【『手帖』と手“帳”(28)】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング 28日目)
昨日は家で、企画メンバーとして関わっているDPPT(Durational Performance Project Tokyo)、その第1回ワークショップについて書いていて、今月中には完成させたい(そもそももう1か月経っている)が、書きたいことが多すぎてなかなかまとまらない。そもそも気圧のせいか、あまりはかどらないまま、夕方になったので散歩がてら、巣鴨に保坂和志さんと山下澄人さんのトークを聞きに行く。散歩がてらなのは家から近いというただそれだけのことで、内心は緊張している。『君たちはしかし再び来い』も好きだし、『残響』、『あさつゆ通信』、『カフカ式練習帳』…はもっと好きだからだ、会ってしまったら印象が変わるかもと思い、これまで、トークはあまり聞いてこなかった。
会場のRYOZAN PARK はスポーツジムなのか?保坂さんと山下さんのいる長机向かって左奥にはフィットネスマシンがいくつか端に寄せられていて、壁の2面は鏡張りだ、たまたまカキヤさんがすぐ近くに座っていて、『1月号』を渡す。うらさんから聞いていたらしくもう知っていてくれた。「俳優デビューするんですよ」と、フライヤーをくれる、トークゲストに五所純子さんが来るんですよと言われたが、知らなかったのが恥ずかしくて頷く。
トークは、すごくためになるとか、時間を忘れるほど面白いとか、そういうものではなかった。そう書くと、じゃあ無駄だったのかと言われそうだけど、むしろ美点のように感じていて、それはお二人から、おそらくこの機会に何か伝えよう、みたいなところが伝わって来なかったからだと思う。いつもそうしたことを考えたり思い出したりしているのだろうし、お二人は“オフ”の時にも、あんな感じで話しているのかもしれない。
保坂さんは、“昔は上手い絵、というのがあって~”と言いながら、肩より上げた右腕、開いて手のひらを、話す調子に合わせて上下する、灰色の靴下を履いた右足も、同じようにパタパタ動いていてピアノを演奏しているみたいだ。フリージャズの話が出たけれど、このトークも演奏的なところがある。小林秀雄の、蛍を見て母親を思い出したという一節を引きながら、山下さんのペットボトルを右手で勢いよく握って、「おおっ山下!」と引き寄せ「…みたいな感じです」と続ける。
山下さんは、保坂さんの話-恥ずかしがりや過ぎて、「うちの和志がいつもお世話になってます」と、保坂和志さんのお母さんに言った、中学生の同級生(たしかシミズさん)-の話を受けて、同級生のお母さんに会うたび、「あら奥さん!」というクラスメイトの話をする。その時の、指を揃え伸ばした左手を、手首のスナップを利かせて振るやり方が面白い。ちょうど読んでいる『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』、その表題作で、登場人物「七森」が金髪に染めたことも、ある意味、高じすぎた恥ずかしがりやの振るまいな気がする。
保坂さんの書くこととか、話すこと(というよりその身振り)が、今のところの私にはフィットしているのか、何だか色々、整理がつく。
DPPT の文章に、目鼻立ちがついてきた。(続く)
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【クラウドファンディングはじまります!】
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本日から『平岡手帖』定期購読者を募る
クラウドファンディングを開催いたします!
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詳細は「平岡手帖」アカウントプロフィールに記載のURLからご確認ください
@hiraokatecho
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○『平岡手帖』
○場所:CAMPFIRE
○クラウドファンディング期間:2024年4月1日〜4月30日(予定)
○目標金額:170万円(定期購読者300人)
○企画:平岡手帖制作委員会、ハンマー出版、額縁工房片隅
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『平岡手帖』について。
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1年のうち300日以上を美術に出会うために歩き回っている平岡希望さん。ここ数年は、毎年600カ所以上の展覧会に足を運び、その空間とそこにある作品1つ1つを熱心に鑑賞している。その動向はSNSでなんとなく目にしていた。最近では、かなり長い文章で美術との出会いを克明に記している。しかし、平岡さんの全貌は謎に包まれている。日々どんな生活をしていて、どんなふうに動いて、なにを考えているのか。そして、その美術への熱量はどこからくるのか。僕はずっと気になっていた。美術と出会うために、全てを注ぎ込んでいるような人。そんな人が、1人くらいこの世の中にいてもいんじゃないか。いや、いてもらいたい。そして、そんな生き方を応援したい。そんな思いを数人と話しているなかで、平岡さんの手帖を公開して、日々の美術との出会いを記録発信していく『平岡手帖』という企画は面白いんじゃないかという話になった。平岡さんに話してみると、ぜひやってみましょう、という事になった。展覧会とは、オーロラのようなものだ。その時その場所に行かないと出会えない。そして、その一瞬の会期が終わると風に吹かれた塵のように消え去ってしまう。そんな儚い展覧会というもののアーカイブとして、この「平岡手帖」が、もし5年、10年、続く事ができたならば、未来において日本の美術シーンを語るうえでの重要な資料になるのではないかと夢想する。そして、美術に出会うために自らの全てを注ぎ、歩き回っている1人の人間のドキュメンタリー・ノンフィクション小説として読むことも出来るだろう。平岡さんの1ヶ月を1冊の小説のような形にまとめて、それが1年間12冊、毎月送られてくる。今回のクラウドファンディングでは、そんな『平岡手帖』の定期購読をしてくれる人を募りたい。
この「平岡手帖」を定期購読するという事は、少し大げさかもしれないが、美術という1つ1つの小さな出来事を、1人の存在を通して美術史に小さく書き残していく、そんな事への協力になる。ぜひ、多くの方に平岡さんのそんな生き方を応援してもらいたい。
きっと今日も平岡さんは美術に出会うため歩き回っている。こんな人この世の中になかなかいないと思う。だからこそ。ぜひ『平岡手帖』の定期購読をしての応援、よろしくお願いいたします。
(平岡手帖制作委員会_佐塚真啓)
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