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【『手帖』と手“帳”(15)】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング 15日目)

このコラムを書き始めてあっという間に半月、ということはクラウドファンディングが始まってから15日経ったということでもあって、これまでにご支援くださった61名の方々、どうもありがとうございます。そしてご検討中の方は、目標到達率44%とまだまだですので、ぜひ、お力添えのほどよろしくお願いいたします。

…と書いている今日は12日ぶりに家でおとなしくしていて、今月分の蜘蛛と箒を進めている。蜘蛛と箒SNSレビュープロジェクトには昨年の5月から参加しているからもうすぐ1年で、今書き進めている(そして終盤で行き詰っている)ものを含めれば、その間に20の“レビュー”(というより感想)を書いたことになるらしい。一年前の私にとって、初めての公式の発表場所だった(それまでも、今と変わらずSNSやnoteへ勝手に投稿していたけれど)。

公の場、と言えば昨日はpodcast デビューで、先週木曜日の早稲田あかねのツイキャス配信も含め、出演・インタビューといった形での活動が、『平岡手帖』を契機に増えている。映像制作チーム「TOKABI」の「きょうりゅうのしっぽ」

という番組収録のため、昨日は、一見民家風のスタジオ(白く塗りなおされた壁、同じく白い床の質感があたたかだ)で1時間、『手帖』のことはもちろん、なぜ見るのか、そしてなぜ書くのかについて聞いてもらって、「美術を見ることは、“閾値”を下げていくことかもしれない」という最近方々で話していることをここでもしゃべる。

そこから大久保へ向かい、一週間続いた連続展示、その最後を見届ける。「電話してください」という指示通り電話すると、“倉石幸彦”さんがやってきてcallboxの中で踊ってくれるが、その所作は舞踏に接近している。もちろん、身体の動かし方…みたいなものは違うのだが、例えば窓ガラスの曲線に沿って手を動かしてみたり、床に寝そべってみたり…という動きは空間を測定しているようで、そうして、外的な力に導かれながら動いていく即興は(私の考える)舞踏ともある部分重なるし、中村悠一郎さんが、“Y・N”、“てりやき”、“GAME82”、“竹下脩三”、“楡木真紀”、“ダニエル・ホール”として1週間繰り返した搬入・展示・搬出の手つきもきっと含んでいる。

その後向かったサブテレニアンで、今度は舞踏と筝の即興を見たけれど、それが、先月見た舞踏とチェロと照明のトリオ即興とも重なるのは、どちらも舞踏家の永守輝如さんが踊っていたためでもある。しかしあり方として全然違う…というのは、後者では、チェリストの入間川正美さんに“謁見”する永守さんを、両脇から観客が見守る…みたいな空間(入間川さんと向かい合うように、照明の豊川涼太さんがいた)だったのに対し、今回は、L字に組まれた客席、その長辺と平行に琴奏者のカタジナ・カルポヴィッチさんが座っている。そして、カルポヴィッチさんに背中を預ける形で永守さんが踊る…という構図だったからで、斜め下から放たれた照明によって、サブテレニアンの墨色の壁に落ちたカルポヴィッチさんの影が、横臥した人体を解剖する外科医のようだ、その横で、実物同様、永守さんの影ももがいているからデュオというよりカルテット、照明の豊川さん(出演者には含まれていなかったけれど、今回もかなり重要だった)も入れればクインテットと言ってもよかった。

そこからさらに京橋へと向かったのは、早稲田あかねで知り合った画家のあおいうにさんが二日間、公開制作をしていたからで、終了一時間前に滑り込む。ちょうどドローイングが後ちょっとで描き終わる…というタイミングだったようで、5本の指を使って直接、画面に線を引いていく。その指はもちろん、白いレース?のワンピースの裾も絵具に染まっているし、“ウエス代わりに使っている”というぬいぐるみ、そのおなかにも背中にも色が滲んでいる。顔を上げれば、壁には二日間で描かれた20枚弱(と、2点の近作)が掛けられており、下地を作らずに描かれている(ように見える)絵画空間は、“向こう”に広がっているというよりはこちらへ滴り落ちてくるようで、作品を見た鑑賞者の目にまで、色が移っていきそうだ。(続く)
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【クラウドファンディングはじまります!】

本日から『平岡手帖』定期購読者を募る
クラウドファンディングを開催いたします!

詳細は「平岡手帖」アカウントプロフィールに記載のURLからご確認ください
@hiraokatecho

○『平岡手帖』
○場所:CAMPFIRE
○クラウドファンディング期間:2024年4月1日〜4月30日(予定)
○目標金額:170万円(定期購読者300人)
○企画:平岡手帖制作委員会、ハンマー出版、額縁工房片隅

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『平岡手帖』について。

1年のうち300日以上を美術に出会うために歩き回っている平岡希望さん。ここ数年は、毎年600カ所以上の展覧会に足を運び、その空間とそこにある作品1つ1つを熱心に鑑賞している。その動向はSNSでなんとなく目にしていた。最近では、かなり長い文章で美術との出会いを克明に記している。しかし、平岡さんの全貌は謎に包まれている。日々どんな生活をしていて、どんなふうに動いて、なにを考えているのか。そして、その美術への熱量はどこからくるのか。僕はずっと気になっていた。美術と出会うために、全てを注ぎ込んでいるような人。そんな人が、1人くらいこの世の中にいてもいんじゃないか。いや、いてもらいたい。そして、そんな生き方を応援したい。そんな思いを数人と話しているなかで、平岡さんの手帖を公開して、日々の美術との出会いを記録発信していく『平岡手帖』という企画は面白いんじゃないかという話になった。平岡さんに話してみると、ぜひやってみましょう、という事になった。展覧会とは、オーロラのようなものだ。その時その場所に行かないと出会えない。そして、その一瞬の会期が終わると風に吹かれた塵のように消え去ってしまう。そんな儚い展覧会というもののアーカイブとして、この「平岡手帖」が、もし5年、10年、続く事ができたならば、未来において日本の美術シーンを語るうえでの重要な資料になるのではないかと夢想する。そして、美術に出会うために自らの全てを注ぎ、歩き回っている1人の人間のドキュメンタリー・ノンフィクション小説として読むことも出来るだろう。平岡さんの1ヶ月を1冊の小説のような形にまとめて、それが1年間12冊、毎月送られてくる。今回のクラウドファンディングでは、そんな『平岡手帖』の定期購読をしてくれる人を募りたい。

この「平岡手帖」を定期購読するという事は、少し大げさかもしれないが、美術という1つ1つの小さな出来事を、1人の存在を通して美術史に小さく書き残していく、そんな事への協力になる。ぜひ、多くの方に平岡さんのそんな生き方を応援してもらいたい。

きっと今日も平岡さんは美術に出会うため歩き回っている。こんな人この世の中になかなかいないと思う。だからこそ。ぜひ『平岡手帖』の定期購読をしての応援、よろしくお願いいたします。

(平岡手帖制作委員会_佐塚真啓)

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