それは罪ではない——『違国日記』
近頃とみに映画の『フライド・グリーン・トマト』が注目されていることは知っていました。そして、そのように注目されているそもそものきっかけが、ヤマシタトモコの漫画『違国日記』でとり上げられていたからだということも、自ずと察せられました。『違国日記』は、少女小説家の高代槙生と、自動車事故で急死した姉の娘である田汲朝との三年間の同居生活を綴った作品です。昨年は新垣結衣と早瀬憩の主演により映画が公開され、同じ時期にアニメ化も発表されるほど、注目を集めています。この『違国日記』のあるエピソードの中で、槙生が朝の幼なじみの楢えみりに、「これね 古い映画でお好きかどうか/っていうか 全然的外れかもわからないけど」といって貸してやったのが『フライド・グリーン・トマト』のDVDだったのです。
これは自慢話になるのですが、槙生がえみりに映画を貸すと言った瞬間に頭に浮かんだのが『フライド・グリーン・トマト』でした。なぜ槙生が思いついた映画が『フライド・グリーン・トマト』だとわかったのか。それより少し前に、えみりが槙生に、なぜ結婚をしていないのかと尋ねる場面があります。そんな質問をしたのは、結婚をするのが普通だと言う周囲に対して、自分だけが違っているのではないかという不安を感じていたためでした。その違和感を口にしようとしてできなかったえみりの様子を見て、槙生には何か思い当たるふしがあったのでしょう。それと同じことを、私も考えたというわけです。
DVDを渡した後、槙生はえみりに「あなたが誰を好きになっても ならなくても/それは罪ではない」と言い添えます。そして、家で映画を観ていたえみりは、やはりあのセリフが語られる場面で涙を流していました。
“Because she--she’s the best friend I’ve ever had, and I love her.”
「なぜなら……イジーは、私の生涯で最高の友だちだからです。私はイジーを愛しています」
えみりは槙生から、十分な答えをもらうことができたのだろうと思います。
えみりが帰った後、自分にも映画を紹介してほしいと朝が言います。それで槙生が、『マッドマックス 怒りのデスロード』と即答していたのには笑いました。こちらは本気で言っているのかどうか、判断が難しいところです。「けっさくですよ」というのは、確かに納得できますけどね。