん絶対気を遣ってもらってる(笑)。
でもすごいです。
スペイン語を実践で使える機会なんて、そうそうないでしょうし、そのチャンスをしっかり逃さずトライされていて。
駒場時代には、他に、英語落語の講演を聴いたりしました。
落語家の立川志の春さんがキャンパスにいらしてくださったんです。
英語落語?
ええ。
すごいですよね、古典落語を英語に翻訳してそれを演じられるんですから!
超絶に面白かったです。
自分も日本語と英語で同じ役を演じたりしたことがありますけど、落語の場合はセリフと違って、ずっと長くひとりで喋るわけでしょう?
古典落語なのでストーリーももちろん面白かったですけど、志の春さんのスキルは、パフォーマーとしても英語スピーカーとしてもエンターテイナーとしてもすごいなあと感嘆しました。
それは存じ上げませんでした。
落語もグローバル化してるんですね!
この講演は、もともとは留学生向けに日本の伝統芸能を観せてあげたいという企画だったらしいんですけど、留学生でなくても参加していいことにしてもらえたので、東大には感謝してます(笑)。
落語好きなんですよ。
一時期、三代目三遊亭金馬師匠にはまっていて、自分でもちょっとやってみたりしてました。
声だけでですけどね。
すごい! 落語もお好きで、ご自分でもとは!
お好きなものが多いんですね!
ご興味の幅が広いというか……。
そのひとつひとつについて詳しくお伺いしたいところですが、それはまたの機会にお願いします!
そうですね(笑)。
こうして思い出してみると、我ながらいろいろなところに顔を出してますね(笑)。
学生になったからフットワークが軽くなったのかな(笑)。
いや、学生はたくさんの見聞の機会を大学や社会から与えてもらえてる、ということなのかもしれないですね。
その通りだと思います。
大人になると、なかなか自分で探して動くというのは難しかったりしますものね。
だから学生さんは、そういうチャンスを存分に活用していただきたいですよね。
はい、ありがたく存分に活用しました(笑)。
さっきお話ししたアメリカ外交のシンポジウムは学内であったんですが、そういう学内での講演会系にもいろいろ行きました。
同じ夏にあった、アメリカ連邦最高裁のロバーツ長官とハーバード大学のラザルス教授の講演会は参加できて感動しました。
そんなものすごい方々がいらっしゃるんですね、東大に!
▲ ギンズバーグ連邦最高裁判事の半生から多くを学ぶ
貴重すぎる機会ですよね。
東大法学部の主催で開催されたんです。
連邦最高裁といえば、ルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事にとても憧れているんです。
「RBG 最強の85才」と「ビリーブ 未来への大逆転」はすごくよかった。
ぜひお薦めです!
映画に感銘を受けて、今は本でギンズバーグさんの自叙伝を読んでます。
映画も本当にたくさんご覧になっていらっしゃいますよね。
私もぜひ観てみたいです!
ロバーツ長官とラザルス教授の講演会の開講の挨拶では、法学部長(当時)の西川洋一先生が威厳とホスピタリティあふれる英語でお二人を紹介されて、なんてかっこいい!と思いました。
西川先生は学部で「西洋法制史」を担当されていたんですが、世界史オンチな私は一度も取る機会がないままで心残りでした。
世界史オンチ?
あ、そういえば、東大の受験のときの選択科目は……?
世界史を取ってないんです。
私、人生で日本史も世界史も地理もまともに勉強したことがなくて、センター試験からようやく社会科目を始めたので。
センターにも東大受験にも、イチから始めるには世界史はとうてい間に合わないと思って、日本史と地理にしました。
それでも社会ふたつをそこそこまで仕上げるのは重かったですけどね。
受験のときは日本史・地理の組み合わせで結果的にはよかったと思います。
どっちもとても面白かったです。
ただ、世界史を知らないことは、大学に入ってからじわじわと自分の首を締めてきました。
ど、どういう意味ですか?
大学の文系科目には、高校時代に世界史を履修していたこと、またはそれに相当する世界史の知識があることを前提としてされる授業があるんです。
東大文科に入ってくる学生はほとんど受験で世界史を選択していて、2科目の組み合わせでは日本史・地理のパターンが一番少ないんです。
そうなんですか。
世界史・地理は、何か関連性があるっぽいじゃないですか。
でも日本史と地理はあまり関係ないので。
なるほど!
世界史・地理の方がなんとなく効率も良さそうですよね。
そうなんでしょうね。
だから日本史・地理の選択者は少ないし、さらにその中でも、私のように世界史をまったくやってない学生はごくわずかなんです。
それで、世界史の知識を前提とした講義は、聴いても意味がわからないことがよくあって。
法学部に入ってからは特にそうでした。
だから、法制史や国際政治系の科目はあまり履修しなかったんです。
そこはちょっと心残りですね。
世界史はいろんな文系科目の基本になっているということなんですね。
でも、佐々木さんならこれから学び始められてもきっと大丈夫ですよ!
そうですね!
実はもう世界史のテキストをいくつか購入してます(笑)。
そして来世は世界史の得意な子に生まれてきて、きっと西川先生の「西洋法制史」を履修します!(笑)
さすがです(笑)。
でも本当に、世界中から学者さんや著名な方が集まる講演会やシンポジウムの多さは、東大ならではというか。
学問的にも貴重な機会がキャンパスの中にたくさんあるのが素敵ですね!
そう、そういうのはとても楽しかったんです。
すごく満喫しました!
……で、それはそれとして。
必修単位が取れてないという問題については、3年生の夏休みに、ある計画を立てたんです。
計画??
次回、アクティブなキャンパスライフの裏で膨れ上がる必修単位の「負債」!
いったい、どんな計画を??
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お読みいただいてありがとうございます。
次回に続きます!
Vol.6① 法学徒の模索 〜2015年秋、本郷〜
佐々木望の東大Days:https://todaidays-nozomusasaki.com
↑ 本noteの元記事
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